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米西戦争編-10 戦場の女神

よーやく終わった本当に資料が少ない戦争は書きにくいな――

 第1合衆国義勇騎兵(連)(ラフ・ライダーズ)

「支援のガトリング砲は全滅…ポテトディガーは合計12門(サン・フアン・ヒルより増備されている)中2門を喪失。わが隊のポテトディガーについては損害在りませんでした。」

 ラフ・ライダーズの外部で機関銃部隊を指揮するジョン・ヘンリー・パーカー自隊の損害と共にラフ・ライダーズに所属している機関銃の損害を知らせてくる。

「人員は?」

 ルーズベルトは聞く。

「死傷者が出ていますが、後方からの補充を実施して定数まで充足します。本土から新たな機関銃が到着する時には定数まで充足していると思われます。」

 そこにいた田中がそれを聞くと首を横に振る

「戦局に間に合わないと思われます。大佐殿。隊のコルト・ブローニングM1895を委譲させるべきであると考えます。」

「わかった。その辺は君と少尉で相談して決めてくれ。」

「了解いたしました。」


 指揮所外

「ありがとうございます。」

「いえいえこの戦局待っていては危うくなるだけですので…それと、隊ごとにできるだけ弾薬を共通化します。初速の高い7㎜マウザー弾をできるだけそちらに回します。6㎜海軍弾をこちらに集中させます。」

「よろしいので?」

「マウザー弾のものは鹵獲されにくい後方で扱いたいですし、そもそも弾薬の扱いやすさの観点からクラッグ弾(30-40 弾のこと)仕様は全て他部隊に回されて、こちらに来るのは6㎜海軍弾仕様だけなのです。ならば6㎜弾はわれらの弾とみなしたほうがわかりやすいかと思いまして。」

「その意見に賛同する。こちらの兵士にも至急扱いを仕込まねばならんな。」

「頑張ってください。今の防衛線を抜かれたら真後ろは砲兵隊です。戦場の女神に『いつも(砲兵支援を)欲しがってばかりで守ってくれない』ダメ男みたいなこと言われたくはないですから。」

「そうですな」


 砲兵隊

 大規模な戦場で最も多くの兵士を殺害するのは砲兵である。小銃よりもはるかに遠くから至近弾でも致命的な砲弾を降らせるのだ。

 だが塹壕はこの砲撃から身を守るための構造物だ。本来ならば直撃さえしなければ塹壕内の兵員に大きな損害はない。

 だがそこでは問題を生じさせていた。塹壕の砲撃対策が不十分だったことにより、確実に兵士は削られてゆく。塹壕でも砲弾の爆風・砲弾断片は防げるが砲弾が爆発したときに巻き上げられる土砂が人体に直撃すれば大けがは避けられない。戦国時代では正式な戦法に投石があったぐらいの威力があるのだ。そしてこの旧米第1塹壕には土砂から身を守るための退避壕が十分な数の設置がされていなかった。退避壕も直撃を受けたら最後ではあるが。

「砲弾に余裕はある。徹底的に打ち込んでやれ。」

 初期の砲撃戦では艦砲を恐れての短時間砲撃の繰り返しだった。そのため砲弾について消費量より供給量が多かった。故に備蓄された砲弾を一気に吐き出せばこの程度のことはできる。更に艦隊からの砲撃も終わった…どうやら弾切れの模様だ。スペインの砲兵器は弾薬を使いつくした模様だ。

 スペイン軍は包囲されており、弾薬など全てにおいて補給のあてがない。抵抗するだけの弾薬を失ったならばただ殴られ続けるしか手がない。

 それでも米軍は大被害を出した。その損害数は田中義三が提唱した戦病対策で死ななかった人員分は戦死の増加と同程度の犠牲者が出た計算になる。既に弱体化していたスペイン軍による反撃は後に 

「窮鼠猫を噛む」

 と田中義三は表現した。

 そのため、第2塹壕線の死守は不要だった。もうスペインに攻め込む力は残されていなかった。

 それを知らない米軍は翌日の12日米国は野戦砲兵、艦砲を総動員した砲撃を敢行した。目標。旧米軍第1塹壕線。攻勢をさせる気すらなくしてしまうという理由があったものの、スペイン砲兵・艦砲の反撃はほぼない。ゆえに位置すらつかめずに仕方なく固定目標である第1塹壕線への砲撃という意味もあった。しかしその砲撃は熾烈だった。昼間は艦砲、夜間に野戦砲24時間近く砲撃は続けられた。既にスペイン軍の士気は途切れていた。

 圧倒的物量の砲撃により、塹壕は爆発で巻き上げられた土砂で埋まり、時折塹壕に直撃する砲弾は兵を肉片に変えてそれも塹壕に堆積する。


 スペイン側はこれに根負けした。13日。双方の現場指揮官が会談を設けた。

 最終的にまとまった条件は開城と武装解除された残存将兵の全員のスペイン本土への送還だった。

 17日ついにスペイン軍は降伏した。ただし、その降伏範囲は極めて広かった。この時降伏したのはサンチャゴ要塞の守備兵だけではなく、その東、同じく港湾として使われるグアンタナモ湾周辺の守備隊も米軍の別動隊による包囲を受けていたために同様の条件付き降伏をした。

 これにてキューバにいるスペイン軍の主力は失われた。あとは散発的な抵抗をする部隊のみが残されている。彼らの掃討が必要だった。そのためには部隊を残留させる必要があるが、そのためにはそれ相応の練度がいる。士気頼りの義勇兵では務まらない。

 その降伏の知らせは義勇兵の帰還を決定するに十分な情報だった。彼らの戦争は終わりを告げるのだった。


 ちなみに戦後編が本番みたいなものです・・・なので25日更新予定

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 戦場の女神は日本特有の呼び名で海外では戦場の神と呼ばれるそうです
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