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到着

 ゆったりとした時間。旅の途中でとるには豪勢な食事を口にする。

 あと二時間程で教会本部のあるフリージアへと着く場所で、少し時間的には早いが昼飯を食べていた。

 昼飯を食べ終えて少し休憩してから出ても、この時間からなら宿屋を探したり街を少し見回るくらいの時間は取れるだろう。


 一週間も経てば少し慣れてきた左手での食事。箸を使っての食事とは違い、フォークだとそこまで難しくはないので助かった。作法も無いもない食事ということもあるが。

 最後の一口を食べ終えれば、ソフィアが食器を片付けてくれる。慣れてきたとは言え、左手での食事はぎこちない。そのせいもあって、普段は食べ終えるのはアイリーンか俺が最初という感じだったが、今は俺が一番遅い。


 クロードは魔力を扱う練習を。アイリーンは暇そうに剣の手入れを。ソフィアは楽しそうに俺の横で何か手伝うことがないかと待機している。

 クロードが満足したら出発するか。別に早く着いてもすることはないしな。教会への依頼の報告は明日にでもすればいいから、今日は宿屋を探すこと以外はフリージアについても本当にやることがない。


 クロードのステータスを確認してみると、新しいスキルを会得しかけているのかスキル欄に空白がある。前に見たときには無かったので、努力の成果と言ったところだろうか。

 クロードもだが、ソフィアやアイリーンも成長している。レベルが迷宮都市を出た時よりも10以上伸びているので、かなりの進歩だ。


 そう言えば、全然ステータスとか見てなかったな。転移のためにステータスポイントを貯めてたのもあって見る必要が無かったってのもあるが、骨を折ってからは完全に忘れていたな。


 ステータスを見る分には操作なんてイメージするだけでいいので困ることはない。さっそくステータスを開けばとんでもない数字が目に入ってくる。


 「ステータスポイントが35もある!?」


 前に見たときは17だった。前に見たときは迷宮都市を出る前だったので、そこから18もステータスポイントを手に入れたことになるがレベルは12しか上がっていない。考えられるとすれば、1レベルにつき1のステータスポイントだと考えていたことが間違っていたということか。今まで1ずつ増えていたのでずっと1で固定なのだと思っていたが、レベル71から3になったと考えれば、ちょうど計算が合う。


 どちらにしろ、これで空間魔法のレベルを上げることができる。ゴクリと唾を飲み込み、空間魔法を選択してレベルを上げる。


 "空間魔法レベル4 使用可能スキル、転移"


 「きた! ようやく来た!」


 ソフィアやアイリーン、そして集中していたクロードまで俺の声に驚いてこちらを見てくる。

 特にクロードには悪いと思うが、今はそれどころじゃない。ステータス画面から目を逸らすこともできずに、ただただテンションが舞い上がっている。


 「空間魔法のレベルが上がって、ついに転移の魔法を使えるようになった」


 喜びで上ずりそうな声を抑えて言えば、驚きそして喜びへと表情が変わる。

 長かった。転移目的で空間魔法を選択し、転移は使えなかったがストレージの便利さに選択して良かったと思い、空間魔法とモンスター作成を選択したせいで他の魔法が使えないと知り絶望し、MP自動回復と魔力譲渡のスキルのおかげで自分が魔法を使えなくとも仲間に頼ればいいと妥協できた。


 だが、色々あったとしても、転移が使えるようになればとずっと思ってきただけあって、本当に嬉しい。


 「フリージアで転移の詠唱が載っている本を探さないといけませんね」


 え……。詠唱?

