第一話 追撃
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全独立部隊は港にいた。
これより逃げた闇の魔道士を討つべく、追撃戦が開始される予定である。
突然のアクマと呼ばれる進化した魔物の存在が確認されてからは、戦力に増強にも念を入れていた為、出向に二ヶ月も掛かってしまった。
追撃とは言えないかもしれない。
「ふぅ・・・これで本当にガルディオまで行けるのか?」
ガルディオはここから北にある島のことで、そこがグレイス達が向かったと思われる場所である。
この戦いには今ある戦力の殆どが投入される予定である。
敵の新勢力に対してはこれ程の戦力を揃えないと勝てないと思ったんだろう。
「まぁ、大型戦艦だしね。それに、海上では敵のとの接敵もあるから、海上戦にも備えないと」
「確かにな・・・・」
空を見上げれば黒雲が広がっていた。
そして、その嫌な予感というものは当たるものだった。
「ねぇ、ユウト」
「ん?」
俺はサクヤを見る。
すると、サクヤは何だか頬を染めて顔を逸らした。
「な、何でもない・・・」
「?言いたいことがあるなら、ちゃんと言えよ」
「・・・・・」
サクヤはそれでも黙る。
「サクヤ。俺はお前と会えて良かった。同じ境遇の人がいて、隣で戦えて、それが、お前て・・・良かった」
「っ!な、何よ!そ、そんな・・・・・変な・・・・・」
「だから、ありがとう」
空を見上げ、俺はそう言った。
「て、敵襲!ア、アクマだ!」
「「っ!」」
船の見張りに立っていた男がそう言う。
『敵襲!敵は海上から接近!全部隊は直ちに戦闘用意をせよ!繰り返す!敵は・・・・』
そんな声が港中に響き渡った。
すると、ゼス隊長が走って来た。
「二人とも!独立部隊は集結。直ちに戦闘用意だ!」
「「了解!」」
俺とサクヤは指定されていたポジションに着く。
「おい、どうなってんだ」
ジストが大剣を持ちながら来た。
「分からない。こんな所で奇襲してきて、どうなる?どうせだったら海上の方が俺達にとって不利なのに・・・・」
「俺ら何て、いつでもやれるってか?」
港はアクマによって混乱していた。
そして、本部からは敵は全て排除とのことだった。
「敵は北側から来ている。全部隊は防衛線を構築中。来るぞっ!」
三十秒後、戦闘が開始された。
「行け『水蜘蛛』」
ゼス隊長は即時式神を召喚し、ネットワークを構築してた。
「こっちにも来るぞ!」
十数体のアクマが一斉にこっちに向かって来た。
正面から来た一体に対して槍で受け流す。そのまま続いて来た二体目の体を貫いた。
よし!こいつらだって反射神経まで怪物じゃない!
「『火炎竜輝』!」
炎の龍がアクマを飲み込み、黒焦げにする。
「あの時は油断してた。けど、今は違う!」
サクヤは二体の龍を操作しながら戦場を駆けまわる。
俺はふとジストを見た。
「らぁっ!『豪』!」
大剣が突如巨大化し、空中にいるアクマを薙ぎ払った。
「やるねぇ・・・」
「そっちも!踏ん張れよ!」
俺は頷き槍を振り回す。
「人間っ!」
重い。けど!
右手の拳を避け、下から斬り上げた。そのまま下に向かって斬り返す。アクマの体を蹴り、頭を貫いた。
「はぁ・・・・はぁ・・・・「
やっぱり、皆強い。
俺なんかと比べものにならない。
一体倒すのにもかなりの時間が掛かる。
「くそっ!」
ダメだ。イライラしたら集中力が途切れる。
落ち着け、冷静になれ。出来ることをすればいいんだ。何も思うことはない。
「っ!」
肩に一撃食らい、後ろに大きく後退する。
それでも地面に蹴り、アクマの腹を貫いた。
よしっ!・・・・あれ?
槍は突き刺さったまま抜けることはない。
「死ねぇぇぇぇぇ!」
アクマの渾身の一撃を胸に喰らった。
「がぁぁぁぁぁぁっ!」
ヤバい。意識が・・・・。
一瞬体がグラッと揺れ、斜めへとズレていく。
死ぬのか・・・?いや、死なねぇ。まだ!
「お前らに殺されてたまるかぁ!」
体を強制的に前に動かして槍を振る。その強引な攻撃によって繰り出された斬撃はアクマを襲った。
アクマは真っ二つに切断され、その場に倒れた。
「はぁ・・・はぁ・・・くそ・・・」
血が飛び散り、俺は膝を着いた。
体力が戻り、呼吸も整って来た。
前線は既に混戦状態であり、敵味方乱れていた。
軍の損耗率は八十パーセントを切り、後退している部隊も見える。
「隊長!」
「ユウトか。大丈夫だったか?」
「はい、何とか・・・」
「今は戦闘に集中しろ。奴らの目的が何なのかは分からんが、全力で奴らを倒すだけだ」
「はい!」
戦闘開始から一時間。
戦闘は益々激化していった。
ありがとうございましたww




