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出涸らしと呼ばれた第七皇子妃は出奔して、女嫌いの年下皇子の侍女になりました  作者: 秘翠 ミツキ


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八十七話〜外出〜



「昨日はリズさん、大活躍でしたのよ!」


 翌日の朝食の席でディアナは町での出来事を少し興奮気味に語る。

 昨日屋敷に帰って来てからもほぼ同じ内容の話をしていた記憶があるのだが、セドリック達は全く気にした様子もなく、まるで初めて聞いたかのように彼女の話に耳を傾けていた。

 誰も指摘しない不自然さにエヴェリーナだけが困惑していた。


「リズ嬢は勇敢な女性だな!」


「本当ですわ! 颯爽と子供達の前に立ちはだかる姿はまさに勇士のよう……素敵でしたわ〜」


 恍惚とした表情を浮かべたディアナは、称賛するアルバートに激しく同意していた。そして側に控えている彼女の侍女達も大袈裟なくらいに頷く。


「でも、リズ」


「はい」


 セドリックの空になったカップにお茶を注いでいると、彼は少し不安気な顔をしていた。


「今回は相手が子供だったからいいけど、もし今後同じような事が起きた場合には、相手が誰であれ無茶はしないで欲しい」


 仮に昨日の相手が子供でなくならず者のような者達だったなら、恐らく無傷では済まなかったかも知れない。

 セドリックの懸念は理解出来る。エヴェリーナの事を心配してくれている気持ちも素直に嬉しいと思う。だが、例えばもしセドリックの身が脅かされ彼自身ではどうする事が出来ない状態に陥った時、エヴェリーナは彼を守る為身を呈す覚悟は持っている。

 それにそれがセドリックでなくルークであっても見捨てる事は出来ない。


「はい、肝に銘じておきます」


 だがそんな事を言えば優しい彼は怒るだろう。だから嘘を吐いた。




 それから数日後の滞在八日目の朝ーー


 例の出来事をきっかけに、ルークは堂々とエヴェリーナに話し掛けてくるようになっていた。ただ相変わらずエヴェリーナとサイラス以外の人間とは口を利く事はない。


「リズ、ーー!」


「ルーク様、約束した通り人目がある時は通常の言葉で話されて下さい」


 何故か古代語で会話したがるルークに耳打ちをすると彼は不満そうな顔をする。

 少し前にエヴェリーナが古代語が話せる事は他の人には秘密にして欲しいと約束をした。セドリック達には知られたく無い。絶対に不審がるだろう。


「どうせ誰も分からないのに」


「ルーク様」


「ちぇ、分かってるよ」


 エヴェリーナは屋敷の侍女にルークと一緒に外出する旨を告げると馬車に乗り込んだ。

 実はルークがどうしても森に行きたいと言うので、昨日の内にサイラスから許可を貰い更に馬車の用意と護衛二人をつけて貰った。

 セドリック達もついて行くと言い出したが、ルークが断固拒否をしたので結局二人で出掛ける事になった。


「前に一度、おっさん……じゃなくて公爵と森に行った時に青い池を見たんだ。リズも見たら驚くぞ」


 窓の外を眺めながら楽し気に話す姿に思わず笑みが溢れる。

 今の彼はただのあどけない八歳の少年にしか見えない。

 それにこの数日、改めてルークと接してみて思った。考え方は当初と変わらず確かに傲慢ではあるが、素直な一面も見られる。

 根気強く言葉を訂正すれば、正そうという姿勢が見られた。その事が嬉しい。


「それは楽しみです」


 暫くすると馬車は通常の道から森の中へと入った。窓の外は先程とは様変わりし、延々と青々とした草木ばかりとなる。


 変わり映えのしない景色に飽きたルークと雑談をしている間に馬車は森の奥へと進んで行き、気が付けばルークが話していた青い池へと到着をしていた。





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