第五話 作戦前日
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作戦開始前夜。
全独立小隊は兵舎に集まっていた。
すると、青髪の男が現れた。かなり若く、俺よりかは二つか三つ上だと思われる。
「私は正規軍戦術長ブライアン・マレイヤだ。知っての通り、今作戦は前回のリベンジである。しかし、敵は全作戦後に森を抜けた旧リベラント砦に拠点を構築。着々と力を付けている」
地図を壁に貼って説明した。
「厄介なことに敵は砦中心部に超遠距離魔道砲を建設中。工事は既に半分以上が終了しているとのことだ」
つまり、超遠距離から攻撃が可能になるってことか。
確かに厄介だな。
「そこで、独立小隊の任務は超遠距離魔道砲の破壊を任務とする工作部隊の援護。阻害する敵戦力の排除になる。部隊は二つに分け、第一から第三独立小隊をA小隊。第四から第七独立小隊はB小隊とする」
援護か。
「作戦開始は明日の午後十七時。明日の朝には出発する。準備をしておけ」
そう言ってブライアン戦術長は兵舎から出て行った。
独立部隊は解散し、それぞれの準備に取り掛かる。
「とうとう来たかぁ」
自分達の宿舎に帰る途中、サクヤが隣で言った。
「調子はどう?」
「何度か魔物と戦ったことがあるが、次はちゃんと構成された部隊との連携だ。これが俺にとっての初陣だ。正直言って不安要素は取り除けない」
その通りだ。
技術的なものはそこそこあるとしても、実戦で使えるかどうかは分からない。
「そっか・・・」
サクヤは何も言わず、隣を歩き続けた。
「けどよ、生きて帰りたいよ」
「大丈夫。私達がこの三週間やってきたことは無駄じゃない」
「実戦経験の少ない俺が、何処までやれるのやら」
経験が足りないのは承知している。その為の一歩と言うことだ。
「だから、大丈夫だって。ユウトは死なない。私が保証するから!」
サクヤは迫りながら言う。
「っ!」
その表情はかなり真剣である。
「わ、分かったから近いって!」
「あっ、ごめん」
サクヤはそっと離れる。
その頬は何となくだが赤く染まっていた。いや、暗闇だから多分だと思うんだけど。
周辺では独立部隊の軍服。つまり黒をベースにした服装の人がせっせと動いていた。明日の準備である。
「さっ、俺達も明日の準備に取り掛かろう」
「そうね。武器の手入れしないと」
俺は居間で槍の手入れをし始めた。
突撃槍の刃を布で拭き、汚れを綺麗にする。
「ふふ、これで明日の戦闘はバッチリだ」
キラリと輝く矛先を見てそう言う。
「おっ、気合い入ってんなぁ」
ゼス隊長が後ろからやって来た。
「はい。俺にとってはちゃんとした初陣になるので」
「そう言えばそうだな。まぁ、ちゃんと実力を発揮させれば問題ないさ」
「そうですね」
「ほれ」
ゼス隊長からコーヒーに似た飲み物を渡される。
「何ですか、これ?」
「これはコメットの実をすりつぶして乾燥させた飲み物だ。甘いぞ」
俺はズズと一口飲んだ。
程よい甘さと適温に暖められたお湯がマッチしていて丁度良かった。紅茶のもうちょっと甘い飲み物だと思われる。
「美味しいですね」
「だろ?」
半分ほど飲み、机にコップを置いた。
「あれ?コメットじゃん。私も飲もうかな」
そう言って奥からコメットを淹れたコップを持ってやって来た。
一口、二口飲んで、
「ふぅ・・・甘い」
するとゼス隊長は言った。
「二人とも、明日の任務は今まで以上に過酷な任務となる。サクヤ、分かっているな?」
「はい」
「えっと、どういうことですか?」
サクヤが説明し始めた。
「魔王が倒され、この世界は平穏な日々が続いていたの。私達に来る任務と言えば、各地で暴れている魔物の討伐や、ちょっとした雑用が来るの。けど、今回の作戦は連合軍の大規模な掃討作戦になるわ。動くものはそれだけ大きくなるの」
「つまり・・・」
「私や隊長にとってだって。ただえさえ前回の作戦で死者がかなり出たの。今回だって私達のところから戻って来れない部隊はそう少なくないと思うの。つまり、ユウトのお守りは私がやるってこと」
「お守りって何だよ!」
「あら、私はゼス隊長が言ったことをそのまま言ったのだけど?」
「ははっー、間違いないさ」
「隊長!」
ゼス隊長は一度静まり、
「俺も正直不安なんだ。たかが三週間程度訓練した傭兵上がりの、ましてや青年をこんな大規模な作戦に参加させていいのか、どうか。だから、ユウト。お前の命、サクヤに任せてやってくれ」
「・・・・・・・」
そうだよな。
半年間、そして三週間。只管戦う技術を高めた。
その総体と言ってもいい程のことかもしれない。
「分かりました。危険な時はサクヤに守ってもらいます」
「ん、よしっ!今日は遅い。そろそろ寝よう。明日の為にもな」
俺は二階に上がり、部屋に入る。その時、サクヤが言った。
「ねぇ、ユウト」
「ん?」
「絶対生きて帰ろうね」
「・・・そうだな」
次でとうとうリベンジ開始ですね。主人公の部隊はどうなるでしょうね。。。。




