126・医療班看護班
今回は、この世界は男性優位の世界のため、ちょっと女性に対してよろしくない発言がありますが、ご容赦ください。
夕方の申し送りの時間。
普段であれば当日勤務で各棟の指示取りまとめ役となるリーダーと夜勤者だけで患者の状態の申し送りを行うのだが、今日は勤務している第十番隊の全員に集まってもらった。
「終業に集まってもらってごめんなさい。今日は大切な報告があります。ラミノー、エンゼ。こちらへ」
休みと夜勤明け以外の全隊員からの視線を浴びながら、私は一番端に立っていたラミノーとエンゼを自分の隣に呼びよせた。
何かあったのか? と戸惑うような顔の隊員達を見回してから、私は話し始めた。
「本当に急な発表になって申し訳ないのだけれど、来月からラミノーとエンゼには今まで通り看護班として働きながら、クルス先生について医学を学び、技術を教わり、医師となるための勉強をしてもらう事になりました」
私の説明に、事情を知る当人達とガラ以外の全隊員たちは一様にざわつき始めた。
クルス先生と話した後、人員要請と事務処理のために本部に行っていたガラが戻って来たところで、私は頭の中の整理をしながらクルス先生から提案された話を説明し、意見を求めた。
私の話を聞いたガラは少し驚いていたけれど、クルス先生からではなく、第十番隊隊長である私から事実を説明し、その上で受けるかどうか、本人の意思に任せたほうが良いと言った。
わたしでさえ意図が読めず、その会話術に翻弄されてしまうのだから、家名もちとは言え庶民の二人では、断りたいと思っても太刀打ちできないだろう、と言うガラの意見に、私もおおむね同意した。
また、第十番隊の人員要請に対しては、本部より医療隊へ異動希望者、及び騎士団医療隊へ配属を希望している入隊志願者がいるため、受け入れは可能か確認してほしいと、希望者の身辺調査書類を持って帰ってきてくれていた。
受け取った書類を二人で確認すると、そこには九番隊パーン・チャックスの名前もあった。
何故か? とその書類に目を通すと、彼を正式に十番隊で、ガラと共に補佐官及び会計係として傍においてはどうかと、ドンティス隊長より推薦状がついていた。
これに関しては初耳だったためガラに確認すると、先日、リ・アクアウムへ向かう馬車の中で話した時、片腕を失っているガラが物資班の班長と私の補佐官も兼任しているのは大変ではないか? 十番隊専属の会計係として、補佐官として自分を置いてくれないかと話があったらしい。
ガラは、失った腕に関しては仕方のないことで、彼の娘のモリーがいろいろ補ってくれているが、騎士団の書類は機密性の高い物も多いため、補佐官がもう一人増えるのは正直ありがたいと頷いた。
これについて、私もガラに甘えすぎていたと反省し、謝罪、その上でパーンを受け入れることにした。
他の異動・入隊希望者の書類に不備はなかった為、希望者全員の医療隊への配属を受け入れる旨を、トラスル隊長からいただいた駒鳥を使って本部へ伝えると、すぐに異動希望者、入隊希望者共に三日後からの配属を融通するという回答が帰って来た。
こうして、思いがけず人員確保が行えたこともあり、ラミノーとエンゼに十分に考える時間を取ってあげられそうだと思った私は、そのままラミノーとエンゼを執務室に呼ぶと、『第十番隊医療隊医師班』の設置の説明をし、その上で、二人にはクルス先生から医師班配属の打診があること、そのメリットとデメリットを説明した。
軍医になればお給金は上がるが、クルス先生やマイシン先生の仕事を自分たちがやるという事で、その責任は圧倒的に大きくなること。
二人共、共用語の読み書きは出来たとしても、覚えることは他国の文献にもわたり、勤務以外の時間も自己学習が必要になり、肉体的・精神的に厳しい状況になる可能性があること。
また、解体新書に関する事柄については、私が言うべきことではないため黙っておいたが、それでも今まで生きてきた価値観、人生観が変わるようなこともあるかもしれない事、それで医師班を辞める決断をしても、十番隊を辞めさせることはなく、看護班として再び働けること。
