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街道整備―3

「食事を持ってきたからキリの良いところで一度作業を中断すると良い」

「は、はい! この辺りのメンバーには伝えておきます!」


 一番近くにいた奴に話しかけると、大慌てで周りの奴らに伝えに行った。

 最近、俺のことを偉い人のような扱いをする奴が増えてきた。領主みたいなものだから偉いっちゃ偉いけれど、こんな辺境の、成り立ての領主の、出来立ての村なんだから気にする必要もないのだがな。


「領主ね……」


 偉い奴相手に引け目を感じるのは俺も同じだから、こればかりは仕方のないことか。


「ケーマ様?」

「いや。なんでもない」


 隷属が無ければ、ソフィア達もどうなることやら。

 今はまだ人が足りない。出ていかれると困るからこのまま甘えさせてもらおう。

 作業の最前線から少し手前。交代で休憩するために布が敷かれているスペースまで辿り着き、ここで食事を配ることにする。

 ストレージから石を取り出し組み立てる。その上に鍋を置いて簡易のかまどを作る。旅をしていた時の経験が役立つのって良いな。

 集まってきた奴らに女性陣が食事を配り始めたのを確認して俺は少し場を離れる。


 誰もいないことを確認して魔力を練る。

 最近分かったのだが、モンスター作成で作成したモンスターは、ある程度魔力を込めればこちらの簡単な命令なら聞いてくれる。

 ずっと作った瞬間に潰していたから気づかなかったが、スライム枕って気持ちよさそうだなんて考えながら寝落ちしてしまった時に分かった。起きた時には頭の下にノーマルスライムが潜り込んでいて、ひびってすぐに潰してしまったんだが。


 アイリーンからもらってずっとストレージに眠っていたゴブリンの核を取り出す。

 本当はもっと賢い魔物なら良かったが、ノーマルスライムとゴブリンしか作成できないので仕方ない。


 三体ゴブリンを召喚する。魔力を多めに込めたからか、俺の前に並んで命令を待つくらいの知能はあるようだ。


「命令は二つ。一つは、森の中を探索して、この箱に適当に物を入れてくれ。もう一つは、人を、特に女性を襲うな」


 街道が出来れば、ゴブリン程度が街道まで出て襲いに来ることはそうそう無いだろうが、自分が作ったゴブリンで人が死んだりするのは申し訳ない。

 それに、ゴブリンと言えば、人間の女性を襲うイメージがある。俺のイメージだけかもしれないが、俺が作成したゴブリンだから俺のイメージに従う可能性がある。


 命令を理解したのかコクコクと頷くので、行ってよしと告げる。

 言葉を話せるほどの知能は与えることができなかったようだ。


 別にあいつらに何かを期待しているわけでは無い。成果が得られればラッキーだし、得られないとすれば、得られない何かしらの理由があるということだ。

 魔物に殺されたのなら、注意が必要になる。人に殺されたのなら、侵入者がいるか村の奴らの戦闘訓練にでもなったわけだから、確認して侵入者なら探せば良い。


「自分で作って潰すよりは、存在意義があるだけ有意義な使い方だろう」


 レベルももうなかなか上がらない。できれば、ラポールの数を増やしたいが、それも必須ではないからな。

 そろそろ戻らないと、誰かが探しにきてしまうかもしれない。何もないのにこんなところまで来させるのは悪いから、さっさと戻るとしよう。


 戻るとすでにかなりの人数が食事を手にしていた。中央に用意されたテーブルでは、クロードとへレナートとソフィアが何やら話し合っているので、俺もその場にお邪魔することにする。


「順調みたいだね。でも、ちょっと無理しすぎじゃないか?」

「ご、ご主人様も来てたんですね」

「魔力回復のポーションを三本も飲んでたからね。少し無理はしているようだよ」


 俺の存在に気づいて慌てた素振りを見せたクロードに対し、その理由をヘレナートが隠すことなく伝えてくれる。


「へ、へレナートさん!? い、いえ。これは、魔力があるうちに進んじゃった方が良いと思いまして。どうせ魔力の回復に休憩をしないといけないなら、さっさと使い切って早めに休憩した方が効率が良いと」

「それで、魔力回復のポーションを三本も飲んだと」

「そ、それはちょっとやりすぎました」


 まあ、分からなくもない。

 どうせ魔力の回復に必要な時間はだいたいだが決まっているのだ。ちょっとずつ使いながら回復するよりも、一気に使って休んだ方が回復速度は良い。

 問題なのは、回復ポーションを飲んだということは、俺の魔力譲渡から抜け出してまで作業を進めようとしたってことだ。今の距離なら魔力譲渡はまだ届く。俺のレベルが上がったからか、適当に取ったスキルの何かがヒットしたのか知らないが、魔力譲渡の範囲は前よりも広くなっている。

 それをわざと使わなかったということは、俺に魔力を使っていることを悟られないようにしたってことだ。無理しているという自覚があってこその行為なのは言うまでもない。


 クロード一人が頑張るのは、俺としてはどうだっていい。周りを巻き込んでさえいなければ、自分の判断で無理をするのを止める気はないからな。


「お前が頑張るのは止めはしない。だから無理せず使えよ」

「は、はい。精一杯頑張ります!」


 魔力なら余ってるんだからな。ポーションなんて無駄に使うくらいなら俺の魔力を使ってくれた方がありがたい。まだ、金を稼ぐ方法が見つかっていないのは辛いな。


「貴方は食べていかないの?」

「肉体労働をしている奴らから飯を奪う気はないさ。食べれるだけ皆で食べてくれたら良い。余ったのを調理し直して食べるさ」


 今日は歩き回るのも少なかったし、頭もそれほど使っていないから、お腹は空いていない。食べようと思えば食べられるけれども、わざわざ皆ががっついている中で食べる気はない。


「もう少しお話したかったけど残念。まあ、それも貴方らしいわ」


 その場を後にし、ソフィアに余ったら連絡してくれと告げて村へと戻る。


 人がいない場所まで移動して転移で自室に移動すれば、置いていったアイリーンが俺の気配で起きて外を見る。


「結局、休んで無いじゃん」


 それは言うな。

 俺だって休みたかったのだが、気がついたらこんな時間になってたんだよ。

 少しでいいから寝よう。ソフィアが連絡してくるのも一時間程は後だろう。

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