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バトルフロンティア  作者: ぞえ
覚醒編
21/35

第二話 死神の一撃

遅れてすみません




「おいおい、あんなにも大量のアクマを向かわせてよかったのか?」


 紅茶を飲んでいるグレイスにギリアは言った。

 グレイスはカップを机に置き、落ち着いた様子で言った。


「問題ないだろう。それに連合がここに来るにはもう少し時間が掛かる。それまでに、最終決戦に向けての準備も終わるだろう」

「最終決戦ねぇ・・・・それで、シンは上手く仕事をやれるのか?」

「・・・どうだろうな」

「どうだろうって・・・・」


 グレイスの言葉にギリアは呆れる。

 実質、ギリアにとってグレイスが何を考えているのか分からなかった。

 

「まぁ・・・俺がアクマにし損ねた人間だ。そう簡単にやられればそこまでの人間だったということさ」

「ふぅん」


 グレイスは紅茶を淹れる為にその場を離れた。

 ギリアは不意に窓の外を見た。彼らのいる洋館から黒い黒雲が天高く広がっていた。








「なっ、何だっ!」


 地盤が揺れ、大地が鼓動した。大波が発生し、船が揺れている。そして、それは水面から現れた。


「ク、クラーケン・・・」


 隣にいるサクヤが呟いた。

 クラーケン・・・・聞いたことがある。よくファンタジー小説やアニメの定番モンスター。

 かなり強いと思う・・・いや、強い。


 俺達の前には巨大なタコとイカが合体した化け物がいた。その姿は大きく、そして間鎌がしかった。

 その巨大な触手で周辺にいる兵士を次々と潰していく。


「っ!でかい・・・・ゼス隊長!」

「分かっている・・・全部隊集結。一丸となってクラーケンを倒すぞ!」

「「「おぉぉぉぉ!!」」」


 サクヤとゼス隊長が触手を伝って敵の頭上に躍り出る。


「焼きダコになれ!『火炎竜輝』!」

「行け!『アクアスプラッシュ』!」


 炎の龍と水の斬撃がクラーケンを直撃するが、まだ生きている。


「ちっ!」

「けど、攻撃は効いているみたい。このまま続ければ・・・・」


 クラーケンの攻防が炸裂する。

 その時、俺の目の前に一人の男が立ち塞がった。


「・・・・退け」


 俺は静かに槍を構えた。

 全神経を震わせ、奴の動作に注意する。


「お前が・・・ユウト・サカキか?」


 男は黒く禍々しい巨大な鎌を持っており、銀の髪が逆立っていた。

 

「誰だ!何故俺のことを知っている!」


 男が無言で鎌を構える。

 っ!やりあうってのかよ!

 恐らくこいつは俺より遥かに強い。でも、どうして俺なんかを・・・。

 次の瞬間黒い鎌が俺を襲う。即座にガードするが遥か後ろに吹き飛ばされた。


「なっ!」


 俺は勢いよく飛ばされ、港街のとある小屋に叩きこまれた。

 激痛とは程遠い痛みが全身が駆け巡る。


「あ・・・が・・・痛い・・・・・・」

 

 右腕の出血が激しく、動かすこともままならない。

 ぷらーんと右腕が垂れている。

 くそ、もう右腕は使い物にならない。

 俺は悔しさ混じりにその場に立ち上がる。


「グレイスが言っていたことは嘘か。強いと聞いたんだが・・・」

「お前!グレイスの仲間なのか!」


 男はフッと笑い、


「俺の名はシン。シン・クーラメン。俺は人であって、人ではない、死を司る者」


 俺はシンという男の言っている意味がいまいちよく飲み込めていなかった。

 一体何言ってんだ?

 男は鎌を構える。


「死とは即ち生命の終わり。生命の終わりとは死」


 男はブツブツと呪文のように小言を繰り返す。

 その状況に俺は少しばかり恐怖を感じていた。 今までにない力と、正体不明の力に俺は数歩後ろに下がる。

 血が滴る。その度に全身の力が少しずつ抜けていくのが分かる。


「俺は・・・・」


 槍を地面に突き刺し、何とか体を立ち上がらせる。 

 目の前には銀髪の男。手には巨大な鎌。今から俺の首を掻っ切ろうとしていた。


「あばよ」


 シンは俺の体を斜めに斬った。

 しかし、俺の体には傷はなく、何が起こったのか分からなかった。

 外した?

 ありえない・・・・何をした?


「このまま首を掻っ切ってもいいんだが・・・・俺の職業は死神だからな」

「がっ!」


 急に胸が熱くなる。息が出来ず、全身を動かすことが出来ない。


「知ってるか?全ての生命体にはその生命、つまり、生きる上では必要なものがある。何だか分かるか?つまり魂だ。今斬ったのはお前であり、お前の魂。人間、魂無しでは生きていけないからなぁ」


 ど、どういう・・・ダメだ。まともに考えることも・・・。


「俺達は魂のことをクリスタルと呼んでいる。そして、そのクリスタルを唯一破壊出来るのが、生と死を司る・・・この俺。死神って訳だ」


 シンは一度笑うと、背中を向けて何処かに行ってしまった。


「もう会うこともないだろ・・・あの世でも達者でな」


 ああ・・・あ・あ・・・ああ・・あが・・・・。

 その日、俺の精神は砕け散った。





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