私が事前に伝えられる事柄を、彼らに丁寧に説明した。が、突然呼び出され、そんな話を聞かされた二人は、私の前で固まってしまった。
話があまりにも急すぎたのか、言葉が足りなかったのかと慌てた私に代わり、ガラが改めて、いますぐに答えを出さなくても良い事、ご家族とよく相談し、嫌ならお断りしても良いし、勉強を始めて受け入れられなければ途中でお断りしても良い、あくまで二人の意志で決めてほしいのだと、補うように説明をしてくれた。
すると、それまで呆けたようになっていた二人は互いに顔を合わせて頷き合い、ものすごい勢いで立ち上がると『ありがたいお話です! ご期待を裏切らないように、誠心誠意頑張りますっ!』と、そのままの勢いで頭を下げたてきた。
そのあまりの決断の速さに、もう少しちゃんと考えていいと言ったのだが、二人の意志は固かった。
ラミノーは選ばれたこと自体が素直に嬉しかった事、また、親兄弟を養う上でお給金が上がるというのは大きな魅力ですと言い、エンゼは自分の努力が認められ、尊敬する(尊敬!?)クルス先生に直々に後継者候補として選ばれたという事実で胸がいっぱいのようだった。
(……二人とも、年相応に大喜びだったわ)
そんなわけで、たった半日で急転直下の如く決まった事柄だったが、ラミノーは医療院の班長、エンゼは回復棟主任であるため、新人教育と二人の業務の引継ぎを合わせて行えるよう、新人が来る三日後の事も含め、今日のうちに皆へ報告という形を取ったのである。
「来月から十番隊は看護班、物資班に加え、新たに医師班を立ち上げ、医師班班長にクルス先生を配し、二人はその下に配属となります。基本的にはこれまで通り看護班で仕事をしてもらいながら、クルス先生から教えを乞う形になります。これに伴い看護班の班長をアルジ、医療棟主任にシルバー、回復棟主任にミクロスとします。ただアルジは明日からしばらく、女神の医療院に出向してもらうので、シルバーはラミノーに、ミクロスはエンゼについてそれぞれ引継ぎを受けることになるわね。
それから、三日後、看護班に新しい隊員が七名、物資班には回復棟から退院する二名がそのまま物資班に配属になります。タイミングとしてちょうどよいので、これを機に医療棟、回復棟の配置交代も考えています。みんな、異動希望があったら三日後までに私かガラ、ラミノーに申し出て頂戴ね。何か質問はあるかしら?」
一通りの話を終え皆の顔を見て問いかけると手が上がった。
「はい、隊長!」
静かに聞いていた医療隊員の中で、びしっと元気よく手を上げたのはレンペスだ。
「レンペス、なにかしら?」
「なぜラミノーとエンゼが選ばれたのですか? 他にも医療隊員はいますよね? 異動と同じく、医師班への異動希望を取る形では駄目だったのですか?」
「そうね、そう思うのは当たり前ね」
少し緊張した面持ちでそう言ったレンペスに、私は穏やかな口調で答える。
「けれど今回は、これは決定です。二人を医師班へ。これはクルス先生からのご要望なの」
私がそう言った時だった。
「そうそう、僕がこの二人になら教えていいと言ったんだよ~」
「クルス先生」
珍しく申し送りに姿を現し、中央の大きなテーブル席に座ったクルス先生は、わずかに騒めく看護班員に手を振った。
「なんか下が騒がしいな~と思ったらこの話してるなって思って降りてきたよ。皆、ラミノーとエンゼを選んだ理由を知りたいようだからね。だからこの際、僕の口からはっきり言おう。今回の事は、初期メンバーへの依怙贔屓ではないよ? 看護班員は皆とても働き者で真面目だ。それは認めるよ。けど、そんな君たちの中で僕の教えを乞うのなら、まず最低限、この国の共用語の読み書きが難なく出来るという条件がある」
「はい! それなら、他にもいると思いますが……」
「俺も出来ます」
レンペス以外の他の隊員が次々と声を上げると、クルス先生はうんうんと頷いた。
「そうだね。でも彼らと君らには、決定的な違いがある」
「それは何ですか?」
手を上げたアペニーパに視線を移すと、クルス先生はニヤッと笑う。