 そう言えば、ソフィアも新しい魔法を覚えるときは必死に詠唱を覚えていた。詠唱が無くとも魔法を使う方法はあるらしいが、それも簡単なことでない。


 スキル一覧を慌てて確認すれば、無詠唱というスキルも存在したが、獲得するにはステータスポイントが60も必要と桁外れすぎる。

 60も消費するなら詠唱を覚えた方がいい。残り15しかステータスポイントが無いから、この後ずっとレベルアップのたびに3ずつステータスポイントを手に入れれたとしても15レベル上げる必要がある。

 流石に、それだけのレベルを上げている時間があれば詠唱を覚える方が早いだろう。盗賊との死闘があってやっと迷宮都市からここまでで12レベル上がったのだ。ここからの15レベルにはさらに経験値がいるのが普通だろうから、あんか危険を冒さずにレベル上げをすれば相当時間がかかるだろう。


 15レベルも上げようとしたら、普通の狩りとスライム潰しだけでは、どれだけ早くても一か月以上はかかる。それだけの時間があれば、詠唱の一つくらいは覚えられるだろう。転移魔方陣の発動の仕方からして、転移も詠唱無しで発動しても一瞬で発動する訳ではないと思う。戦闘中に使えないとするなら、詠唱の有無はそこまで大きな差にはならない。喉を潰されでもしたら影響はあるが、そんな状況にはならないと信じたい。


 「じゃあ、フリージアまであとちょっと頑張るか」


 クロードの集中も俺のせいで切れてしまったので、さっさと向かうことにしよう。

 フリージアくらいの大きな都市なら治癒魔法の使える治療師もいるかもしれない。途中で寄った村にはいなかったので、添え木や包帯なんかをしっかりとし直して貰っただけで終わったから、ちゃんと診てもらいたい。後遺症とか残ったら面倒だからな。


 アイリーン先導のもと、俺の横にソフィア、殿みたいな形で後ろにクロードと並んで歩く。魔物が現れても俺が戦わないで済むようにとのことでこの配置になってはいるが、そこまでしてもらわなくても、弱い魔物くらいなら右手が使えなくともなんとかできるのだが。

 まあ、俺のためにしてくれているのだから有難く受け取っておこう。三人ともそれ程負担になっている様子はない。というか、何かできるというのが嬉しいのか普段よりも生き生きとしていると言ってもいいくらいだし。


 結局、三人の迅速な対応により、戦闘どころか構えることすらしないまま、フリージアへと辿り着いた。大きな街だけあって、街に入るのにも手続きが必要なようだ。外部冒険者用の列に並んで順番を待つ。列と言っても数人しかいないのですぐに順番はやってきそうだが。前の人の様子を見ていれば、ギルドカードを準備しているので俺も取り出して待つ。


 順番はすぐにやってきて門番に呼ばれる。簡易の机と椅子があるが、手続き自体はそれ程時間がかからないみたいなので座らなくていいと言われる。


 「門番のハルトだ。ギルドカードを少し預からしてもらう」


 ギルドカードを渡せば、カードを何かの機械のような物に入れた。あれで情報が見れるのだろうか。


 「残りの三人は奴隷か?」


 「ええ。そうです」


 アイリーンとクロードは仮契約の首輪を見せ、ソフィアはガゼフから聞いていた本契約の刻印を一時的に浮かび上がらせる呪文を唱える。それを見て、門番は機械を操作する。


 「今日は何の用でフリージアに来たんだ?」


 「依頼です。運搬依頼でフリージアに届けに来ました」


 「依頼書はあるか?」


 革袋から依頼書を取り出す振りをして依頼書を渡す。依頼書を見た門番は驚いた表情を見せるが、仕事だからかすぐに元に表情を元に戻して咳払いを一つする。


 「確認できたから通っていい。ギルドカードの返却と、この通行証を渡しておく。通行証は一週間の期限があるが、期限内であれば内部冒険者扱いになる。教会もしくはギルドで申請すれば期限の延長も行えるから、長期滞在になりそうなら延長するといい」


 なかなか便利なものがあるものだ。これくらいの列なら毎回並んでもいいが、いつもこの程度の列とは限らないから延長しておこうかな。


 「では、通っていいぞ。ようこそフリージアへ」

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