第一章9:三つの学園
「ワタシたちの教室って……何処にいるんだ?」
「あ……」
オーフィスターニャの疑問はさっきまで焦っていたアルファーニの顔を間抜けな反応に変えた。
しかしアルファーニは諦めず、真剣に考える。
「そう言えばそうだ……私たちの教室は……どこにいるんだ? ミネルヴァ、君は何か知らない?」
考えるのをやめたアルファーニはミネルヴァに問う。
「いいえ、お嬢様。 私、昨日からずっとお嬢様の後ろにいたので、私も知らされていません」
「そっかぁ……」
期待していたアルファーニの顔は一瞬にがっかりする。
その時、オーフィスターニャも悩んでいた。 腕組して、複雑なことを考えてるみたいに、表情も複雑な顔になっていた。
それでも、彼女たちは答えを見つかるところか、逆に時間の無駄だった。
「あぁもう! くよくよ考えてもなにも始まらない! アルファーニ、ミネルヴァ! 行くぞ!!」
逆ギレしたのか、オーフィスターニャは叫んで、一足先に前へ走る。
「行くって、君は教室がどこにいるのか、分かったのか?」
「知らない! が、こんなところで立ち止まるよりましだ!」
そう言ったオーフィスターニャの姿は既に校舎の外に居た。
「まったく……! ミネルヴァ、私たちも行こう!」
ため息をつくアルファーニも走り出す。
「はい!」
そしてミネルヴァは笑ってアルファーニたちを追う。
こうして、オーフィスターニャたちは東の校舎から走り出し、自分たちの教室がどこにいるのかが分からない状態で楽しく走っていた。
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オーフィスターニャ一行は、校舎から走り出した後、さっそく問題が発生した。
「いくらなんでも、この学園……広過ぎぃぃ!!!!」
と、オーフィスターニャの叫びが、遠くに店の前で掃除していたエニェールでさえ聞こえたみたい。
この学園、『コローナ・デ・サフィーロ』の全体は全国の学園の中でもその規模はトップ。 しかし、この国では実力主義と魔法の優劣ですべてが決まる。
しかし、それでもこの学園はトップスリーの強豪校の一つだ。
トップは『ブラサレテ・デ・エスメラルダ』、ファーブラの中心に建造された全国一の学園。 そこに通う生徒はすべてエリート、或いは魔法の質の高い持ち主が集まる場所。 たとえ高い権力を持つ貴族でも、実力がなければ、入学すら認められない。
全校生徒の数は『コローナ・デ・サフィーロ』の約半分。
続きは『アニージョ・デ・ルビッ』、寒い北に存在する全国ナンバーツーの学園。 そこの生徒の大半は魔法の天性を持つ留学生たちが集うところ。 過酷な環境で、学園の方針も過酷。 そのせいか、全校生徒はオーフィスターニャの学園に比べて、三分の一足らず。 それでも、ファーブラの数多な伝説はこの学園の卒業生が自らの手で歴史に刻まれた。
三つの学園は「女王のジュエリー」、宝石の名前が付いてるだけじゃなく、アクセサリーの名前も含まれている。
コローナ・デ・サフィーロ、青玉の王冠。
アニージョ・デ・ルビッ、紅玉の指輪。
ブラサレテ・デ・エスメラルダ、緑玉の腕輪。
それぞれこの国の初代女王が付けていたアクセサリーを指名している。 そして、そのアクセサリーは今に至る。 第八代目の女王がつけています。
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「説明長っ!」
と、いきなりオーフィスターニャが文句を言う。
「なにが説明が長いって?」
そばで歩いてるアルファーニは無表情で聞く。
「ワタシの脳内説明だ」
「脳内説明……ですか? いったい何を説明したのですか? オーフィスターニャ様……」
アルファーニの後ろに居たミネルヴァは右手を頬を触って、不思議な顔でオーフィスターニャに質す。
「いや……単にこの学園がデカ過ぎて、思わず他の二つの強豪校を思い出したのさ……ハァ……」
疲れたオーフィスターニャはため息をつく。
「ブラサレテとアニージョかぁ……」
アルファーニは二つの学園の名前を言い出したら、何故か口調は悲しく、或いは嫌がる声がした。
それに気付くオーフィスターニャは何も言わず、気持ちを変えて、無言のまま先に歩くスピードを上げる。
彼女たちは歩いてると、いつの間にか学園の入口まで着いた。 美しい庭、虹を描く噴水、小鳥の戯れ合いが奇妙なメロディーを歌う。 そして更なる奇妙なことが、オーフィスターニャたちの前にあった。
「おい……あれって、何? 噴水の近くに、動物たちが一箇所に集まっている……!」
「うさぎ、猫、犬、小鳥、猿も……! 狼まで……!」
驚くオーフィスターニャ、と動物の種類を数えるアルファーニ。
多くの動物はまるでなにかに引き寄せたみたいに、徐々に集まっていく。
不気味を感じるみんなはそっと動物たちに背を向け、そこから去ろうとしたら――、
プチッ!
アルファーニはうっかり地面にあった木の枝を踏んで、嫌な音が響く。
「アルファーニ……!」
「ごめーん!!」
オーフィスターニャは怒って、アルファーニの名前を低い声で呼ぶ。
「誰だっ! そこにいるやつ、何者!?」
と、力強くの声が動物たちの方向から聞こえた。
「えっ?」
その声で不意打ちにつかまれたオーフィスターニャは間抜けな面しか説明できない反応をした。
「今の声まさか、あの動物たちの中に、誰かいるの?」
「そうみたいです、私が確かめましょうか?」
とても良い雰囲気とは言えない状況で、アルファーニはぷるぷると震える。
逆にミネルヴァは冷静なままで、自ら確かめる準備する。
「そう――」
「必要無い!」
まだアルファーニが話してる途中、あの声が再び聞こえた。 その声はあまりにも大きかったことで、動物たちはぷるっと震え、すぐに逃げ出した。
動物たちがオーフィスターニャたちの注意を引き付けてる間、ブーツが地面に歩く音がした。 すると――、
「ふん……」
「お、お前は……!」
声の持ち主が現れて、ニヤリと笑う。
そして正体を知ったオーフィスターニャの目は大きく開けて、驚き顔を晒す。




