第二章16:カルメンの行方 ②
オーフィスターニャたちが幻惑の森に入り込んだ後、中は真っ暗。 木の枝は日光を求めるため、すべての葉っぱは密集し日光を遮断して、一筋の光もなく中を照らされていない。
しかし、太陽の光がなくても、中は少しだけ別の光がある。 それは……蛍。 この暗い闇に微妙な光を持つ虫は何箇所に集めて、一つの明るい光になってる。 木の胴体、木の枝、雑草、少ないが……確実に道を照らしている。 おまけに、見たこともない植物と――、
「なんだこりゃー!!!?」
オーフィスターニャたちが遭遇する。
――二分前――
ミネルヴァたちが先に森に入ったオーフィスターニャを追いついた後、当のほんにんは何故か驚いた表情で口を開けていた。
その訳は――、
「うわぁぁ~綺麗……」
レスターは最初に頭の中が思っていたことを口にした。 でもその真っ直ぐな感想は他のメンバーも同じだった。
暗い闇に照らす蛍の光、その美しさは誰もそう思われるしかなかった。 彼女たちは不思議な光景を楽しみながら散歩する気分でゆっくりと前進する。
しかし――、
「いて……なんだ?」
一番前に歩いていたオーフィスターニャはいきなり何かとぶつかった。 彼女はぶつかったところを手で隠してる時、オーフィスターニャの表情は徐々に変えていく。
「なんだこりゃー!!!?」
そして大声で叫ぶ。 そしてその叫びに駆けつける他のメンバーはオーフィスターニャと同じ反応と表情を晒す。
「な、なんですかこの……植物??」
レスターは慌てて後ろへさがる。
「でけぇ……あれ? あの植物、あれは口……?」
ゼロがあの植物を見上げてる時、彼女はあの植物が唇みたいな形があることに気付いて、彼女は思わず唾をのむ。
「カティア様! 私の後ろまでさがっていてください……!」
危険性を察知したミネルヴァは創造で一瞬に大きな両刃の斧を創り出す。 銀色の鋼と赤のラインでデザインして、彼女とほぼ同じ高さの両刃の斧。
そしてカティアは彼女の後ろにさがる。
「ミネルヴァ?! そんな物騒な武器を創り出しても、普通の槍で十分だろっ?!」
ミネルヴァが創り出した斧にびっくりしたオーフィスターニャは思わずツッコンだ。 それを聞いたミネルヴァは初めてオーフィスターニャに微笑みを見せつけて、両刃の斧を彼女の顔までに近づける。
するとオーフィスターニャは気づく。 斧の先頭は槍と同じ構造で作り上げていることに。
「Eehhh......vale, yo no he dicho nada......(えっと……了解、ワタシは何も言ってない……)」
オーフィスターニャは何も起こってないふりをし、彼女は腰にある二つの短剣を持ち出し、目の前にいる奇妙な植物に集中する。
「しまった! わたし、武器を部屋に置いといたままだった…!」
ゼロは手を腰の辺りに触れて、いつも持ち歩いてる武器がいないことに気付いて、顔色は真っ青となる。
「ゼロ様! ゼロ様が普段使ってる武器はなんです? もしよろしければ、私が魔法でその武器を創ります」
ミネルヴァの一言はまるで希望の光のように、ゼロが顔を振り返った瞬間、既に喜びの涙で満ちていた。
「本当か?! あ、でも……わたしの武器はその……少し複雑だ……それでも大丈夫?」
「問題ありません」
不安な質問で聞くゼロに対して、ミネルヴァは自信で満ちた即答で答えた。 それを聞いて安心したゼロは思わず笑う。
「ありがとう! わたし普段使ってる武器は……拳銃だ」
「ハァ? 何ィィ?! 拳銃……だと……? なんでお前がそんな物騒な武器を持っているんだ?!」
ゼロが自分の武器の名前を言った途端、全員は驚く。 オーフィスターニャも、思わず頭を振り返ってツッコンだ。
「ゼロ……さん? あなたはどこで拳銃を手に入れたのですか? あの遠距離武器は確か大昔に人間種が使用した武器で、荒獸族は十年前それを再現した……あの拳銃のことですか?」
オーフィスターニャの次に、レスターも驚いたが、彼女は舌を噛まず、拳銃の由来を簡潔に説明した。
「いやぁ……手に入れたではなく、わたしが内緒で創ったオリジナル拳銃だ。 全長十八センチ、重量五キロ、装弾数九発、専用弾丸は六ミリ徹甲弾」
「はい」
「はやっ!」
