第四話 残り
遅くなりました
午前七時。
俺は毎日この時間に起きる。入隊してから二週間が過ぎ、作戦決行まで一週間が切ろうとしていた。
訓練は厳しくありながらも、徐々に慣れ始めた。
体力も当初と比べれば中々のものとなっている。
「ふぅ・・・こんなもんか」
数百回槍を振った時、俺は手を止めて椅子に座った。
ここは演習場。周りを見れば他の兵士達も自分達の訓練に向かっているのが良く見える。
「どう?私と近接戦の模擬戦やらない?」
サクヤが木のナイフを持って来た。
「まぁ、いいけど」
「よーい、どん!」
武器はお互いナイフ一本。
俺のメインは槍だが問題ないだろう。
サクヤはジリジリと距離を詰め、ナイフを逆手に取る。どうやら突きはせず、斬ってくる気のようだ。
予想は的中し、左横から飛んでくるが、落ち着いて右手に持ったナイフで受け止めた。その次の瞬間、俺の体は宙に浮いていた。
数秒後、背中から地面に投げ捨てられた。
「ぬぐっ・・・・せ、背負い投げか」
「ユウトはちょっとナイフに意識がいき過ぎてたね。ナイフを使った戦闘だって言っても、必ずしもナイフだけで戦う訳じゃないよ」
「確かに。戦場じゃ何でもありだもんな」
サクヤは頷く。
「ありがとう。参考になった」
「・・・・・」
「ん?」
「ユウトが素直にそんなこと言うなんて」
「何でだよ。俺より戦闘経歴は豊富なんだろ?先輩のアドバイスはしっかり聞くもんだ」
「う、うん」
サクヤから木製のナイフを受け取る。
「それじゃぁ、ちゃんとした武器でやろう」
俺は槍を取り、サクヤは双剣を手に取る。
木製ではなく、訓練用のレプリカである。
「行くよっ!」
サクヤは双剣を抜刀し、斬りかかって来た。
俺も負けじと双剣を弾き返し、何度か鍔迫り合いが続いた。
「それじゃぁ、そろそろ・・・・」
双剣に炎が宿された。
「!」
「ユウト、最近じゃぁ、みんな武器に付属魔法をかけるの。知らないの?」
「知らなかったさ・・・・けど、面白くなって来た!」
俺は目を閉じて集中する。
「『双炎』」
紅に光る二本の剣を構えた。
「『氷槍』」
槍を中心として冷気が走る。
俺はサクヤが動き始める前に、地面を蹴った。突然の攻撃に動揺もせず、サクヤは正面からの一撃をきっちり受け止めた。
「げっ!」
「甘いっ!」
槍を難なく弾かれ、思わず後退する。それを追撃され、腹に一撃食らった。
「ユウト、甘いよ。相手が相手のまんまとは限らないんだから」
「いてて・・・・確かに」
「まったく、今の本物だったら一撃死んでるから」
「はい・・・・」
「さっ、もう一本」
サクヤは剣を構える。
「ああ!」
俺はその猛攻に耐えつつ、反撃を開始した。
「ぬはっ!」
ぐったりとした状態でベットに転がる。
今日は大変だった。いや、むしろ毎日大変である。中学の部活以上だということは間違いはない。
しかし、作戦が近づく度に徐々に厳しくなっているのは自然なことなんだろう。
休暇も作戦終了までないらしいし。
「ふぅ・・・・・このままで大丈夫かな?」
ありがとうございましたww




