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バトルフロンティア  作者: ぞえ
覚醒編
23/35

第四話 悲しみの名の下に

ありがとうございますww




 サクヤはその状況に対して言葉を失っていた。


「・・・何が・・・何が起こっているっていうの」


 先程まであった黒の球体にヒビが入り、粉々に砕け散った。そして、その中からユウトが現れた。

 変わり果てた姿で、


「ユ、ユウトなのか?」


 左腕は肩まで何処かの魔物となっており、目は赤く、その姿はまさしく魔物であった。

 

「アァァァァァァァァァッ!」


 左手でサクヤを襲う。


「っ!」


 サクヤは剣で受け止める。

 ユウトは一旦引き、周辺を見渡す。

 分が悪いのか、ユウトは後ろの森に向かって走り出した。丁度その時、ケイジが到着した。


「ユウトは!」

「・・・・恐れていたことが・・・」


 ゼスの説明にケイジは苦虫を噛んだような顔をした。そして、言った。


「全独立小隊に通達。本日をもって、第一独立小隊ユウト・サカキを悪魔堕ちと断定。即座に追撃を開始。見つけ次第討伐せよ」

「っ!」

「げ、元帥!そんな!ユウトは・・・まだ!」


 サクヤが元帥に言う。

 しかし、それを遮るように、


「悪魔堕ちした人間は・・・二度と元に戻らない」

「けどっ!」

「サクヤ、お前も軍人ならその責務を果たせ。それに・・・お前に殺されるならユウトも本望だろう」

「・・・・・・・」


 サクヤは頭では理解していた。

 悪魔堕ちした人間はその心を破壊され、悪魔の心が植え付けられる。

 文字通り、心が破壊される。無くなるのだ。

 無くなったものを修復するなんてありえない。

 そして、サクヤは言った。


「分かりました。その任務、引き受けます。ゼス隊長」

「ああ、行け、『水蜘蛛』」


 ゼスによって直ぐにユウトの居場所が探される。

 

「いた・・・森の中心」

「ありがとうございます・・・私、私一人で行かせてもらえませんか?」

「一人で、大丈夫なのか?」


 サクヤは二本の剣を抜く。


「・・・・問題ありません。ユウトは、ユウトは私が必ず殺します」


 サクヤは意を決したようにその言葉を放った。

 

「・・・・・・」


 そして、何も言わず、サクヤは走り出した。

 それを見計らったかのように雨が降り始めた。

 冷たい雨が体に降り掛かる。

 それをものともせず、サクヤは走る。一直線に。


「いた・・・・」


 森の中心。巨大な岩にもたれ掛っていた。


「ユウト・・・」


 サクヤを感じたのか、ユウトはゆっくりと目を開けた。

 その瞳は赤く光っておらず、体も正常そのものだった。


「ユ、ユウト?」

「・・・・サクヤか・・・・・」

「い、意識があるの?」

「・・・と言っても、もう無理だがな。あいつめ、こんな時間まで用意するなんてな。どんな神経してんだよ」


 ユウトは笑った。

 

「ユウト!」


 サクヤはユウトに抱き着く。

 抑えきれない感情が出てしまった。


「・・・サクヤ、俺は・・・お前のことが・・・うっ・・あっ・・・・くそ。悪い、サクヤ・・・俺は・・・もう・・・・・」


 ユウトの体に次々と異変が生じる。

 目が赤く染まり始める。


「ユウト・・・・」

「覚悟は出来ている。せめて・・・・お前が俺を殺してくれ。愛しいお前に殺されるなら・・・」

「え?」


 ユウトの体が全て魔物化とし、最後に一言言った。


「今まで、ありがとう」


 それを境に、ユウトはサクヤを襲い始めた。


「ラァァァァァァァァァァァァッ!」


 サクヤは直ぐにバックステップをし、距離を取る。サクヤは剣を取るが、その手は震えている。


「・・・・出来ない・・・あなたを、ユウトを殺すなんて・・・私には・・・・・キャァッ!」

 

 一撃食らった後ろに飛ばされる。木にぶち当たり、思わず苦痛に体を丸めさせる。

 うう・・・強い。


『サクヤ、お前も軍人ならその責務を果たせ』

『愛しいお前に殺されるなら・・・』

『ユウトは、私が殺します』


 先程の言葉が甦ってくる。


「・・・・・私は・・・・・・私はっ!」


 ユウトの左腕と二本の剣が交わる。

 激しい攻防が繰り広げられ、サクヤは緩めていた意を再び決する。


「ラァァァァァァァァァァァァッ!」


 サクヤはそっと目を閉じた。


「ユウト、さっきの言葉。嬉しかった。ありがとう」


 ユウトは滝の淵にいた。

 サクヤは追い詰めるようにユウトの前に立つ。


「私も、私もユウトのこと、好き。愛してる」


 サクヤは涙を流す。

 雫が雨と一緒に落ちていく。

 剣を構え、走り出す。


「アァァァァァァッ!」


 ユウトの心臓を貫く。


「ありがとう」


 サクヤは言う。

 そうして、ユウトの体は滝壺に向かって落ちて行った。

 滝壺に落ち、それっきりユウトの体は浮き上がってこなかった。


「・・・・・・」


 サクヤはその場にへたり込む。


「ああ・・・・あああ・・・・・・・・うえ・・・ああ・・ん・・・なあああああああああああああああああああああああっ!」


 その涙が枯れ果てたのは、そう短い時間ではなかった。




ありがとうございましたww

物語も終盤に差し掛かってまりましたww

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