「彼らが大変な努力家で、緊急時に他者に判断を委ねることなく、決断できるという点だ。怪我人が運び込まれたら、戸惑い、失敗を恐れるのはわかる。が、その場での判断を迫られる場面で逃げ腰になり、他者にそれを託してしまう者は除外だ。
ネオン隊長は緊急時、責任はすべて自分が持つと宣言した上で、治療を行う僕にその場の総指揮を託す。つまり治療現場ですべての判断をするのは医師なんだ。まぁ、マイシンみたいな普段血を見ないような医者なら傷病者が溢れる場で逃げ腰になってもまぁ仕方がないと同情するが、ここは騎士団の医療院だ。傷病者を前に怯み慄き、とっさの判断から逃げることは許されない。どう? 身に覚えがある者はいるんじゃないか?」
「……それは……」
「それから」
そんな問いかけに、言い淀み、視線をそらした数名の班員を見て笑ったクルス先生は、さらに畳みかける。
「僕が赴任して来て半年近いけれど『ネオン隊長が少しでも楽になれるよう知識と技術が欲しい』と直接教えを乞うてきたのは、ラミノー、エンゼ、アルジだけだったのも大きいね。つまり、漫然と職務を遂行するだけでなく、さらなる知識を求める意欲、向上心が強いってことだ」
「では、わたしも……!」
それを聞き、ばっと手を上げたアルジに、クルス先生は少しだけ申し訳なさそうに眉を下げた。
「申し訳ないが、君は軍医には向かない。だから隊長に進言しなかった」
「それは……」
ぎゅっとアルジは下げた手で拳を握ると、クルス先生を見る。
「それは、私が、女だからですか?」
「正直に言えば、それも一因ではある」
一つ、息を吐いてクルス先生は続ける。
「僕は女だから医師になれない、というつもりは全くない。この騎士団内で君はしっかりと主任としてやっていけているからね。けれどここが戦場で、他部隊の騎士達を前にした場合は別だ。この世界はどうしても男性優位だ。君は女性というだけで侮られ、様々な観点からその身を危険に置くことになる。僕もね、そんなもので区別をするな、ふざけるなよと言いたいが、ネオン隊長が暴行を受けたのもその経緯の上だったろう?」
「私はっ! あんな卑怯者になんか負けません!」
「うん、その気概はかうけれど、あくまで一因だと僕は言っただろう? 今回の決定打はそこじゃない」
目をまん丸くしたアルジに、クルス先生は。
「決定打は女神の治療院で君が患者よりネオン隊長を優先したことだ。忠誠心が強いのは良いことだが、あの時、僕は君に重症患者の処置を頼んでいた。患者を放置したことは褒められた事ではない。看護班員の在り様はネオン隊長の決めることだが、少なくとも現時点で、わずかな時間でも患者を放置した君を医師班に迎え入れることはできない」
「……っ」
そこまで聞いたアルジは、さらに手をしっかりと握りこみ、それから頭を下げた。
「……わかりました、申し訳ありません」
「もう一度言うけれど、女性というのは一因だ。軍医としては僕の下にはおけないけれど、マイシンと同じ形でなら一考の余地はある。それについては、また後日」
「……はい、ありがとうございます」
絞り出すようにそう言ったアルジに頷いてから、クルス先生は他の隊員を見回す。
「他の者はさらに考える必要がある。学びたいと思うのなら、与えられるだけでなく、まずは自分で、出来る範囲で学ぶべきだ。処置が苦手で回復棟を選んだ者、文字を書くのが苦手でカルテの記録を他者に頼んでいる者もいるだろう? 指示されたこと、決められたことしかできない者、何かしらの提案が出来ない者を、医師班には受け入れない」
その言葉に身に覚えのある者は、みな項垂れるように黙り込んだ。
「先生、それ以上は……皆、まだこの仕事を始めて半年です。戸惑う事も多いですし、文字などは今練習中です。子供でも大変なのに、成人してからではもっと大変で、皆努力しておりますわ」
「まぁ、そうだね。その努力は認めるよ」
見かねて声をかけた私に笑った先生は、そんな彼らをもう一度見まわした。
「厳しい言い方をしたね。けれど、皆、新人も来ることだし、隊長から与えられる技術や知識だけで満足せず、自分たちでここをより良くするためにはどうしたらよいか、考え、立ち回る事も必要だと念頭に置いてほしい。と、いうわけで。ひとまず、医師班としてラミノーとエンゼを預かる。
