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バトルフロンティア  作者: ぞえ
覚醒編
27/35

第八話 受け入れる覚悟

ありがとございます




「もー、やめてくださいよ。恥ずかしいじゃないですか」

 

 アリアさんは笑いながらすまんすまんと言って、家の方に向かった。

 その姿は体は大人だが、無邪気に遊ぶ子供のように見えた。

 

「まったく・・・」

 

 と、次の瞬間大きな悲鳴が村に響き渡った。


「なんだっ!」


 俺は槍を持って悲鳴の方に向かった。


「・・・・・・っ!」


 女性がアクマに喉を掴まれていた。


「なっ・・・・んで、アクマが・・・・っ!」


 俺は槍でアクマを突いたが、体を貫くことが出来ず、弾き返された。が、アクマは女性を離して俺に向き直った。


「お前が・・・ユウトだな?」

「それがどうした?ていうか何しに来た?」


 アクマは俺に見て笑う。


「何って・・・出来損ないの後始末だよ!」


 アクマは俺に向かって来た。

 そのパンチの一撃は重く、数十メートルも後ろに吹き飛ぶ。


「ぐっ・・・・がっ・・・」


 全身に力が入らない。

 立ち上がることも出来ない。

 

「ふふ・・・・」


 来る。逃げないと。

 けど・・・動かない。脚が動かない。

 やられ・・・る。

 と、その瞬間村の青年が俺を担ぎ、助けてくれた。


「あ、ありがとう」

「話は後だ。アリアさんが時間稼ぎしてくれている間に、村から逃げないと」


 そう言って村人達は村から逃げ始める。

 

「アリアさんが・・・」


 そっと後ろを見ると、アリアさんがアクマと対峙していた。

 元勇者の実力なら大丈夫だと思うんだが・・・それでも、一人の残し来た女性のことは心配だった。

 数十分走り、村人達が止まる。

 俺も降ろされ、青年に礼の言葉を言う。


「お、おい!なんだ・・・あれ?」


 誰かが言った。

 それは真っ黒な雲だった。 

 正確にはアクマの軍勢が雲に見えただけだった。

 五千、いや一万は超えるだろうアクマが村に向かって下りていく。


「流石に・・・あの数相手じゃアリアさんは無理だ」


 隣の青年が言う。


「元勇者だから・・ある程度は大丈夫じゃないのか?」

「・・・・・・」


 青年が黙る。


「どういうことだ?」


 俺が詰問すると、青年は答えた。


「・・・元は元。勇者だった時の力程ないらしい。それでも、確かにそんじょそこらの魔物を黙らせる程の力はあるけど・・・・・」

「くそっ!」


 俺は痛む体を村の方に向かわせる。


「お、おい!その体じゃ無理だ!」

「うるせぇ!女が一人で戦ってんだ!」


 ほんの短い間だったが、彼女には教えてもらったことがある。

 だからこそ、ここで動かないと男じゃない。

 俺はそう言いきって、村の方に向かった。


 村に俺が到着した時には既に決着がついていた。

 地面に倒れているアリアさんと、それを囲む数千のアクマ。

 アクマは俺がアリアさんの所に行くまで何故か攻撃をしてこなかった。


「アリア・・さん・・・・・」

「あれ・・・ユウト君。どうしたの?村の人と逃げたんじゃ・・・・」

「アリアさん一人置いて行ける訳ないじゃないですか・・・・」


 アリアさんの腹部から薄らと血が滲む。

 そして、アリアさんの頬に涙が落ちる。


「あれ?」

「何?・・・私の為に泣いてくれるの?身勝手に国を見捨てた私の為に」

「アリアさん言いましたよ?俺に、ずっと戦ってきたんでしょ。って。そんなの、アリアさんだって一緒じゃないですか?」

「・・・・・」

「元勇者だろうが関係ない。ここは、俺に大人しく守られて下さい」


 俺の力を結集させて傷口程度は治す。


「ユ、ユウト君?」

「さっき、こいつらを見て・・・俺は血が騒いだのを感じたんです。俺の体の中には魔物の血が流れています。彼らは俺で、俺は彼らだったんです」


 すると、あいつが俺に言った。


『覚悟が決まったんだな』

「ああ・・・俺は逃げてただけだった・・・皆から、この世界から、お前から」

『なら、安心できる。あとは、お前次第だ・・・・』


 あいつの声が聞こえなくなった。

 俺はそっと、左腕の鎖に手をかける。


「ユウト君、何をするつもり?その鎖を外すと、もう人間には戻れなくなるのよ?」

「もういいんです。俺は、覚悟を決めました」


 そう言って、鎖を外す。

 何も起こらない。

 苦痛も歪みも何も感じない。

 拒むんじゃない、受け入れろ。


「『氷槍』」


 冷気が周囲に漂う。

 槍に氷属性が付属する。


「『氷結乱舞』」


 氷の斬撃がアクマの大群を襲う。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 俺がアクマを駆逐するのにそれ程時間は掛からなかった。

 



「ふぅ、ホント、君は凄いね」


 アリアさんはベットに寝ながらそんなことを言う。


「それじゃぁ・・・・・俺は行ってきます」

「・・・いつか、また戻って来るの?」

「ええ、必ず戻ってきます。その時には、俺の仲間も紹介します」

「ふふ、楽しみにしてる」


 そう笑う。


「ありがとうございました」

「こちらこそ」


 俺はそれだけ言い残して村から出て行った。

 空に手を突き上げる。


「『飛翔』」


 背中に氷の翼が出現する。

 確か、ガルディオだっけな?

 皆・・・今行く。


 俺はガルディオに向かって飛びたった。






ありがとうございましたww

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