第五話 ミルナベッタ海戦
遅くなりましたww
シンはガルディオにある洋館の一室に入る。
「終わったぞ」
「速いな」
グレイスが紅茶を啜る。
「あまりに手ごたえがなくてな。本気を出すなんてレベルじゃなかったぞ」
「・・・そうか」
グレイスはカップを置いて外を見る。
「何だ、随分と素っ気ない態度だな?お前のお気に入りじゃなかったのか?」
「お気に入りだよ。だから、だからこそかな」
シンは頭の上に疑問マークを出す。
「意味解らんぞ」
グレイスは笑う。
「俺から言えることは一つだけさ。終焉の時は来た」
サクヤはユウトを殺したという感傷に浸ることもなく、続く追撃作戦の参加を命じられていた。
ガルディオには約四日を有する船旅になる。
戦艦五隻、重巡洋艦九隻、軽巡洋艦十八隻、補給艦八隻とかなり大きな艦隊が編成された。
さざ波に揺れ、サクヤの髪が揺れる。
いつも艶があって、サラサラの黒髪も、今日は少しボサボサだ。
彼女の虚ろの瞳は青い空を見ていた。
「ジスト、あいつどうにかならないか?」
ゼスは隣にいたジストに言った。
「・・・隊長、無理に決まってるじゃないですか?あいつにとって、ユウトは掛け替えも無い存在だったんだから。しかも、自分の手で・・・」
「変に励ませず、時間が癒すのを待つか。戦闘に支障がなければいいが」
ゼスはサクヤを置いて、一足先に船内に戻った。
それから鐘が鳴ったのは数時間後のことだった。
「敵・・・・」
アクマの軍団が空を飛びながら艦隊に向かって飛んでくる。
「総員戦闘用意。魔道士、弓兵は順次攻撃を開始せよ!」
ケイジが指揮を取る。
「おらぁっ!」
攻撃を回避して船の中にアクマが入って来た。それを弓や魔法が使えない兵士達が迎え撃つ。
ゼスは次々とアクマを殺していくが、彼らが乗っている戦艦には既に数十体のアクマ達が取りついていた。
「おいおい・・・どんどん増えていくぞ」
「くっ!」
ケイジとゼスは互いに背中を合わせるように敵を睨む。
他の船でも被害は甚大だった。
そして、誰かが叫ぶ。
「エルディア轟沈!」
ケイジの視線が隣の戦艦に向く。
エルディアと呼ばれている戦艦はプスプスと至る所から火を噴いて沈んでいった。
「くっ!」
戦況はよくない。
だが、彼らにとってここで死ぬことは許されないのだ。
何としてでもガルディオに到達して、魔道士グレイスを倒さねばならなかった。
「・・・・焼きつくせ『煉獄・炎龍千』」
次の瞬間サクヤの周りにある魔法陣から千の炎龍が出現した。炎龍は次々とアクマを喰らいつく。
アクマも炎龍を攻撃して近づけさせようとしなが、左右上下から襲って来る龍に翻弄されていた。
戦いは十分もかからず終了してしまった。
「っは!・・・・・はぁ・・・はぁ・・・・魔力を使い過ぎた」
サクヤはその場に膝を着いて大きく息を吐く。
それを見て、
「凄いな、サクヤ」
ゼスが素直に褒めた。
「この戦い、絶対に負けられませんから」
「・・・そうだな」
ありがとうございますww