ゼロがちょうど自分の武器の特徴を細かく説明した直後、ミネルヴァは完璧に再現し、ゼロに渡す。
「そして弾倉に収納してる弾が切れた時、私に言ってください、新たな弾倉を創ります」
「お、おお……ありがとう……」
ミネルヴァから拳銃を手に入れたら、その重さと手応えを感じた瞬間、ゼロの中は電気が走ったみたいに震え、唇の形は徐々に笑みに変わっていく。
「オーフィス! そこからどいて……! 今からこの拳銃の威力を試す好機が来た!」
するとゼロは撃つ体勢を構え、片手であの重い拳銃を持ち上げた。 オーフィスターニャは頭を振り返って、彼女が拳銃の射程範囲にいることを気付いて、慌ててそこから離れた。
そしてその直後、ゼロがセーフティレバーを解除し、引金を引くする寸前、彼女は唱える。
「中級・無属性魔法『快速』」
ゼロが唱えながら、照星で目標を定めていた。 目標が照準と一致したら彼女は迷わず引金を引いて、拳銃から大きな炸裂音が彼女たちの耳に響く。 すると、目の前にいるたくさんの奇妙な植物、その内の二体が大きな穴が開けられ、そこからまた奇妙でドロドロしてる黒色の液体が現れて、地面に落ちた数秒後、そこに浅い穴が開けられていた。 そしてその植物はそのまま倒れる。
それを見たオーフィスターニャたちは目を大きく開けて、驚いてる顔で見詰める。
「す――」
「すっげぇぇー!!!!!」
オーフィスターニャが何か言おうとしたら、ゼロが先に大声で叫んだ。 まるで彼女も初めて撃ったみたいで、彼女はキラキラした目で握ってる拳銃を見詰める。
「こ、これ……この威力ッ! まさかここまで凄いとは思わなかった……ねぇねぇ! 凄いでしょう!」
「自分の武器なのに、何最初に驚くんだ!?」
早速オーフィスターニャがツッコンだ。
「ァハハハ……実は……わたしの拳銃……元々弾がないんだ……ァハ、ァハハハハハ……」
真実を語りながら苦笑いするゼロは手で真っ赤になった顔を隠す。
そして当然のように、みんなの顔は同じ表情で、同じことを考えていた……ミネルヴァを含めて。
「(じゃ(では)なんで(なぜ)その拳銃を創った(のですか)?)」
「そんな目でわたしを見るなぁ! 仕方がないだろ? 唯一見つけたサンプル、空の弾丸はこれしか見つけなかった!」
必死に説明しているゼロの口調は言い訳しか聞こえないけど、みんなは知ってる、ゼロは嘘をつかないエルフであることに。 そう思っていたみんなと同時に、ゼロは話を続ける。
「本当のことを言うと、わたしが正式に国家軍に編入された時、この拳銃の専用弾丸を探そうと決めて……それまではゼノと同じ、小型ボーガンだけを使うと決めたのだが……ミネっちの唯一魔法の特性を聞いて、もしかしたら今あの拳銃を使えると思って、そのつい……口が滑った……なんかすいません……」
反省して、最後に頭を下げて謝るゼロの姿は誠意そのままだった。 すると、ミネルヴァは植物たちに警戒ずつ、ゼロのところへ近づく。
「ゼロ様が謝ることなんて一つもありません、むしろ私がお礼を言わせてください。 皆様に役に立てるのは私の本望です」
ミネルヴァの感動の言葉を聞いた瞬間、涙が一瞬に溢れ出す。
「ミネっち! お前、本当にいいエルフだ! ありがとう……!」
「よかったね、ゼロさん」
「うん! カティア、お前んちの女中は本当に優しいエルフだッ!」
「お褒めの言葉、ありがとうございます、ゼロ様」
さんにんが仲良くしてる間、オーフィスターニャとレスター、ふたりは植物を退治していた。
奇妙な植物たちは根と枝を鞭のように使ってオーフィスターニャたちを襲いかかって、ふたりの少女はギリギリで躱す。
「そ、そう言えば……! レスター、お前の武器は?」
オーフィスターニャが攻撃を避けると、彼女はレスターの両手には何も持っていないことに気づく。 しかしその答えはオーフィスターニャが質問した直後で明らかにとなった。
「ハッ! ヤァーッ!」
小柄な体の少女は信じられない速さと威力の打撃と蹴りで次々に植物たちを打ち倒していた。 彼女は攻撃を避けると同時に反撃する。 たとえ距離が数メートル離れても、レスターは一瞬に距離を縮んで攻撃する。
