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出涸らしと呼ばれた第七皇子妃は出奔して、女嫌いの年下皇子の侍女になりました  作者: 秘翠 ミツキ


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四十二話〜検問〜




 翌日、セドリックに連れられ着いた先は予想通り関所だった。

 以前来た時と比べて物々しい雰囲気で、兵士だけでなく騎士の姿もある。その中に見覚えのある人物がこちらに気付き近付いて来た。


「お、セドリックどうしたんだ? それに、後ろは……」

 

 不審そうな視線を向けられ、エヴェリーナはマントのフードを少し動かし顔を見せた。


「リズ嬢じゃないか! 久々だな! 元気だったか?」


 大袈裟に挨拶をするアルバートに、エヴェリーナは会釈で返す。


「あ、まさかデートか?」


「ち、違うに決まっているだろう⁉︎」


「でも双子に噂は事実だって宣言したんだろう?」


「……さあ、記憶にない」


「お前に覚えがなくても、噂になってるぞ」


 至極楽し気にニヤニヤするアルバートを、セドリックは睨み付けた。


「セドリック様、噂ってなんの話ですか?」


「リズは知らなくていい事だよ」


 二人の会話から自分にも関係していると思い気になり訊ねるが、セドリックは言いたくないみたいだ。

 彼はやんわりと拒否をして、爽やかに笑った。


「おいおい、当事者なのにそれはダメだろう」


「アルバート、君、しつこいよ。それより、君がいるって事は今日は第二部隊が当番なんだろう?」


「まあな〜、仕事増やされて本当ついてないよな」


「怪しい人物は?」


「いや、全く」


「ちゃんと調べてるんだろうな」


「当然だ」


 セドリックから訝しげな視線を向けられたアルバートはあからさまに視線を彷徨わせる。


「本当だって! ただちゃんとやってはいるが、日にどんだけ人が通行すると思ってるんだよ。荷馬車とかはくまなく調べるが、全部の通行人を上から下まで調べるのは限界があるだろ。それにかなり詰まってるし、ちんたらしてたら閉門まで間に合わないんだよ」


 うんざりした様子のアルバートの視線の先を見れば、検問待ちの馬車や人が長蛇の列をなしている。

 だが仕方がない。

 ルヴェリエ帝国で一番規模が大きく人口が多い街なのだから、日の通行量は万を超えるだろう。

 常駐している兵士の他に騎士団を導入した所で、全ての人間をくまなく調べるのは現実的ではない。

 大体の通行人達は通行書を見せ、通過している。

 後は検問する人間次第で、怪しい人物がいれば頭のてっぺんからつま先まで、調べるみたいだが、正直これでは賭博と変わらない。

 兵士や騎士ならばある程度勘が働いたり鼻が利くとは思う。ただそれも個人差が大きく、そこまで当てにはならないだろう。

 こういった手法を取るならば、徹底的にやらなくては最大限の効果を発揮せず、結局は運任せになってしまう。


「それで、一体何しにきたんだ?」


「暫く様子を見させて欲しい」


「それは構わないが、リズ嬢はどうするんだよ。おい、まさか、この件の事話したのか?」


 初対面の時から感じていたが、細かい事など一切気にしなそうなアルバートが、セドリックの反応を見て顔を引き攣らせていた。その事に眉を上げた。

 思ったよりも真面目な人なのかも知れない。


「全ての責任は僕が取る」


「たく、団長にバレて何か言われても俺は知らないからな」


「承知の上だ。リズ、行こう」


「はい」


 少し心配になるが、今更だと諦めセドリックの後について行く。

 

 見張り台の内部へと入ると薄暗い螺旋階段を上がり、最上部まで着くと外へと出た。


「今更だけど、高い場所は大丈夫?」


「はい、問題ありません」


 推定高さ二十メートル程で、予想通り風は強い。

 辺りを見渡すと、ラルエットの街並みを一望出来絶景だった。

 改めてこんな風に街を眺めると、異国にいるのだと実感をして不思議な気分になる。


 セドリックは外套の内側から、小さな双眼鏡を二つ取り出すとその一つをエヴェリーナへと手渡す。


「あまり近くで見ていると警戒されるからね」


 確かに普通の通行人ならば気にも止めないだろうが、運び屋ならばその警戒心は尋常ではないだろう。

 ルヴェリエ帝国の処罰方を詳しくは知らないが、ローエンシュタイン帝国で違法物に関わった者は例外を除き極刑になる。西大陸の諸外国も違わずその罪は重かった。

 それ故、恐らくルヴェリエ帝国も同様だと思われる。捕まれば一巻の終わりだ。彼等も命懸けという事だ。そう易々捕まえさせてくれる筈がない。


「まあ目を凝らした所で、正直見つけられる自信はないけどね」


 力なく笑うセドリックを尻目にエヴェリーナは双眼鏡を覗き込んだ。


 

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