ただし、僕はネオン隊長のように優しくないからね。ラミノーとエンゼ。彼らが僕の指導に付いてこれるかわからないから看護班へ戻すこともあるし、君たちの成長によってはネオン隊長と話し合って、医師班に来ないかと声をかけることもあるかもしれない。まぁ皆、頑張ってくれよ」
その言葉を聞いた班員は、それぞれ顔を見合わせ、少し戸惑いを見せながらも、互いに納得したように頷き、声をかけ合ったりし始める。
僅かに距離が出来ていたラミノーとエンゼの周りにも隊員が動き、何やら冷やかされているようだ。
そんな中、私は少し離れたところで俯いているアルジの傍に向かうと、握り絞めて真っ白になった拳をそっと両手で包んだ。
「アルジ、いつも私のために頑張ってくれて、本当にありがとう」
顔を上げたアルジの目は真っ赤に染まって、涙が浮かんでいる。
「隊長……いえ、申し訳ありません」
再び俯き、そう言ったアルジの背を、私はそっと擦る。
「何を謝るの? 私はアルジに感謝こそすれ、謝られるようなことをされた覚えは何一つないわ。あの日からずっと、貴女が私の傍にいてくれてよかったと心から感謝しているわ。だから、貴女まで医師班に行ってしまったら寂しいわ。けれど、どうしてもと望むのなら私は応援はするわ。もちろん、危険のない範囲でね」
私がそう言うと、への字になってしまった口のまま、顔を上げたアルジは潤んだ目で私の方をじっと見、それからグイッと涙を拭って笑った。
「私、諦めません! がんばります! 絶対先生から僕の弟子になってくれ、と言わせて見せます!」
アルジの目元を拭いながら、私は笑う。
「では私も、アルジ先生と呼べるのを楽しみにしているわね」
「勿論です!」
大きく力強く頷いたアルジと、頷き合ったときだった。
「あの、ネオン隊長! クルス先生!」
大きな声を上げ、さらに手を挙げたのは再びレンペスで、私とクルス先生だけでなく、皆がそちらをみた。
「なんだい? レンペス」
椅子に座り、『僕の指導は厳しいぞ、来月から本当に覚えておけよ~』と隊員たちと共にラミノーとエンゼを茶化していたクルス先生の目の前に立ったレンペスは、勢いよく頭を下げた。
「俺にもチャンスをください!」
「え?」
「へぇ」
レンペスの行動に驚くばかりの私と対照的に、面白そうに意地悪な笑みを浮かべるクルス先生。そんな先生に、頭を上げたレンペスは真剣な表情を向ける。
「俺、孤児で学もないし、頭も悪いです! 不器用だし、要領も悪いし、ケンカ……じゃなかった、剣の腕しか自慢できるものがありません! でも、死に物狂いで頑張りますから、どうか俺も弟子にしてください!」
「ふ~ん」
ニヤニヤと笑ったままのクルス先生は、頬杖を突いてレンペスに言う。
「君、確か読み書きが苦手だったよね? モリーと一緒に隊長に習ってなかったかい? 僕の指導はかなり厳しいし、教材だって難解だ。他国のものだってある。ラミノーやエンゼだってかなり厳しいんだよ? そもそも、この国の言語の読み書きがちゃんと出来ないとついて来れないんだ。教え始めて、途中でやっぱりやめた、ってなったらさ、時間と労力の無駄なんだよね。諦めたほうがいい」
「それは……」
むぐっと痛いところを突かれて言葉を飲み込んだレンペスは、それでも、とこぶしを握って訴える。
「確かに勉強はものすごい苦手です! だけど、俺、本気で、本当に頑張ります! 絶対途中で投げ出したりしません! だから、お願いします!」
「ふぅ~ん」
真剣な表情でいうレンペスに、彼と仲の良い隊員たちが『おい、辞めとけ』『俺らには無理だって』と声をかけると、レンペスは彼らに噛みつく勢いで叫んだ。
「うるさい! やってみなきゃわからないだろ! 俺はやりたいんだ! 先生! 隊長! お願いです! 俺、本当に頑張りますから!」
茶化した相手に怒鳴った勢いのまま、再び深く頭を下げ頼み込むレンペスの後頭部を見たクルス先生は、まるでいたずらっ子の様にニヤニヤと笑うと、『ちょっとまってて~』と席を立ち、二階から二冊の本を持ってきた。
「じゃあ、はい、これ」
「え?」
