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○○動乱編-2 国内の準備

 コメントは燃料です。


 そろそろ…時代が動きます。次回から… 次回は25日にします。


「コルト・ブローニングM1895はほかの重量級の機関銃よりも歩兵随伴がしやすいです。米西戦争では分解輸送による歩兵携行が行われています。ですが、組み立てまでの時間無防備になります。継続戦闘力も低い。これらを改良しつつ軽量化します。」

 田中は別の黒板に用意していたコルト・ブローニングM1895の横図の前に移動する。

「総重量は27.8㎏ですが、本体重量は15.9㎏です。この三脚を廃するだけで10㎏近く軽量化できます。」

 田中は黒板の画から三脚を消しながら話す。

「どうやって射撃するんだ?」

「2脚をつけます。射撃時に射手が2脚を展開して伏せ打ちします。被弾の危険性が高い正面投影面積を減らす効果も期待できるでしょう。しかし、オペレーティングレバーが地面と2脚に干渉すると思われますので、保式機関砲のガスピストン方式に変更します。無論、射撃しやすいように銃床を装備します。」

 田中は絵を描く。前世の影響で黒板に書いたにしては上手い。だからこそその銃の姿をイメージしやすかった。

「2脚だと、射撃がしにくくはないか?」

「2脚は根本回転式を採用します。さらに動かしにくさを生むであろう左に偏った弾薬箱を銃の真下に。無論、弾薬輸送兵の大型弾薬箱からの給弾は可能です。ただし、軽量化と下部スペースの観点から弾薬数の減少、弾薬箱の素材(コルト・ブローニングM1895は金属製) を木製や布製などにして国産資源化・軽量化しても構わないでしょう。」

「銃身交換の方法は?」

「銃身そのものの交換は簡単です。隔螺式の尾栓を頭に浮かべてください。銃身そのものの固定方法はそれを応用したものです。なので銃身を回転させれば抜けます。」

 隔螺式とは後装式大砲の装填方式の一つである。大砲の発射という膨大な圧力を耐え抜くために大砲の根本をふさぐためのねじの一部を切り取ることで簡単に開け閉めできるようにしたものである。

「大砲を機関部、尾栓を銃身に見立ててください。回転させれば簡単に取れます。」

「だがガスピストンはどうする。ガスピストンがある限り銃身は回転させられない。」

 それはもっともな問だった。ガスピストンは銃身にガス導入孔をあけて、銃の発射時にその孔から出るガスを利用して動かす。この孔はガスピストンの動作に大きな影響を及ぼす。保有する銃身問わず、同じだけの圧力をガスピストンに送り込まねばならない。

「ガスピストンの導入管の一部を銃身ごと交換します。ガスピストンと導入管をつなげるためにボルトのようなものを使用して接続します。

 

銃身交換の手順は

1,ガスピストンとガス導入管の切断。これはねじ式もしくは隔螺式を参考にしてもよいと思います。

操作方法は回転させて引く。

2,銃身を回転させる。このための取っ手が必要ですね。でないと支援者がやけどします。

3,銃身を抜く

4,新しい銃身を入れる

5,銃身をもとの位置に回転させる

6,ガスピストンとガス導入管の再接続…1動作の逆を行う。


これらの動作各10秒でやるとするのであれば60秒です。」

 田中は話しながらエアで銃を持ったふりで射手が一人で銃身を交換する演技をする。

 しばらく、技術者たちは話し合いに入っている。一部はコルト・ブローニングM1895のもとに向かい、内部を確認している。どうやらオペレーティングレバーをガスピストンに変更できるかを調べているようだ。問題はない。どうあがいても内部機構を後ろに押せればいい。それをオペレーティングレバーでやるのかガスピストンでやるのかの差だけだ。

「銃身交換手法に関しては理解した。確かに交換は早いだろう。だが部品ごとの性格を無視すればの話だ。それに照準器がブレかねん。それを対策する手法はあるだろうが、それに伴う重量増加…問題は多すぎるだろう。特にガスピストンへの変更は大変だな。」

 仕組みや構造は理解できるだがそれに伴う問題が大きすぎることに対する反対意見が出る。

「ですがやらねば兵が死にます。米西戦争時の米兵どもは機関銃を有する敵陣を落とすための突撃で多数死んでゆきました。ロシアとの戦争では先の戦争よりも文字通り桁が違うほどの犠牲が出かねない!!」

 田中は英国で集めた情報も送っている。ロシアはマキシム機関砲をライセンス生産している。性能的に劣るガトリング砲が使われた米西戦争でも多数の犠牲者を生んだ機関銃による弾幕。それをどうにかしない限り兵の犠牲は大きいことが分かり切っている。

 前世の記憶を持つが故、旅順の激戦を知っている。

 だがそのことを話せない。話せばその時点で精神異常者扱いだろう。だからこそ、これまでの戦訓で未来を予想しているように見せなくてはならなかった。


 中国 柴五郎 4月

「まずいな…奴らは北上してくるぞ。」

 柴五郎はとある報告に顔色を変える。

「袁世凱閣下も奴らの鎮圧に際してどうして首都を危うくする形で鎮圧をするのだ…南に追いやる形であれば…むしろ…厄介なことだな…物資の極秘備蓄を始めなくてはならん。」

