第六話 私の役目
ありがとうございますww
俺が戻って来た時には全てが終わっていた。
見ればアリアさんが体から血を流して倒れていた。
「・・・・・・・」
そんな・・・・。
負けた・・・あの勇者が負けた?
「所詮は過去の遺物。新魔王に勝てると思っていたのか?」
「・・・・・・」
「ペッ!」
グレイスは口の中から血の塊を吐いた。
「お前も・・・・」
次の瞬間、目にも止まらぬ速さで、黒い斬撃が俺の右腕を斬り飛ばした。
「っ!」
更に魔力の弾が襲って来る。何とか氷の壁を作り防御するが、直ぐに破壊されて攻撃を受けて行く。
もはや体の感覚はない。
痛すぎて何が何だか分からない。
精も魂も尽き果て、俺には何もなくなった。全てが嫌になった。
寒い・・・冷たくなっていく。ああ・・・死の感覚。このまま何もかも無くなり、俺と言う存在もいずれ消えて行く。
さよなら、俺。
そう目を瞑ろうとした時だった。
終わったはずだった。
意味はないと思っていた。
「まだ・・・終わらせない」
ぼやけた視界に誰かが映る。
「アリア・・・さん」
「『リザレクション』」
体の激痛が引いて行く。軽くなり、楽になる。
「どうして・・・」
「負けてほしくない。こんな所で終わりなんて・・・絶対に嫌っ!もう、後悔だけはしたくないの・・・」
アリアさんの魔法は他人の回復は出来ても、自分は出来ないようで、アリアさんの傷口は塞がっていない。
「アリアさんっ!」
倒れ行く彼女を支える。
「ここが・・・ここまでが私の役目」
その手を握る。
冷たくなっていく体を俺は抱きしめた。
「またね・・・ユウト君。運が良かったら、また何処かで」
そう言ってアリアさんの体が光り始めた。
光の粒子となったアリアさんは何処かに消え、後には何も残っていなかった。
「はは・・・バカみたい。シャドさん死なせた時と一緒じゃねぇか・・・誰も守れないのか?」
震えた手を握り締め、俺は立ち上がった。
もう迷いなどはありはしない。
殺す。
「・・素晴らしい。感動の別れだ・・・これが何かの物語なら、俺はこの後殺されるんだろう・・・」
「ああ、その通りだ。お前を殺して、何もかも終わらせてやる」
もう、全てを・・・終わらせる。




