第五話 勇者
「『凍ル明星』」
世界が氷へと変わった。
床も天井も・・・全てが氷へと変わってしまった。
「何だ・・この技・・・」
グレイスをガチガチに氷で固め、身動きをしないように拘束した。
俺は彼女を見る。
「どうして・・・どうして・・・お前が・・・」
まだ少しは息があるようで、口から血を吐きながらサクヤは言う。
「た・ぶんね・・・私は・死に場所をずっと・・探して・・たの・・」
「死に場所って・・・」
「けど・・・ユウトに会って・・・そんな・・いつの間にか忘れてて・・・」
「もう喋るな!」
俺は傷口を氷で固めて止血する。
「これで・・・どうにか・・・」
「随分と手間取らせたなっ!」
と、氷を砕き直ぐそこまでグレイスが剣を構えてやってきていた。
「しまっ・・」
ガキンッ!
しかし、その剣が俺に届くことはなかった。
「魔王ね・・・くだらない連中。世界は広くて美しい。どうしてそれが分からないの?」
長い赤髪。一つ上のお姉さんらしい口調。右手には剣。左手には盾を持っている。
「・・・・お前、死んでいなかったのか?」
「私は隠居した身だと思っていたけど、そうもいかないみたい」
その彼女は俺を見て言った。
「やっ、ユウト君。久しぶり」
「アリアさ・ん・・」
「『ヒール』」
サクヤの傷口が少しずつ治っていく。
「私はどっちかというと、戦闘特化じゃなくて回復に傾いているかな?良かった・・・まだ息があって・・・」
「勇者っ!」
グレイスの剣をアリアさんは弾き返す。
「ふぅ・・・一つ君に言っておこう」
アリアさんはグレイスに剣を向けて言った。
「魔王だか何だか私は知らない。あいつは死んだ。それだけ・・・だから、どれだけ頑張ろうと・・・魔王にはなれない」
はっきりと、彼女はそう言った。
「この俺が?魔王になれない?」
「ええ、背伸びしたい子供にしか私には見えない」
カッ!
闇魔法が炸裂した。
「ユウト君。動けるよね?私があいつを抑えているから、その間にその子を外に」
「わ、分かりました」
俺はアリアさんに背を向け、サクヤを抱えて走り出す。
「必ず戻ってきます。それまで・・・」
「うん・・・」
ユウト君が去り、私はグレイスを睨みつけた。
ここから先は私の仕事。
「『ダークネビュラ』」
闇の波動が襲って来た。
「『守護陣』」
光の陣が闇の波動を阻む。が、直ぐに光りに亀裂が走る。
持たない・・か。
「勇者ぁぁぁっ!」
グレイスは豹変したようにブンブンッと剣を振っている。私の言葉にイライラしていたのか、それともグレイスの本性で出て来たのか、私には分からない。
だが、こんな感情任せの大雑把な攻撃。見ていて反吐が出る。
「我、聖なる刃と成らん『エクスカリバー』」
眩しく、溢れる光がグレイスを包み込んだ。
太陽にも似た光。
ありがとうございましたww




