第三話 闇に染まる
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多数の負傷者を出しながらクラーケンを見事討ち取り、アクマは統率者を失ったのか、一斉に海の向こう側に逃げて行った。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
サクヤは地面に膝を着いた。
「くそ・・・こんなにも強い魔物がいるなんて・・・」
「敵の拠点は更に分厚い防衛網が構築されているんだろう。もしかすると、今回は警告に過ぎなったかもしれん」
隣でゼスが悔しそうに言った。
すると、サクヤは周りを見てから言った。
「ユウトは?」
「そう言えば・・・クラーケンとの戦闘が開始されてから見ていないな・・・・」
二人は周りを見渡すがユウトの姿は何処にもなかった。
ユウトを見つけたのはそれから三十分後のことだった。
「・・・・ユウト?」
そこには傷だらけになったユウトが横たわっていた。
「大丈夫だ。まだ息はある。速く運び出そう」
ゼスはそう言ってユウトの肩に手をまわそうした時だった。ユウトの左腕が黒く輝き始める。
黒い霧も発生し、ユウトを徐々に覆っていく。
「っ!」
「まさか・・・・」
サクヤとゼスは一歩下がる。
ゼスは言った。
「左腕の呪いが・・・だが、魔封じの腕輪の効力はそんじょそこらの呪いを抑え込むぐらいの力はあるはず。少なくともこの呪いは抑えることぐらい余裕なのに」
「隊長!ユウトは・・・ユウトは・・・」
このユウトの異変に気づいたのは元帥であるケイジだった。
ケイジは最前線で戦っていたが、敵の攻撃も終わり、落ち着いたところで異常な魔力を感じ取った。
「・・・この魔力・・・あの時感じ取った。ユウトか!まさか・・・・」
ケイジは加速魔法を使い、ユウトがいる方面へ走り出した。
くっ、異変が起こってから五分。俺とユウトの場所は端と端。全速力で走っても一時間・・・今のユウトが自分自身に勝てる自信は・・・・ない。
ケイジは歯ぎしりをしながら速度を速めた。
サクヤは目の前の状況に何が起こっているのか理解出来ていなかった。
「・・・・・何?」
ゼスは表情を強張らせていた。
「い、一体・・・何が起こっているんだ・・・」
二人の目の前には禍々しい黒い球体が出現していた。
それは黒い霧が集まって出来たもので、中には恐らくユウトがいると思われる。
「ユウト・・・?」
サクヤが球体に触れた瞬間拒絶反応が起こり、弾かれた。
「っ!」
「ここは・・・・」
俺は又もや暗黒の世界の中にいた。何度か見ている世界を目の前に、俺はやけに落ち着いていた。
いつもならここは何処?何?と驚くとこだった。
「よう。とうとう時が来たぜ、俺」
後ろから俺とよく似た声が聞こえる。
その声を聞いた瞬間俺は頭と体で瞬時に理解した。その声は脳を走り、全身を駆けまわった。心まで浸透し、まるで自分が自分でないような感覚に陥った。
「お前の正体が・・・何故こんな夢・・・いや、ここにいるのか。分かった気がする」
俺は後ろにいる声の主に言った。
「それは、良かった。じゃぁ、早速始めよう」
「そんなに急ぐ必要もないんじゃないのか?」
声の主は切り返し、俺は後ろを振り向いた。
「そんなことを言うなよ。お前も、俺なんだから」
そこには真っ黒な俺がいた。
すると、背景は変わり、俺と俺の足元に黒い円状の足場が出現した。浮遊感が無くなり、俺は床と表現していいのか、分からないがこの際面倒なので床にするが、床に着地した。
「あの時から・・・お前はここにいた」
俺は左腕を上げる。
そう、あの黒い球体を左腕に撃ち込まれた瞬間だ。
「そうだ。あの時からだ。お前が俺の心の中に生まれたのは」
「ビンゴ。正解だ」
俺を指さす。
「で、どうするんだ?」
俺は俺に訊いた。
しかし、その問いをするのもどうかと思った。それは、その問いの答えを知っているから。だって、あいつは俺だから。
それすらも分かっているかのように、俺は俺を見て笑う。
「何が可笑しい?いや、こんな質問をすること自体・・・可笑しいのかもしれない」
「流石。やっぱ俺だね」
奴は俺に向かって真っ黒な槍を向けた。
そして、俺も。いつの間にか手に持っていた槍を構える。
暫しの沈黙。それを破ったのは俺だった。
「はぁっ!」
地面を大きく蹴り、正面から横に薙ぎ払う。奴はそれをバックステップで避け、反発する力で攻撃してくる。
俺はそれを槍で受け止めるが、その一撃は重く、とても受けきれるものではなかった。
思わず後ろに飛ばされる。
「っ!」
重い。
クッソ重い一撃じゃねーか。あのヒョロヒョロの体の何処にそんな力があるっていうんだよ。
「らぁっ!」
槍を振り、奴は後ろに飛ぶ。
「くそっ!」
「そんな力が何処にある?そんな疑問に答えよう」
「!」
「俺はお前。そして、新しい力。何百という魔物の血がこの体を走り回り、這いずり回っている」
「違う!」
「お前はこの力を悪だと断定し、拒んだ。拒絶したんだよ」
「そ、それがどうした。誰だって未知なるものに対しては拒絶を生むに決まっている」
奴は笑う。
「それこそが違うんだよ。何故拒む。拒絶する。本当は欲しいんだろ?強い力が」
「な、何を・・・俺はそんな力は望まない」
一歩ずつ近づいて来る。
おのずとその姿に俺は恐怖を感じていた。
「違う!」
「違わない!お前は弱い。幾ら努力しても報われてない。ある一定のラインを超えることは出来ない」
手が震え、槍を落とす。
違う、違う、違う・・・俺はそんな力を望んでいない。そんな邪悪な力なんて・・・・俺はそんなものがなくても強くなる・・・。
「お前は俺じゃない!俺を生き写したとした闇でしかない!」
奴は笑い、
「いい拒絶だ。全てが・・・俺のものになる」
「え?」
「精々、良い夢を見てくれ」
全てが・・・闇に染まった。
そして、世界が砕け散った。
ありがとうございましたww




