第九話 アクマ
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俺達は兵舎の作戦室でブリーフィングを行っていた。
「えっと、つまり正面衝突ってことですね」
「正直、敵の数はかなり少なくなっている。ここまで来て下手な小細工をする必要はないってことだ」
なるほど、無駄な作戦を立てるよりも真正面から確実に消して行った方がいいということか。
残党軍を本当に一掃するつもりか。
「だから、この作戦に殆どの部隊が駆り出されることになる」
「全軍出撃ってことね」
「ユウト、体は大丈夫か?」
「はい、問題ありません。動けます」
左腕は異常だが、あんまり問題はない。
これといった障害が出ている訳ではなかった。
すげーな、腕輪。
「よし。けど、あんまり無茶はするなよ」
「はい」
「作戦開始は一七時だ。それまでに所定の位置に着くことになるだろう。各自、準備を怠るなよ」
「「了解」」
旧リベラント砦前
『待機中の全攻撃部隊へ』
通信兵の通信装置を拡散にして皆で聞いている。
『今作戦は残党軍の掃討である。奴らは魔王討伐から数年に渡り我ら人類に対して敵対行動をし続けて来た。無念に散った兵士、無差別に殺された民間人。その全ての無念をここで晴らす。全軍!突撃用意!』
俺は槍を構える。
前衛部隊としての勤めを果たす。
『攻撃開始!』
一斉に前衛部隊が突撃を開始する。
砦から降り注ぐ矢を弾き、門まで辿り着く。
「今だっ!」
大量の設置した爆薬を一気に起爆する。
爆炎と黒煙が辺りを揺らし、門を破壊した。
「突撃開始!」
先行部隊が衝突し、乱戦が始まった。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
オークの喉を斬り、ゴブリンの胸を貫く。トロールの斧を避け、腹を斬り裂いた。続いて攻撃して来たガルム達を薙ぎ払った。
人も魔物も必死になって殺し合い、次々と死体が生まれる。
次の瞬間炎の球が襲って来た。
地面が燃え上り、兵士達が戸惑う。
「っ!」
「・・・敵の魔法使いだ!」
「くそっ、姿が見えない」
恐らく後方に敵の魔道士がいるんだ。
だが・・・。
「場所さえ分かれば・・・」
すると、ゼス隊長が後ろから出て来た。
「ここは、俺に任せろ。行け、『水蜘蛛』」
剣から水のような透き通った蜘蛛が大量に出現し、砦の奥へとワサワサと動き始める。
「・・これは・・・」
「隊長自慢の式神。小さな隙間や人間が入れない場所に入ることが出来て、直ぐに無数のネットワークを構成することが出来るの」
「なるほど・・・・隊長って、スパイに向いてますね」
「ここに来る前は暗殺部隊にいたらしいからね」
「・・・・・・・」
あまり詮索はしないでおこう。
「かかった・・・割と簡単な場所にいたな。前回魔道砲を置いてあった場所だ!」
「ユウト、いける?」
「ああ、大丈夫。やってみせる!」
俺は槍を地面に刺し、そっと目を瞑る。
「術式展開・・・隊長の式神から敵をロック」
「なるほど、それなら外すことはないしね」
俺の魔法は殆どが氷系だ。炎や雷も使えるが、どうしても弱くなってしまう。だが、ここでそれを委縮して使わないのは違う。
勝手に自分でイメージをつけて限界を作るな!
「俺の中にあるもう一つの力・・・・・」
黒く沈んでいるその力。
周囲が揺れる。
「隊長・・・」
「分かっている。あいつの中の・・・闇が」
左腕が熱い。
この腕は魔物化している。だから、どうした?この力はこの左腕から来ている。リスクを恐れて前に進めないのじゃ意味がない。
利用出来るものは何でも利用しろ!
「『暗黒・・・』」
と、俺が唱えようとした時だった。
俺達を含め、辺り一面が爆発した。門のあたりは焦土とかし、悲鳴と叫び声が聞こえる。
「な、何が・・・一体何が・・・・」
すると、瓦礫の奥から一人の男がやって来た。
「あーあーあー、聞こえますか?」
それは俺達だけでなく、奥の本隊にも聞こえる声であった。
「俺の名前はギリア。ギリア・カーレンツ。神になりかわり、お前ら人間を粛清する存在さ」
何だ、こいつ?
一体何を言っているんだ?
男は黒のスーツ姿で、頭にシルクハットを被っていた。右手には杖を持ち、こちらを見ている。
「そして、これが俺達が・・・・いや、狂った魔道士が作り上げた人形」
次の瞬間奥から人型の魔物が現れた。
全身は黒く染まり、赤く目が光っている。
「これが、魔を取り込んだ真の魔物の姿。アクマだよ!」
その男がアクマと呼んだ魔物は少しずつ近づいて来て、走り出す。
俺は咄嗟に槍を構えるが蹴りの一撃でブッ飛ばされた。
「飲み込め!『水龍』」
水の龍がアクマを襲おうとするが、腹を素手で破壊される。
っ・・・あの隊長の攻撃でも・・・。
「・・・・人間如きに、俺が倒せると思ったか?」
アクマが喋り始めた。
「喋るのか?こいつ」
「俺はアクマ。数十種類の生み出された魔物を合成され、作り上げられた。俺はこの戦いに興味はない。ただ、殺したいだけだぁぁぁぁ!」
アクマは叫びながら走ってくる。
しかし、その進行をサクヤの炎が妨害する。
「お前に私達はやられない!『火炎竜輝』行けぇぇぇぇ!」
二体の炎の龍がその体を燃やしながら食らいつく。
「っ!硬い」
「バーカ」
アクマの一撃によって龍は消滅した。
「そんな・・・」
更に腹に一撃受け、サクヤは地面に叩かれた。
つ、強すぎる。
これがアクマ。
「らぁっ!」
後ろからジストの一撃がアクマに届いた。
「がっ!下等生物がっ!」
ジストはアクマの蹴りを喰らう。
「お前の一撃何て何の意味も無いんだよ」
と、倒れているジストにアクマが向かった瞬間だった。
「いや、十分時間は稼いでもらったよ『ヴォルトプリズン』」
突如雷の檻がアクマを囲む。
「な、何だ!」
アクマは無理やり檻をこじ開けようとしたが、反動で雷がアクマを襲う。
「安らかに眠れ」
雷の檻が解かれ、雷を纏った剣がアクマを斬った。
アクマは体を切断され、そのまま倒れた。
アクマを葬り去った人物は俺に言った。
「よぉ、ユウト。大変だったみたいだな」
「ケ、ケイジさん・・・」
ケイジさんは剣をしまって俺に手を差し出した。俺はその手を握り直す。
ギリアはグレイスと共に船に乗っていた。
その他に鎌を持った男もいた。男の名はシン・クーラメンと言った。
「なぁ、グレイス。お前の言うシナリオってのは、退屈しないんだろうな?」
ギリアが言う。
「ああ、退屈はしないさ。ただ、遊んでばかりだと、痛い目にあうぞ?」
「ふんっ、どうでもいい。俺は俺の為に戦う」
そうシンが言った。
「なら、一つ仕事を頼まれていいか?」
「ん?」
「ある男のクリスタル破壊さ」
「・・・いいだろう」
そう言ってグレイスから一枚の紙を受け取る。
「さぁ・・・始まるぞ。戦争が・・・・・」
次から色々と始まってきます




