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音楽室と体育館  作者: 多手ててと


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81.文化祭(その1)

9月8日、私と早苗はハワイで行われた、ビーチのオリンピック予選で優勝した。これで私と早苗は来年のオリンピックへの出場が決定。帰国した時点でインドアのワールドカップの直前合宿が既に始まっていたが、無理を言って早苗より2日遅れで合宿に合流させてもらうことにした。


その2日間、生徒は授業があるが、私は授業を入れていない。1日目は授業時間中を時差調整のための短期睡眠をとった以外は部活の予習をする。各部の練習風景を映像で取っておいてもらったのだ。それを参考にして、放課後は9月後半にある女バレの春高予選の最終チェックに専念する。ひととおりの指導はしたので、申し訳ないがあとは生徒で頑張ってもらうしかない。おざなりで悪いが男バレもちょっとだけ見た。


2日目も6限までのうち、体育館の空き時間は自主練習をして、体育館を使う時間は音楽室でピアノを弾いた。私が授業をしないのだから、当然音楽室は空いている。その後は昨日見たビデオを参考に、吹奏楽部と合唱部を半々ずつ指導をする。文化祭に向けて、この曲をどうしたいのか、観客にどう感じて欲しいのか、などできるだけ全体の話をする。個別の指導は部長と各パートリーダーに方針だけ伝えて後は任せた。それだけ終えると、私はそのまま新幹線に飛び乗った。大阪の代表チームに合流したのはワールドカップ開催日、前々日の夜ミーティング中だった。


「どうも遅くなって申し訳ありません」


合宿は2週間も前から始まっていたが、私と早苗はビーチでハワイに行っていた。これはある意味仕方がない。だが相方の早苗より2日遅れで開催ぎりぎりに合流する私への視線は冷たいような気がする。気のせいではないはずだ。


そして今回、私にとって頭が上がらない人物が新たに代表に呼ばれている。高校で2コ上だった椿つばき先輩だ。昨シーズンV1で活躍したので呼ばれたのだと思う。代表で一緒になるのは初めてだ。早めに挨拶した方がいいので、早速空いていた隣の席に座った。


「椿先輩、大変ご無沙汰してます」

「久しぶりね、吹雪ちゃん。早苗ちゃんとふたりで活躍しているのをずっと見ていたから、今回代表で一緒にやれるのは嬉しいわ」


私のすぐ前の席に座っている早苗も、心なしかいつもより大人しい感じがする。


代表は強くて実績のある選手がそれなりに強い発言力を持つ。だから3年前ならともかく、今は私と早苗がビーチを兼任するなど、結構好き勝手やれているのもそのおかげだ。


その一方で、体育会系独特の縦の上下関係もやはり強い。私も早苗も中学時代はお山の大将で、高校に入ってから、体系立てて育て上げられたタイプだ。だから直接お世話になった椿先輩には頭が上がらない。椿先輩は私たちがまだ、ろくにチームプレーをできなかった時代を知っている人で、私の先々代の部長だったから当然後輩指導もよくしてくれた。実力のある人だから代表に呼ばれるのはおかしくないが、まさか私と早苗に鈴をつける役割も担っているのではなかろうか?


でも尊敬できる先輩と一緒に世界相手に戦えるのは良いものだ。今回のワールドカップのノルマは、来年のオリンピックが決まる2位以内だが、当然連覇を狙っていく。私はリベロかもしれないけど、前衛もできるように、明日から連携に取り組まないといけない。椿先輩と合わせるとすると高1以来だからほぼ7年ぶりになる。


私が部屋に入って来たことで中断されていた、ミーティングが再開される。初戦の対戦相手である対ドミニカのブリーフィングはもうほとんど終わりかけていたのだろう。私が入ってから10分少々で終わった。もちろん強敵ではあるが、勝てない相手ではないと思う。


「ちょっと吹雪ぃ」


ミーテイングが終わると、前の席に座っていた早苗が振り向いて話しかけてきた。早苗の隣に座っていた若い女の子も同じように振り返る。早苗とはつい3日前まで一緒にハワイに行っていたので椿先輩と違って特に挨拶するつもりは無かった。


ん、早苗の隣に座っている子に見覚えがある。高校在学中、私は3年のインターハイ以降はバタバタしていたので、秋からは大会開催時ぐらいしか接点が無かった。むしろ大学時代に母校に押しかけコーチに行った時に何度も顔を合わせている子だ。


「えっ、華菜かなちゃん? 華菜ちゃんも代表?」

「ご無沙汰してます、吹雪先輩。先日、この直前合宿でケガされた方がいたことの追加召集なので、あまり喜んでもいられないですけど」


そっそうか。今まで群星ぼこう出身の代表は私と早苗だけだったけど、今回は2コ上の先輩と2コ下の後輩が同時に代表に入ったのか。12人中4人が同じ高校出身っていうのも結構すごくない?


誕生日を迎えているかどうかわからないけど、椿先輩は今年で25歳になる。一般的にはバレー選手として脂がのりきった時期に入る。セッターという経験が重要なポジションということを考えると、まだまだ今後が期待される。私と早苗が今年で23歳。私の誕生日は来年2月なのでまだ22歳だけど。そして華菜ちゃんは今年で21歳か。先輩も華菜ちゃんも高卒ですぐにVリーグに入って試合で活躍しているから実績は十分のはずだ。

椿先輩は70話が初出。後輩の華菜は39話が初出ですが、39話掲載時の7/26にはいませんでした。8/22に追記しています。本当はこういうことはやっちゃいけないと思うのですが、他に入れるところがなくて。すいません。


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