 柴五郎はすぐに手紙をしたためる。行き先は複数。そのうち1通の行方は誰にもわからなかった。


 岐阜県 各務原

「ということらしい。どうやら戦争が近いらしい。」

 男がその場の人間に命令を伝えた直後は日本人作業員に落胆の表情が見えたが最後の一言で喧噪に包まれる

「ではロシアとの⁉」

「3国干渉の借りを返す機会だ!!」

 日本国民は復讐に燃えている。臥薪嘗胆が合言葉になるような状況である。特に彼らはロシアとの戦争のために備えられた存在である以上、燃えないわけにはいかないのだ。

 だがそれに水を差す。

「だがロシアではないようだ。直接的にはやりあわないが、関係する可能性が大きいらしい。そもそもシベリア鉄道ができていない今、ロシアは極東で日本に挑むことはない。それに2隻では戦局は変えられん。」

 現実はそれだ。彼らの努力はまだ不足だ。

「戦局を変えるには文字通り、桁が足らない。今回の戦争でこれが使えることを示さねばその数をそろえるだけの金も資材も手に入らない。」

 日本人たちの顔に覚悟が浮かぶ。

「2号の完成を急ぐぞ。」


 砲兵会議

「どうでした?田中さん。」

 日野熊蔵は会議室から出てきた田中に話しかける。

「一応試作はすることになった。失敗しても経験にはなる。」

「そうですか…よかったですね。」

「他人事だな。君を推薦しておいた。任せたぞ。」

「私も仕事があるのですが?」

「私も特命がある。次は海軍省に用がある。ああ、自分がもう一人ほしいものだな。」


 海軍省

「確かに松島は旧式艦で転用しても大きな影響はない。先の黄海海戦でも高速艦艇よりも活躍はしておらん。だが、貴重な無煙炭を使用せよとの要請も一方的ではないか!!」

 若手士官が怒りに震えている。

「彼らの船は航続距離が足りない。燃料も特殊。風を使えば無限に移動はできるが、流されるだけだ。季節風を考慮しても大陸への派遣は単独では不安とのことだ。曳航してやらなければならない。」

「ですがそのために無煙炭を使用するのはいかがなものかと。下手すればわが艦隊の燃料事情を把握される上に費用も掛かります。無煙炭は戦時用の備蓄品ですよ!!」

「無煙炭を使用しなければ彼らの船は危険らしい。蒸気機関車の煤煙に含まれる火の粉が火事を起こすような事例もある。同様のことが軍艦で起きようものなら彼らはあの世行だ。」

「しかし、今は向かい風でしょうが、時間がたてば追い風の季節風が吹くでしょう。大陸派遣には問題ないかと存じます。」

「彼らはまだ風に慣れておらん。風頼みで大陸に向かうのは危険と判断したようだ。それに台風にでも飲まれれば確実にあの世行とのことだ。」

「しかし…」

「陸軍の大山参謀総長に頭を下げられました。私にも思い入れがある船ですが、私は飲みます。あとのことは任せます。」


 佐藤正 退役少将

様々なことを終えると田中は退役少将佐藤正を訪ねていた。

 佐藤は日清戦争中に左足を切断しなければならないほどの重傷を負い退役している。

「久しいな。田中。覚えていてくれたか。活躍ややらかし聞いておるぞ。」

 佐藤は笑いながら言う。

「また騒ぎを起こさねばならない情勢が大陸で発生している。ご助力お願いいたします。」

 田中も笑顔で用件を言う。

「情報だな。儂が東亜同文会の会員であるからか?」

 彼は軍をやめても国家のために中国を見ている。そのために東亜同文会に所属している。この組織は清国の保全と改革を求めている。政府要人も多数所属している。その過程で清国の改革派政治家の亡命幇助もしている。

「それは私の立場では不必要です。動乱目前、その時期に関しての情報さえあれば十分です。」

 確かにそうだ。政府要人が所属しているということはこちらからの情報収集も可能であろう。

「それに話せることと話せないことがありましょう。それ以上に閣下の指揮能力と政治力を必要としています。」

 必要とされている事象は全く違うことだった。

「準備は整っております。今回の大陸動乱。われらの動員は可能です。しかし、地上指揮官が足りません。閣下。われらの指揮をお願いします。」

 田中は頭を下げる。それは現役復帰のお願いだった。


 重機関銃を軽量化する行為はまともな軽機関銃が開発されるまでの期間、行われた歴史があります。有名なのはWW1のドイツ。MG08重機関銃(水冷全備総重量62㎏)を軽量化したMG08/15(18kg)が代表ですね。

 まあ、戦中には旧式化していますが。ドイツ軍が運用した最優秀軽機関銃は鹵獲したルイス軽機関銃という皮肉的な状況になりました。

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