96.Vリーグ(その3)
ついに今シーズンのVリーグが始まった。私はやっぱりVリーグだけで、皇后杯も黒鷲旗も出れないようなので、ここで頑張らないといけない。ジャンパーズはチーム全体としては若返りが進んだが、レギュラーメンバーはあまり変わらない。つまり、あまり試合に出ていないベテランが自由契約になった。一人は移籍だが、残りは全員がそのまま引退、代わって高卒や大卒の新人たちが入って来た。
私は高校で部活の顧問をやっているから、切る側の気持ちも切られる側の気持ちもよくわかるので辛い。
でも実際、新人で来た子たちの方が資質は高そう。即戦力かというと、さすがに開幕早々に出れるような子はいないけど、近い将来、レギュラー争いに参加しそうな子がいる。いまさらながら、社長はちゃんと仕事をしているんだなと思った。
初戦、2戦目は同じ相手と土日に試合がある。昇格直後のジャンパーズは当然アウェイから始まる。しかもいきなり昨シーズンの優勝チームが相手だ。V1は当然V2よりレベルが高いだけじゃなく、会場も大きく観客動員も多い。そして演出が派手だと思う。強豪チームのシーズンオープニングゲームだから当たり前かもしれないが、試合開始前に歌手によるライブがあったり、演出にすごくお金をかけている感じがする。演出は羨ましいわけじゃないけど、この広いホールで観客席が盛り上がっているのは羨ましい。
ジャンパーズのホームゲームではこんな派手な演出はできないけれど、今日明日と勝って、V1でもやっていけることを証明すれば、来週のホームの試合は盛り上がるに違いない。やっぱり勝つのが一番大切だ、私はそう思う。
練習にはあまり参加できていないけれど、これでも去年に比べると事前に練習もできているから、問題はあまりないと思う。去年はそもそもシーズン途中からの参加だし、最初はリベロでその後ローテーションに入った。今年は開幕からセッターの対角、オポジットの位置に入っている。
オポジットは攻撃力の高い選手の場合スーパーエースと呼ばれることもあるが、私の場合は守備的なオールラウンダーだからユニバーサルと呼ばれる。セッターに代わってトスを上げる時もあるしね。ライト側で打つことが多くなるので、左利きがやや有利と言われている。私向きのポジションだ。
相手は昨年の優勝チームだから当然強い。特にエースの外国人選手が大きくて強い。でも私から総合的に見ると、早苗ほどではないので、そこまで怖くない。前衛にいる時はこの相手のエースのブロックに回るが、最初から勝負を避けられている。
逆に私が打つ時は、2枚ぐらいブロックが付くことが多いが、フェイント、ブロックアウト、ドライブなどの変化、レシーバーの位置と足の位置と重心、そのあたりをちゃんと確認しておく。当然、相手は私を誘導しようと考えているはずだから、それを頭に置いた上でするべきことをすれば、だいたい点が取れる。だから相手のブレイクはほとんど許さないので、これで1セットは取れた。でも私に集めすぎだから、もうちょっと散らすようにセッターには言っておく。後衛にいる時なんか、私がレセプションして、その後すぐにバックアタックのサインが多すぎる。
2セット目はこちらが散らしたように相手も散らしてきた。私は相変わらず相手のエースをマークをまかされているが、これが結構無駄なジャンプになるので跳ぶのがもったいない。だから、相手のトスを読んでクロスステップで隣の選手のブロックにずれてシャットアウト試みたら上手くいった。よしよし、これでまたエースに上げて来てくれたので、私も意味のあるブロックを跳ぶことができる。コースをできるだけ塞いで、レシーブできるように誘導するのがブロッカーの仕事だ。
後衛に入ったら私の役目はレシーバー兼バックアタッカーで、たまにセッター代理を務める。リベロじゃないから普通にトスを上げていいからね。私のチーム練習時間の問題で、私がセッターに入る練習はほとんどしてないから、こちらからちゃんと合わせて上げないといけない。CやDのセッターが後ろにトスする速攻はアイコンタクトができないけど、適当に跳んでくれたらこちらでちゃんと合わせられる。点差はなかなか離れないけど、2セット目、そして3セット目も競り落とした。
次の日の2戦目、1セット目からボールを散らしてくれたけど、それでも大事な場面になると私にボールが上がる。当然のように読まれているのだけど、なんとか経験と技術で決めきる。例えばライト側から敢えて右手で打つとか、やりようはその場その場でなにか見つけることができる。2セット目はなにがあったのかわからないけれど、やたらあちらのエースが私のブロックに当ててきた。
もちろん回転かけたり、ブロックアウトを狙ってきたりいろいろ試みているみたいだけど、私はそれに対応できる。そんなこともあって、2日目の方が楽に勝つことができた。昨年のチャンピオン相手に2連勝という絶好のスタート。これなら来週のホームゲームも盛り上がるんじゃないかな。
それに、早く終われたから早めに東京に戻れそうだ。明日の月曜は朝から授業だしね。私はチームバスで途中のJRの駅で降ろしてもらった。今日は前回の反省を活かして、ケチらずにグリーン車使うか。でも私のわがままでチームバスを降りたわけだから交通費が出ない。お金がもったいないな、とか思っていると窓際の席がまだ空いているみたいだから普通の指定席で帰ることができた。
新幹線の駅までのローカル線に乗っている時も、新幹線への乗り換え駅でもカメラで撮られることがどんどん多くなっている気がする。まあ勝ったから私は気分よく東京に戻った。




