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報酬

 ギルドに到着するまで続いたソフィアのチラ見攻撃も、ギルドに到着した瞬間、受付の女性にソフィアが捕まって終了となった。

 暇そうにしていた受付たちが集まり、ソフィアを囲んで話を始める。困惑した表情を浮かべるソフィアだが、嫌というわけでは無さそうなので放っておくことにする。昼間のギルドは依頼を受けに来る人も報告しに来る人も少ないから、少しくらい話に花が咲いても問題ないだろう。


 「ギルドマスターの所に行ってくるから、ゆっくり話してて」


 「えっ……」


 ソフィアに伝えるだけ伝えてギルドマスターの部屋に向かう。頑張れソフィア。

 少し寂しそうにこちらを見てくるが、受付の人達と話すことも嫌ではないので話しかけられるとそれに答えだす。


 ギルドの奥にある階段で三階まで上がり、廊下の奥にある部屋に、一応ノックしてから入る。


 「来たぞ」


 机に突っ伏している男に声をかける。どうせ、書類仕事を終えて力尽きていたのだろう。力仕事は得意でも事務仕事は苦手なタイプの人間だからな。


 「おお、ケーマか。早かったな」


 「ちゃんと約束の時間通りに来たけどな」


 「お、おお。そうか」


 ゴホンと分かりやすく咳き込んで話を逸らすギルドマスター。仕事はしているようだから俺としては文句はないが、お偉いさんに見られないように気をつけろよ。



 「で、何の用だ?」


 「ああ、今日来てもらったのは、この前のスタンピードの報酬についての話だ」


 そう言えば、特別報酬が出るとか言ってたな。オークロードの素材の分もあるから結構な額になってるみたいだ。


 そのせいで、怪我の療養をしていた一ヶ月弱が経っても金が入らずに困っていたんだけどな。


 ここのギルドマスターは、迷宮都市という冒険者が溢れる場所であり、また魔物の危険と隣り合わせである場所、そんな街のギルドマスターだけあって実力はかなりのものだ。

 スタンピードの時に、俺の元まで助けに来たのもこのドゥーンとかいうギルドマスターだったらしい。


 俺はその時には意識が無かったから、聞いた話なんだがな。


 「とりあえずこれが明細だ」


 渡された書類を受け取って目を通す。


 ……何かの間違いではないだろうか。



 困惑の視線をドゥーンに送る。やれやれと飽きれたような表情でドゥーンが溜め息を溢す。


 「だから言っただろう。手続きに時間がかかると」


 いや、そんなこと言われても。


 スタンピードへの助力 一万コル

 オークロードの討伐 五十万コル

 オークロードの素材 二十万コル

 スタンピードの沈静 百万コル

 追加報酬 五十万コル、及び、Cランクへの昇格

 特別報酬 王より進呈(辞退可能、期限二ヶ月以内)


 驚くなという方が無理だろ!

 護衛依頼の五万コルですら良い収入だなとか思ってたんだぞ!


 なんだよ221万コルの報酬ってさ……。スタインに任せた魔石の売却額とかどうでも良くなってきた。


 「今回はかなり特別だがな。スタンピードの予測が全く出来ていなかったこと、進化したてとはいえオークロードという高ランクの魔物の存在、街及び周辺への被害の少なさ。この三点が大きく報酬の上乗せに働いたようだ」


 たまたま出くわしただけ。

 そのせいで、あんな死にかけた極限の戦いをする破目には遭ったんだが。


 まあ、死にかけたことを考えれば、これだけの報酬が無ければ割に合わないのかもしれないな。


 考えても仕方ない。くれるというのならば貰えばいいんだ。

 それだけの働きはしたんだから。


 「先に金は渡しておく。ギルドランクの更新があるから、カードは少し預からせてもらうぞ」


 「ああ。それと、特別報酬ってなんだ?」


 説明するからと、新しい書類を取り出して俺に渡してきた。


 「その書類を王都のギルドで見せれば、国王との謁見を取り次いでくれる。一応、期限は二ヶ月だが、少しくらいなら遅れてもいいそうだ。それと、どうしても行きたく無いなら来なくても良いとさ」


 行かなくても良いって言われても、国王の呼び出しを無視する勇気なんて持ち合わせて無いんだけど。


 「あと、俺からの報酬だ」


 投げ渡されたのは一枚のカード。

 迷宮転移陣使用許可証?転移陣?そんなのあるのか。


 「ここの迷宮は上層、中層、下層に分かれていて、上層は弱い魔物しかいない初心者向け。中層、下層はどんどん敵が強くなっていくから、中層と下層に直接行き来できる転移陣は許可制にしているんだ」


 だから、新人と上級者は迷宮都市に集まるのか。迷宮という環境上、上級者は迷宮に籠っていることが多いらしいが。


 「転移陣は20層と50層にしかないから、迷宮に行くときはしっかり計画してから行けよ」


 「分かってるよ。無謀な事をして死ぬなんてごめんだ」


 「お前がそれを言うか」


 「あの時はあの時だ。誰かの為に死ぬのと、何も無しに死ぬのでは全然違うんだよ」


 ドゥーンが差し出してくるランクの上がったギルドカードを受け取り部屋を出る。


 迷宮か。ちょっとは潜ってみたいと思うが、ソフィアと二人では中層に行くのは不安だな。安全マージンはしっかりと取っていきたい。

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