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 整地が終わり、ようやく見通しの良くなった拠点近く。隣でへばっているクロードを労い、横に飲み物を置いておく。


 一ヶ月。五十メートル四方の整地を行うのにかかった時間だ。

 途中で雨により作業が中断されたり、クロードが疲労で体調を崩しかけたりもしたが、それでも想像していたよりも時間がかかった。


 それは、俺がこんな整地なんて作業をしたことが無かったから……いや、計画を立て人を動かすということの経験が無かったからだろう。

 クロードは俺の想定以上に頑張ってくれた。魔力の過剰消費による疲労にも負けず、徐々に魔法の精度を上げながら整地を続けてくれたからこそ、一ヶ月で済んだ。


 「やっぱり計画を立ててくれる奴を連れてきた方が良いか」


 「そんなこと無いと思うわ」


 歩きながらどうするか考えていたせいで、隣に来ていたへレナートに気がつかなかった。


 「あの子があれだけ頑張ったのも、貴方の為だからこそ。それに、あの子の心配をしながら、初めてにしては飴と鞭のバランスが取れた指示をしていたと思う」


 「そうだったら良いんだが」


 「あまり抱え込まないことね。時間はたっぷりあるのだから」


 反省は必要だが、何時迄もグダグダと考えていても仕方ないな。

 別に失敗したって良いんだからゆっくりと気長にやっていくしか無い。


 「ふふ。じゃあ、次は何をする?」


 「水を引いてこようと思う。川まで行くのも面倒だから、こっちの方に少しだけでも引っ張って来て、水を溜めておきたい。井戸でも良いんだけど、井戸を掘れるような人材がいないし」


 水の確保は早めにしたい。

 川は雨の時は土が混じったりと面倒だから、出来れば井戸が良いんだが、井戸なんてどう掘れば良いか分からない。

 それに、食料の確保のために農作もしないといけないから、水量的には川の方が良いだろう。


 「井戸ならイコア達が掘れるわよ。あいつらは一般兵上がりだから、拠点作りの訓練の一環で井戸の掘り方も教わっているはずだから」


 ここに来てあいつらの力が役に立つとは。フーレから連れて行きなよと言われた時は、戦闘面で役に立ってくれれば良いかと思っていたが、思いの外優秀な人材を付けてくれたようだ。


 「イコア、フェノ、ロコル。やってもらいたいことがあるんだが良いか?」


 早速三人を呼びだす。井戸を掘れるかどうかで計画が変わるから、確認は早くしておきたい。


 「なんだ? ようやく俺たちの出番か?」


 「落ち着け、フェノ。まずは内容を聞こう」


 よっぽど今までの作業に飽き飽きしていたのかフェノが飛びついてくる。

 クロードが整地するのを少しでも楽にするために木を切ったり、石を退けたり、固い部分をスコップで軽く掘ったりなんてしょうもない事ばかり頼んでいたから仕方ないか。


 「三人が井戸の作り方を知っていると聞いたが、この辺りで作れそうか?」


 三人が顔を見合わせて何やら確認する。

 少しの静寂が俺の不安を駆りたてていく。


 「この辺り……というかこの森全体的に魔力が少し濃いからはっきりとは分からないけど問題ないと思うよ」


 「ただ、時間はかかるし綺麗な水が出てくれるとも限らないぞ?」


 そのくらいは許容範囲だ。最悪、直接飲めなくても使い道はある。

 はっきり言って、水場の確保は必要だが、絶対に無いといけないわけではない。


 ソフィアの水魔法があれば、水には困らないだろう。

 だが、それでは俺かソフィアのように飲める水を出せて魔力枯渇に耐えられる人材が揃っていないといけない。


 一生ここを離れられないなんて嫌だし、ソフィアを縛り付けてしまうことにもなる。

 そうでなくとも、俺もソフィアも寿命があるんだ。技術の進歩が間に合わなかった場合、俺かソフィアが死ねばジ・エンドな場所に住みたくないだろう。

 他にも方法はあるからソフィアがいなくなったら終わりなんてことにはならないが。それに、一人に頼りきりという状況はあまり良くない。


 「時間はかかっても良いから井戸を頼む」


 「はいよ。俺たちに任せときな!」


 元気良く井戸を掘れそうな場所を探しにフェノが走っていく。

 苦笑いするイコアに使いそうなものを聞き、ストレージから取り出して渡す。荷物を持ってすぐに追いかけていくあたり、イコアも仕事を任せられて喜んでいるのだろうか。俺はわざわざ仕事をもらいにいくなんて嫌だけれどな。


 「私は何をしておこうかな?」


 「へレナートは状況を見ながらソフィア達の力が必要そうなら井戸の方を手伝うように指示してくれ。あと、切った木や狩った魔物なんかを、使えるものと売れるものと要らないものに分けておいて」


 木は建築なんかにも使いたいが、処理の仕方が分からない。しばらくは焚火に使ったり一時的な柵に使うくらいだから余るだろう。

 売れるなら売りたいが、どういったものなら売れるのかも分からないから、一番知識のありそうなへレナートに頼ろう。


 作業に取り掛かったへレナートと別れ、ソフィアとクロードのもとへと行く。

 相変わらずアイリーンは森の中をうろちょろしているようで姿は見えないが、そのおかげかこちらに魔物が襲ってくることも殆ど無いので助かってはいるが。

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