感心していたオーフィスターニャはあるささいな、普段気づこうともしないことに彼女は気づいたんだ。 レスターは素手で敵を打ち倒していくではなく、彼女は特別な手袋を装備していた。 それだけではない、彼女が履いている靴は学校から配ったブーツではなく、戦闘特化のブーツだった。 色は同じだけど、外見は少しだけ違ってた。
そして何より、レスターが迎撃する構えとその格闘技、今までの印象をひっくり返すくらい衝撃的だった。 レスターが攻撃する時、植物たちはまるで紙のように吹っ飛ばされ、簡単に倒れていく。
普段は大人しくて少し恥ずかしがり屋の優しいエルフなイメージだった、しかしオーフィスターニャが今目にしたのは強くて頼もしいレスターの姿であった。
あまりにも衝撃的だったことに、彼女は思わずレスターにある質問を聞く。
「レ、レスター……? お前……何時から格闘技を覚えたんだ?」
オーフィスターニャが聞こうとしている間、レスターはもう一体の植物を倒すと、彼女はいつもの照れ顔でオーフィスターニャを見て答える。
「えっ? あ……えっと……格闘技はお婆ちゃんから教わりました。 この特製手袋とブーツもお婆ちゃんが昔に使っていた物です」
「へぇー……見たことのない格闘技だな……でもカッコイイ! レスターカッコイイ!」
オーフィスターニャの目がキラキラと輝いていた。 彼女はレスターに近づいて、キラキラした目で見詰める。
「おお、オーフィスターニャさん!? ち、近い近いです!」
そしていつもの照れてるレスターの反応は依然として可愛い。
「あっ、ごめん……」
「いえ、大丈夫です、ちょっとびっくりしただけです。 それより、早くあの奇妙な植物たちを片付けましょう……!」
「そうだな! でもその前に……」
「ん?」
オーフィスターニャは何故かレスターに背を向けて前進する。 少し気になった彼女は上半身を傾け、オーフィスターニャが何に向かったのかを見たら、彼女は直ぐに分かった。
「お前ら、いつまで後ろに待機する気? 早くワタシたちと一緒にあの植物たちを退治しよう!」
オーフィスターニャは彼女たちの後ろに楽しくおしゃべりしていたさんにん、ゼロ、ミネルヴァとカティアに声をかける。
「オーフィスたちで十分やつけるじゃないか」
「そう言う問題じゃあない! ワタシはチームだろう? ならばチームらしく、みんなで連携しよう!」
「オーフィスターニャさんの言う通りです…! ミネルヴァ! 私たちも植物退治に手を貸そう!」
気合十分のカティアは腰に置いているレピアを抜刀して構える。
「わかりました。 微力ですが、お手伝い致します」
そしてミネルヴァは彼女とほぼ同じくらい高さの両刃の斧を軽々しく持ち上げて振る。
「お前が持ってる武器でそのセリフ、ちっとも説得力がない! まぁいい……さっさと片付けよう!」
オーフィスターニャが合図したら、ゼロを除いて、全員は一斉に迎撃する。
ゼロは後方から支援攻撃している、彼女は図体のでかい植物を狙って撃っていた。
カティアとミネルヴァのコンビネーションは呼吸するように自然で無駄のない動きで正面から敵を次々と倒していく。 カティアはレピアで相手に刺して動きを封じ、ミネルヴァはその直後にカティアの頭上を飛び越えて敵を真っ二つに割る。 或いはミネルヴァが先に敵を真っ二つにして、カティアは真っ二つにした木を串刺しして、そのまま敵に投げつける。
そして単独行動で動いているオーフィスターニャとレスターは左右の植物たちを倒していた。 オーフィスターニャは附雷の効果で二本の短刀に雷属性魔法を付けて、植物たちは縦で真っ二つにされて、切られた部分は実際の雷に直撃した跡みたいに焦げていた。
右側の敵がレスターにぶっ飛ばされていく様は正しく一撃必殺であった。 植物たちはレスターの動きを捉えることもなく、反撃される一方だった。
全員を一言で例えると……それは……『圧勝』であった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
植物たちとの戦闘はそう長引くこともなく、二三分で決着がつけた。 そしてオーフィスターニャたちに倒された植物たちは徐々に白い霧と化し、姿を消した……まるで最初から存在しなかったみたいに。
