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再会

 ギルドを後にしようとアイリーンの手を引いたところでギルドの職員らしき人がこちらに走ってきた。


 「Cランク冒険者のケーマさんですか?」


 「そうですけど」


 また何かに巻き込まれるのかと身構えてしまう。

 王都なら俺以上の冒険者もいるだろう。それなのに、わざわざ俺に声をかけるだろうか。


 「ちょうど買取の履歴があったので来てみたのですが間に合って良かったです。受付の方にスタインさんが伝言に来ているのですが、会われますか?」


 そういえば、まだスタインと会ってなかったな。あいつ、ずっと店を留守にしていて大丈夫なんだろうか。

 俺のせいなんだが、スタイン自身もペネムに戻る気があまり無さそうだったのが気になる。


 「会うので連れてきてもらっていいですか?」


 「かしこまりました。少々お待ちください」


 どうせ少しは話をするだろうから、近くにあった椅子に座って待つ。

 アイリーンが全く話についてこれていなくて、戸惑ったように椅子に座る。


 「何か頼むか?」


 ギルド内にも喫茶店のような店があり、テーブルにメニューが置かれていたのでアイリーンに差し出す。

 もう、さっきのことはどうでも良いみたいでメニューを見始めたから、説明する必要もないかと俺も横からメニューを覗く。


 「これ頼んで良い?」


 メニューの後ろの方。デザートのページに大きく書かれたパフェの部分を指差す。

 パフェ一つで800コルか。高いけど、気になるし良いか。金なんて使ってなんぼだからな。破産しない程度になら贅沢は必要だ。


 「頼んでみるか。頼むのはスタインが来てから一緒にな」


 「うん」


 どことなく機嫌良さげに頷くアイリーンを見ていると、本気で恋愛感情ではなく保護者のような感情が芽生えて来る。


 ……まだ21歳だぞ。俺も若いはずなのに。


 「よう。王都に着いてたなら連絡して来いよ」


 「悪い。色々ありすぎて完全に忘れてたよ」


 案内されてやってきたスタインが空いていた向かい側の席へと着く。

 スタインにメニューを渡し、注文するものが決まったところで店員を呼んで注文する。


 「その子がガゼフから買った奴隷か?」


 パフェを待っているのかぼーっとしているアイリーンを怪訝そうに見る。


 この見た目からではアイリーンの強さは分からないだろうな。俺もスキルを見なきゃ買わなかっただろうし。


 「ガゼフから買ったのは間違いないが、最初に買ったのは違う奴だ」


 「ということは、伝言や噂では聞いてたが、本当だったんだな。スタンピードを一人で止めるなんてよくやるよ」


 「やりたくてやった訳じゃない。生き残りを一人でも増やすためにやったら、結局全員助かっただけだ」


 それでも自分の命をかけるなんて馬鹿だと言いたげに俺を見るので、そっと視線を外す。

 俺だって他に選択肢があったら、あんなこと二度としないさ。それにあの時は大切なものもやりたい事も無かったから、最悪死んでもいいと思ってただけだし。


 「そうは言っても、ただ噂を聞いただけの奴はそう思わないだろうけどな」


 それは仕方ない。話の捉え方なんて人それぞれだから、どれだけ尾ひれが付いているかも分からないからな。


 「それで、他の仲間はいないみたいだし。その子はお前の女みたいな感じ?」


 「ぶふっ!」


 飲んでいたジュースを吐き出しそうになった。どこをどう見てそうなった?

 アイリーンもデートとか言っていたけど、デートでギルドに来るような付き合いは俺は拒否する。


 それに、仲間の中ではアイリーンが一番年上だが、見た目と性格は一番幼い。

 多分アイリーン自身にそういう感情や知識も無いだろうから、手を出したら犯罪臭が半端なさそうだ。


 「アイリーンはそんなんじゃない。たまたま他の奴らに用事があったから二人で居ただけだ」


 「そう。これはただの暇つぶしのデート」


 おい。頼むから変なことは言わず、大人しくパフェでも食べていてくれ。

 デートっていうのをちゃんと否定しなかった俺も悪いが、そんな気もないのに意味もわからず使うのはやめなさい。


 そんな俺達を見て、スタインが堪えきれなかったと言ったように笑い出す。


 「いや、悪い。お前も大変だな」


 「主は凄いから仕方ない」


 「あはは。そうだな。女の数人くらいは出来たか?」


 「ちゃんと婚約者がいる」


 「おお! そうなのか!」


 これは良いことを聞いたとスタインがニヤッと笑う。

 二人で勝手に話を進めるな。あと、あんまり話し過ぎないでくれアイリーン。


 「主くらいの人間なら五人くらいは娶るべき」


 「俺はそんなに娶る気はない」


 エステルだけでも手一杯なのに。

 女の子の扱いとか分からないから、エステルやソフィアやアイリーンみたいな純粋なタイプではない、もっと手のかかるような奴だったら俺には無理だ。


 「エステルなら許してくれるよ?」


 そう言う問題じゃないんだよ。俺のキャパシティ的な?

 嫁が増えるよりも、今いる皆でゆっくり暮らしたい。使える奴はもっと欲しいけど、俺の周りにいる奴は今くらいでいい。


 「エステルって、神子の娘のエステリーナか?」


 「うん」


 「おいおい……いつの間にそんな大物を手に入れてるんだよ」


 大物って。

 そういえば、エステルには貴族からの縁談なんかも来てたんだっけ。そう考えれば、かなりの大物だな。

 忘れてたけど、ビクスも貴族の三男かなんかだったし。


 「手に入れたというよりは、向こうから押し付けられたような」


 口を滑らせて貰えるなら欲しいとか言ったけど、本当に欲しかったわけではなかったし。

 回復魔法を使える仲間がいれば良いなとは思ったけど。


 「ふーん。だからあいつは俺を……」


 ぶつくさと何かを呟くスタインの言葉は聞き取れないが、表情からして文句を言っているようだ。

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