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次の依頼

 迷宮を出て、アイテムの買取をしてもらうためにギルドへとやってきた。アイテムを査定してもらっている間に、依頼の貼られた掲示板を眺めているとドゥーンがやってくる。


 「そいつが新しい仲間か?」


 「そうだ。もう一人はソフィアと一緒に受付嬢に連れてかれたが」


 隣にいるクロードがドゥーンを見てびびっている。見た目は厳つい冒険者って感じだからな。実力でここのギルドマスターに選ばれたのだから仕方ない。


 「また個性的な奴を仲間にしたんだな。お前も、ソフィアも新しい二人も、全員冒険者らしくない」


 俺達の中ではアイリーンが一番冒険者らしいくらいだしな。アイリーンの場合、冒険者というよりは戦うのが好きといった感じのようだが。

 ソフィアとクロードは俺の為に頑張ろうとしている感じだからな。自分が好きで冒険者をやっているのではない。


 「俺に必要な力を持った奴を仲間にしただけだ」


 「お前くらいの実力とセンスがあれば、それでいい。馴れ合いで仲間を増やすのだけは止めておけ」


 ドゥーンやフーレは俺を過大評価し過ぎだ。その過大評価のまま、他人に俺のことを話すから、どんどん尾ひれがついていって噂が最近凄いことになってる。

 俺も迷宮前の広場で目立つことをしたし、転移陣に二人で行くなんていうこともやらかしているから、ドゥーンやフーレのせいと言い切れないところもあるのだが。


 「それで、何の用だ?」


 わざわざここまで来て声をかけるなんて、新しい仲間を見に来ただけなはずがない。

 やっぱり、ちゃんと理由があったらしく、一枚の紙を渡してくる。


 「指名依頼だ。物が物だけに断ることもできるが、お前なら大丈夫だろう」


 「指名依頼ね……」


 護衛系はしばらくはこりごりだから止めてくれよ。

 渡された紙に目を通して、護衛どころじゃない面倒な依頼であることに気づく。

 ジトッとドゥーンを見れば、苦笑いで返された。


 特定アイテムの運搬。


 依頼としてはかなり簡単なものだろう。荷物を運ぶだけでいいのだ。俺にはストレージもあるから期日までに目的地に到着さえすれば良いということになる。


 だが、それも普通の荷物で、普通の依頼人の場合だ。


 今回の運搬対象は、礼装。これはまだいい。

 問題は依頼主だ。見間違いであることを願ってもう一度見るが、そこに書かれた名前は変わらない。


 フリージア教総本部


 この国で最も力のある教会だ。完全に一強と言っていいほど、他の教会や宗教とは一線を画している。


 教会が俺を指名?

 スタンピードにより有名になったとはいえ、目をつけられる程でもないだろう。

 貴族とか宗教とかとはできるだけ関わりたくないんだよな。何に巻き込まれるか分からないし、目をつけられたら相当に面倒だから、断ったりもしにくいし。


 ……ああ、行きたくない。


 「そんなに嫌そうな顔するな。断るなら断ってもいいんだぞ」


 「教会からの依頼を断れる勇気は持ち合わせていない」


 「そんなに気にすることはないだろうに。今話題のスタンピードの英雄にちょっかいを出せば、教会側にもそれなりのダメージがあるだろう」


 そこまでの影響力は持ち合わせてない……と信じている。


 「おい。今話題のって何だ?そんなに話題になるほどではないだろ」


 スタンピードを止めたとは言え、相手は進化したてのオークロードだぞ。戦闘中に進化した成り立てのオークロードならば、止めれる奴もこの国にそこそこいる。


 「スタンピードってのは、時間が経つほどに規模がでかくなる。街に到達する前に止めることができた例なんて数えるほどしかないんだよ」


 たまたま出くわしただけなんだがな。俺としては平和に迷宮都市まで辿り着きたかった。


 「それに進化したてなんて、その場にいた奴にしか分からねえ。残っているのはオークロードと無数のオークを一人で倒したという事実だけなんだよ」


 俺の持つ上位鑑定。これくらいの精度で敵の情報を知ることができなければ、進化したてなんて分からない。確かにそうだが、オークロード自体、この国の中でも倒せる奴は少なからずいるはずだ。


 「倒せる奴は確かにいる。だが、一人で、相手の土俵で、武器もなく、援護が来るかも分からない状況で勝てる奴は一握りだ。それこそ、国でかなり有名な実力者に限られる。それに並ぶ無名の新人が現れたら話題にもなるだろう」


 否定はできない。だが、噂が誇張されているせいで、どんどん話題になっているのが辛い。国王とか教会とか、本当なら一生会いたくないようなレベルの奴らに合わないといけないとか。


 「どうせ噂もしばらくすれば収まるだろう。今は我慢しておくさ」


 人の噂も七十五日。この世界がどうかは知らないが、ネットのようなものも無いこの世界なら次第に薄れていくはずだ。


 「そうはならんと思うが……依頼を受けるなら詳細を説明するがどうする?」


 「受けてやるよ。どうせ逃げても、どっかで捕まりそうだし」


 本気で国や教会が根回ししてきたら逃げ切るなんてできないし、それなら相手が和かな時にさっさと会ってしまった方が賢明だ。


 それに、迷宮に潜れるようになったとは言え、あんまり迷宮は好きじゃ無い。俺はもっと色々見たいし、楽に生きたい。迷宮で閉じこもって、攻略を進めていくのは性に合わないんだ。何度も何度も同じようなことを続け、いつもいつも命の危険にさらされるなんてな。迷宮だとどれだけ準備を整えても、狭い空間で大量の魔物に涌かれれば辛いことに変わりない。

 できれば、戦闘もしないで、しんどい仕事もしたくない。



 「よし。じゃあ、説明してやるから部屋に来い。地図でも見ながらじゃないと場所が分かりにくいだろうからな」


 受付嬢に捕まっているソフィアとアイリーンに行ってくるとジェスチャーで伝え、ドゥーンの後に着いて行く。

 さて、次は何処に行くのだろう。出来れば王都にも行かないといけないから、その方向に向かえればいいんだが。

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