そんなに疲れてないオーフィスターニャたちは武器を収まって、お互いの戦いっぷりを讃える。
「カティアさんとミネルヴァさんの連携、本当に凄かったです! 息が合ってると言いますか……なんと言いますか……まるでお互いの攻撃パターンとリズムが分かり合えるみたいに滑らかで、自然な動きでした!」
レスターは珍しく興奮していた。 彼女は真っ先にカティアたちに近づけて、ワクワクした顔で彼女たちを見つめていた。
それに対して、あまりにも普段と違うイメージを見せられたレスターの戦い方で、カティアとミネルヴァは数秒間、レスターをべつじんと見間違えていた。
「い、いえいえ……これは以前、家にいた頃、お姉ちゃんとデュエルする機会が多少ありましたし……い、いつもミネルヴァと一緒に組んでいたからです……」
カティアはもじもじと説明しながら、そっとミネルヴァの手を握る。 それに気づくミネルヴァはカティアに答えるように、彼女は握られていた手を握る。
「カティアさん? 顔、真っ赤になってますよ? 具合いでも悪いのですか?」
カティアの顔がトマトのように赤くなったことに気づいたレスターは思わず慌てて心配する。
その間、ゼロはみんなの背後で静かに後ろポケットから新たな弾倉を持ち出し、拳銃に補充していた。
そしてオーフィスターニャは周りの光景を見て、別の道を探していたら……彼女の目の前がものすごく濃い霧が現れる。 霧はまったく前を見せてくれない、地面でさえほぼ見えない。 警戒になったオーフィスターニャは慎重に一歩ずつ霧に近づいて、足場を確認する。
「(大丈夫そうだ……)」
確認したら、オーフィスターニャはみんなを呼んだ。
全員が集まった後、オーフィスターニャは指で霧の方へ指す。
「この先に道があるみたいだ」
しかし霧はあまりにも濃くて、カティアたちは少し不安になる。
「ほ、本当にこの道しかないですか?」
「探したけど、これしか見つけなかった」
入りたくないという顔をしていたカティアは必死に別の道を探していたが、オーフィスターニャの一言で彼女の動きを凍らせた。
「心配しないでくださいカティア様。 私が全力でお守り致します」
ミネルヴァの頼もしいセリフでカティアはさっそく感動して、泣きながらミネルヴァの胸元に飛び込む。
「オーフィス、お前が先に入れ。 安全かどうか確かめに行け、わたしたちはお前の後ろについてるから」
「ゼロ、お前まさか……ビビった?」
「いや。 単純にめんどくさいからそう言っただけだ」
「…………」
あまりにも単純すぎる理由でオーフィスターニャは呆れた顔を晒す。
「分かった分かった! ワタシが前へ出ればいいだろッ!?」
「よっ! わたしたちのリーダー!」
ゼロは明らかにオーフィスターニャを挑発していたけど、オーフィスターニャは敢えてそれを無視して、先に霧に入った。
オーフィスターニャが三歩を歩くと、彼女の姿が消えた。 それに気づいたミネルヴァはカティアの手を握って、彼女たちも霧に飛び込んだ。 続いてレスターとゼロも霧に入った。
ふたりは前にいるさんにんを追っていた、しかし前がまったく見えなくて、レスターは危険性があることを予想し、思わず走るのをやめて、ゼロと肩を並べて歩き出す。
歩いて約三十秒、霧が徐々に薄くなり、目の前の道は前より見えるようになった。 そして彼女たちは前に走っていたオーフィスターニャたちの背中を見つけて、無事に彼女たちと合流することに成功した。 しかし、新たな問題が彼女たちの前に訪れた。
「んで? なんでここに、いかにも迷路っぽい十字路があるんだ?」
オーフィスターニャは苦笑いでツッコンでいた。 レスターたちがオーフィスターニャたちと肩を並べると、その言葉の意味を理解した。
霧はさっきと同じ、薄くなっている、そして全員見た光景は広い空間と三つの道。 左、右、前、三つの方向とさっきオーフィスターニャたちが来た方向を加えると、ちょうど十字路となっている。
どの道が正解なのかも分からないオーフィスターニャたちは迷う。
オーフィスターニャたちが幻惑の森に入ってから既に二十分が経過した。 十字路の迷路と霧でほぼ先が見えない道……楽勝と思われた先に、新たな難関がオーフィスターニャたちの足を止めた。
「これから……どうすればいいんだ?」