ぽん、と、レンペスに渡した本の表紙を覗き込むと、そこには分厚い軍記ものの小説と、この国の共通言語の辞典があった。
「あの……これは?」
本を渡され、呆然としているレンペスに、クルス先生は笑う。
「この国の貴族令息が文字を習うのに使う軍記小説さ。この本の全てを別の紙に書き写し、それから感想文を書いて僕に提出して。もちろん、医療班の仕事もこなしながらだ。わからない単語はその辞典使って自分で調べること。期限は今月の終わり……三週間ってところかな」
「先生、文字を習い始めた人間にそれは無茶です!」
「辞めとけ、お前には出来ないって、レンペス!」
「はいは~い、周りは黙る。僕はレンペスと話しているんだ」
膨大な本のページ数と言葉回しの難解さを知る貴族出身の者達が声を上げる中、クルス先生は少し鋭い声でそれを制した後、目の前で困惑した表情のレンペスを挑発するようににやりと笑った。
「皆が言うとおり、かなり大変だよ? でも、自分で言った言葉に責任をもって、死に物狂いで頑張ってみなよ。それが出来たら僕は君を医師班員に迎えるよ」
その言葉に、目を大きく見開いたレンペスは破顔した。
「……っ! はいっ! ありがとうございます! 俺、頑張ります!」
そう叫び、ものすごい勢いでさらに深く頭を下げたレンペスは、紅潮した顔を上げると、くるっとクルス先生から踵を返し、そのままの勢いで私の前……ではなく、私の隣にいるアルジの前に立った。
「レンペス? どうしたの?」
「アルジさん!」
「は……はい?」
問いかけた私……の横に立つ、アルジの名を叫んだレンペスは、そのまま喋り出す。
「俺、ここで、俺より……いや、誰よりも小さい体で頑張ってる姿を滅茶苦茶かっこいいと思ったんです! 誰にでも優しくて、素直で、隊長の事が大好きで、隊長のためにならアペニーパ殴っちゃうくらい強いのに、涙もろくて、可愛らしいところもあって、そんなアルジさんの事、俺……ずっと好きで……」
なにごとかと周りが呆然として見守っている中、物凄い勢いでここまで捲し立てたレンペスは、一つ深呼吸をすると、勢い良く頭を下げ、叫んだ。
「もし俺がクルス先生の弟子になれたら、結婚を前提に付き合ってください!」
「……え?」
「俺、本気です! 好きです、アルジさん!」
真っ赤な顔で頭を上げ、真正面から告白したレンペス。
その光景に目をまん丸くする隊員達。
そして……
「……え!? えぇ?」
そんな彼からの真剣なまなざしに、言われた言葉の意味を理解したのか、見るみるうちに茹でタコのようになり、隠すように両手で頬を包んだアルジ。
束の間の静寂は、次の瞬間、勢いよく飛んでいった。
「「「うおおおをををををっ!?」レンペス! 偉い!」よく言ったぁぁぁぁ!」
「くそ! 先越された! 俺! 俺はどうですか!? アルジさん!」
「まてまて! 俺の方がいい男です!」
「俺も! 俺もどうですか?!」
と、レンペスの告白に続いて言葉に、ここが医療院で、勤務中だと言う事も忘れて歓声を上げ、ヤジを飛ばし、待ったをかける隊員たちと、目の前の告白劇というアオハルに呆気にとられる私。
「お、いいぞいいぞ~! もっとやれ~! これでこそ青春! ほら、横やり入れる猛者はいないか~?」
と、ものすごく楽しそうにニヤニヤと笑って手をたたき出し、他の隊員をたきつけるクルス先生。
「あ、あの……」
「ゆっくり返事考えてください、でも俺、本気です! 絶対に医師班に入ります! 幸せにします!」
真っ赤な顔のまま戸惑っているアルジに、レンペスが真っ赤な顔のままそう言い切り。
隊員たちがさらに歓声を上げ、包帯やらなんやらを投げ始め、何なら患者たちもその成り行きをベッドの上から痛む体を押さえて見守る中。
「駄目だー! 何考えてるんだー!」
「待ってください、空気読んでください! ちょっと! 先輩っ!」
「駄目だ! 駄目だ、駄目だ! 絶対に駄目だ――――!」
(え!? 今度はなに!?)
大きな声が、医療院の入口から聞こえたのだった。
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