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異世界

 暗闇から一転、光が目に刺さる。

 眩しさで一瞬目がくらむが、すぐに慣れてきて周りの景色が目に入ってくる。


「森か……ありきたりだな」


 見渡す限りの森。前後左右どの方向を見ても木があるだけで、進むべき方向も分からない。物語の始まりとしてはよくあるパターンと言っても過言ではないだろう。

 どうすれば良いのかもわからないから、とりあえず、自分のことを知るためにも能力の確認から始めるか。


「まずは自分を、鑑定」


 ノーネーム

 人族

 レベル1

 ……etc


 突如、ウィンドウが現れたかのように視界に文字として情報が見える。情報が多すぎて読む気になれない程視界が埋め尽くされた。発動自体は簡単で良かった。訓練しないと使えないようだったら、何も始まらずに詰んでしまいかねない。

 名前は新しい世界に来たから変えろってことなのかな?この世界って姓名のシステムがどうなってるんだろう?下手に姓まで付けて、貴族とかの有力者しか姓を持たない世界だったらあれだし。名前自体も和名か洋風にするか迷う。

 名前は誰かに会ってから考えるか。

 とりあえず、鑑定の情報がごちゃごちゃしてるな。もっとすっきりしないものか?


 ノーネーム 人族 レベル1


 ウィンドウがスリムになる。省略された詳しい情報は、そこに注目して知りたいと思うと必要な情報が出てくるように変更された。これなら使える。便利すぎて本当にとって良かったと思えるスキルだ。

 後は慣れだな。この視界にも慣れないといけないし、すぐに鑑定できるように使い慣れておかないといけない。手始めに周りの木も見てみるか。


 アケイアの木 植物


 うん。植物とか人族とかも最初はいらないや。代わりに簡単な情報を載せるように変更しよう。


 アケイアの木

 一般的な木材として扱われている。実は食べることができる。


 ほうほう。良い感じだ。とりあえず、食べれる木の実ならば取っておこう。

 足元に落ちていた枝で、生っている木の実をちょんちょんして落とす。四個手に入れることができたので、これで最悪一日はなんとかなる。


 そういえば空間魔法って何が使えるんだろう?

 鑑定で表示されているスキル欄から空間魔法を注視する。


 空間魔法レベル1

 使用可能魔法 異空間収納


 おお!転移目的で浪漫として取ってみたけど超当たりじゃん!空間魔法取って良かった!物持ち運びながらの戦闘なんて大変だもんな。


 ただ、使い方がわからない。

 あれか?開けって念じればいいのか?


 念じた瞬間、視界にゲームのストレージの様なものが表示される。中に一枚の手紙と初心者応援セットと書かれた謎の箱が入っていたので、先に手紙を取り出す。

 なになに?鑑定も異空間収納も鑑定と組み合わせてネトゲ風にしてみました。変更は可能なので使いやすいようにレイアウト等の変更をしてください。か、さすがわかってるな。これならこの世界での生活も楽しめそうだ。

 変に拘った神様の作った世界だと馴染むのが大変そうだもんな。その点この世界の神様はユーザーに合わせた対応をしてくれている。……ネトゲの神運営みたいな神様だな。


 とりあえず、ストレージに木の実を入れるか。木の実をストレージに入れようとイメージすると勝手に入った。うんうん。使い勝手がいいな。


 ストレージに入っていた初心者応援セットを取り出す。

 ネトゲだとこういうのは残しておきたい派だが、命がかかったリアルでなら使うしかないよな。勿体ない精神で残しておいて死にましたじゃ話にならない。


 使うと表示されたところを選択すると、ポンっと音を立てて中身が出てくる。


 ・旅人の服

 ・鉄の剣

 ・簡易HPポーション×10

 ・簡易MPポーション×10

 ・ファルネシアの説明書

 ・金貨2枚


 本当に中身はネトゲでよくある初心者応援セットじゃん。

 いや、有難いんだけどね。とりあえず、服を着替えてと。剣を腰にセットして。

 これで俺も冒険者の仲間入りだな。服が入っていたのはナイスだ。寝巻のジャージで町にでも行ったら浮きまくるのは目に見えている。


 よし、説明書を読むか!


 命がかかってるからな。普段は説明書とか読まずにゲームを始めるけど、今回はしっかり読まないと怖い。





 ──とりあえずここまででいいか。

 説明書を半分程度読み終えてお金とともに一度仕舞う。

 最後まで読んだ方がいいかもしれないが、これ以上読むと日が暮れるまでに町へ着かない可能性がある。

 説明書に書かれていた内容で、重要なのは三つ。


 ・通貨の単位はコル。銅貨が一枚1コルで、大銅貨が10コル。同じように銀貨、大銀貨、金貨、大金貨、白金貨と一桁ずつの貨幣がある。

 ・一日は24時間。一週間は6日、一ヶ月は30日。一年は12ヶ月と神の週と呼ばれる週が4年に一度6日ありそれ以外の年は5日と、完全に閏年までありました。

 ・今いるのは王国南部にある魔の森。ここから今向いている方向(東らしい)に2時間程で一番近くの町であるペネムに到着する。


 というわけで、早く森を抜けてペネムに行かなければいけない。

 鑑定モードにすると現在時刻も分かるようで、今の時間は午後4時。急げば日が沈む前に宿を見つけられるはずだ。

 しかも、魔の森を抜けるまでは魔物と遭遇しないようにしてくれているらしいので、周りを気にすることなく走ることができる。



「ぜえぜえ……疲れた」


 走り続けて20分。さすがに疲れてきたので休憩がてら歩く。

 鑑定で自分のステータスを確認するが、疲れではHPは減らないようだ。代わりにMPが減っているのに気づいた。

 鑑定にもMPがいるのか。さっきはテンションが上がってたから細かい所に気がつかなかったけど、鑑定でもMPが1使われるようだ。


 「あれ? 回復した」


 1減って9になっていたMPが10に戻った。これがMP自動回復の効果か。鑑定にもMPを使用するのであれば取っておいて良かったな。

 あと、何度も鑑定を使ってわかったことがある。

 鑑定にはMPを1消費するが、同じ物を連続で鑑定する時はMPの消費が無い。

 例えば、自分を鑑定してからアケイアの木を鑑定すると、自分の分とアケイアの木の分でMPが2減る。だが、アケイアの木を鑑定して、別のアケイアの木を鑑定しても魔力の消耗は一回目のアケイアの木を鑑定した時にしか減らなかった。詳細に書かれている樹齢や状態などは、しっかりと一回目のアケイアも二回目のアケイアも違ったのにだ。

 これが人から人や、同じ種族の魔物を連続で、とかでも減らないのであれば、今のMPが少ない間は助かる。それに、この現象が鑑定以外のスキルでも同じことが起こるのならば使い道があるかもしれない。


 歩きながら鑑定を使い続けたおかげで、一分間にMPが4回復することが判った。

 俺の最大MPが10だから、2分半でMPが全回復すると言うなんとも無駄な回復力を手にしたわけだ。早く魔法を覚えたいものだな。

 最後に、ストレージからアイテムを出し入れするのもMPが1ずつ使われるのが判ったが、結局消費してもすぐ回復するせいで消費している気がしない。


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