第四話 決戦
薄暗いホール。歪な装飾が施され、周りには絵が飾ってある。
「昔話をしよう。ある所に特異点が二つあった。一つはこの世に破壊をもたらす者。もう一つはそれと対になる、救済者となる者。二つはぶつかり合い、戦いの果てに一つは破りさり、もう一つは特異点としての力を失った。特異点は移動し、乗り変わった」
グレイスが何やら喋り始める。
「そして、神様はこう考えた。世界は、戦いを求めている。人間、魔物、亜人・・・全ての生き物は戦いを望んでいる。それこそが!世界のあり方だと!そして・・・今この瞬間、最初の特異点と最後の特異点がぶつかり合う。最後の戦いだぁっ!」
グレイスは両手を広げ、俺にそう言い放った。
「なるほど、お前と俺は特異点って言いたいのか?」
目を瞑りながらいい、少しの間をあけて俺は言った。
「はっ、冗談じゃない。俺は俺のやりたいことをする。サクヤを、皆を守るんだ。そして、一緒に元の世界に戻る」
元の世界の戻り方なんて俺には知ったことではない。少なくとも、こういう異世界の話すは殆どが元の世界に戻れていない。
けど、諦めたくはない。
その確率が〇じゃない限り、俺は何だってやる。向こうにだって残して来た生活が、人生があるんだ。
それでも、戻らないといけない。
「ユウト。お前と戦って色々理解出来た。人間の・・・人の可能性ってものをだ。人はどんな時でも悪意にもなり、善意にもなる。だが、極地に追いやられる程、人は悪意に染まる。それこそが、人間の本質なのだと」
「そうかもしれない・・・俺のいた世界もそんな世界だった。けど、その中にも幸せな世界を俺は見つけた気がする。それは、誰にも理解出来なくても、きっと・・・・」
そこまで言って、俺は黙った。
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
沈黙。
静寂の中、俺は槍を構えた。
「ただ、お前を倒す。俺がやることは、それだけだ。生きて、帰る・・・そう、サクヤと約束したんだ。もう、元の世界に戻れなくてもいい。俺は、最近・・・そう思い始めたんだ」
矛が奴を捉える。
「来い。その力、全力で叩きのめそう」
二人は同時に床を蹴った。
その次の瞬間にはグレイスの剣で俺の槍が衝突する。
ちっ、やはり魔道タイプの奴と俺とでは魔力の量が違う。その分、速さは俺の方が上だ!
グレイスに向かって連続三〇突きを食らわす。が、その全てに奴は対応して、受け流した。
「っ!」
「はっはー!」
目の前が爆発した。
服が焦げるも、直ぐに後ろにジャンプした。直撃は免れたが、隙を見せたら今のようにやられる。
次はない。
「『氷結槍撃』」
鋭く、重い一撃。
「『暗黒砲』」
氷と闇が混ざり合い、莫大なエネルギーを生む。
「はぁはぁ・・・はぁ・・・」
「よく頑張った・・・とだけ、言っておこう」
っ!
あれだけ魔力を消費して、まだ余裕があるっていうのか。
「お前は、もう魔力がないみたいだな」
「っ!」
「おっと、図星か?」
グレイスの斬撃が周囲を破壊する。槍で致命傷だけは避けるが、膝、肩に斬撃を受けて後ろに後退する。
「グロッキーだな。最後に・・・・俺の必殺技で終わらせてやるよ」
グレイスは剣を俺に向けた。
「なぁ・・・お前」
「ん?何だ?最後に聞きたいことでもあるか?」
俺は一歩踏み出した。
「お前は・・・一体何なんだ?」
グレイスは、残虐な、嬉しそうな、悲しそうな、楽しそうな表情で言った。
「俺は・・・・・魔王だ」
グレイスは剣を構え、
「『夜叉・漆黒斬』」
飛び散る血、引き裂かれる肉、倒れ行く肉体。そうして、地面に倒れ伏せた。
いてはいけない、サクヤがそこに倒れていた。
ありがとうございまーすww




