準備
ソフィアを連れてギルドの近くにある道具屋にやってきた。冒険者がよく入っているから、ここでなら必要なものはだいたい揃うだろう。道具屋の中にはいつも通り冒険者がちらほらといるが、冒険者の知り合いもいないため無視して買い物を始める。広い店なだけあって品揃えは悪くない。俺が入ったことのある店の中では一番商品の種類が多い。
商品の数が多いだけに乱雑に置かれた店内では何を買うべきか分からない。一通り見るだけでも時間がかかりそうなので、とりあえずソフィアに聞いてみるか。
「何が必要かな?ストレージがあるから荷物が増えても困らないから必要な物があればどんどん言ってくれ」
「絶対に必要な物ならば、ポーション類や携帯食料に水を入れておく容器といったところでしょうか」
回復魔法は使えないから、傷を治すためのポーションや薬草なんかはあった方がいい。水は絶対に必要だが、そういえばソフィアがこの前水属性魔法も使えるようになったと言っていたっけ。
「水はもう魔法で出せるようになったんだっけ?」
「はい。飲み水なら魔法で出せるので容器さえ買って置いてくだされば大丈夫です。魔力量的にケーマ様から魔力を頂かなければコップ一杯程度の水しか出せませんが」
ソフィアのレベルも12になりMPも最初と比べるとかなり上がった。とはいえ、もともとMPが少ない体質なのか、MPをかなり使っているはずなのにレベル12まで上がってもMPは20しかない。それでも、最大MPが増えることにより、魔法の使える種類や威力が上がったから無駄ではない。魔法は使う方法にもよるが、通常の発動方法では魔力を一度に使用する必要があるため、魔力譲渡では消費してからしか渡せないせいで必要魔力量の多い魔法は使えないから、ソフィア自身が成長してもらう必要がある。
買うアイテムを探しながらソフィアの成長について考えていれば、ソフィアが必要な物を見つけて持ってきてくれた。考えるのは後にしよう。どうせ考える時間はいっぱいあるんだ。やらないといけないことから終わらせよう。
ソフィアが持ってきてくれたアイテムを買い道具屋を後にする。
次に何を買うか。水と回復アイテムは買ったから、次は食料か寝る時に必要な物だな。10日間も土の上で寝る野宿と携帯食料じゃ辛すぎる。食料は道中で狩った魔物を食べるのもありだが、火で焼くだけでは味気ない。
ここはストレージの出番だな。
今度は冒険者向けの道具屋ではなく、家庭向けの道具屋へと向かう。ストレージで荷物が大量に持てるおかげでできること、そう、調理道具と食材を持っていくことだ。
「ソフィアって料理できるんだよな?」
「凝った料理はできませんが、家庭料理くらいはできます」
家庭料理で十分だ。俺なんて焼くくらいしかできないうえに、こっちの肉なんてどれくらい火を通せばいいのかもわからないから焼くのですら失敗するかもしれない。
「じゃあ、使いやすそうな鍋とか選んできて。時間のあるときくらいまともな食事が食べたいから外で料理が出来そうなやつね」
「は、はい。選んできます」
俺は毛布でも選んでくるか。
護衛の準備の買い物でお金が全部飛びそうだな……
今回の依頼を達成すれば収支は余裕でプラスだから仕方ないか。それに、調理道具や毛布なんかは今回の旅が終わっても、また使う機会はたくさんある。食料や回復アイテムだって余れば置いておけるものは置いておけばいいだけだから使ったかなの全てが消費されるわけではない。今多少多めに買って手持ちの金が無くなろうとも、後々買う物が減るなら買っておいていいだろう。
「ケーマ様。この二つの鍋をお願いします」
「ああ。料理は頼むよ」
浅めの鍋と深めの鍋を一つずつ。二人分の料理を作るには鍋のサイズが大きいんじゃないかと思ったが、外で料理するなら細かく切ることもできないかもしれないから大きいまま放り込めるように少し大きめの方がいいか。
ソフィアから受け取った鍋と俺が選んだ毛布、並んでいる調味料の中から使えそうな調味料をいくつか持って会計してもらう。
「1800コルだ。……ちょうどだね。確かに受け取ったよ」
商品を受け取って店をでる。買った商品をストレージに入れるが、ストレージはまだまだ余裕がある。
どれくらいの荷物がストレージに入るのだろうか。余裕ができたら試してみないといけないな。
「他にいるものは何かあるか?」
「そうですね……ケーマ様の着替えも必要だと思います」
そういや、俺は最初に持っていた旅人の服と同じような物を買って着まわしていたな。旅の途中で洗濯はできない可能性も高いし、ストレージに入れておけるなら着替えも必要だな。
「ソフィアの分の服も買っておこう。他は何かあるか?」
「そうですね……――」
一つ買ってはまた聞いてとソフィアに聞きまくり、とりあえず金の足りる限り買い物を続けた。ストレージに表示されている金額が出発するまでに必要なお金を除き、20を切ったあたりでソフィアも必要な物が思い浮かばなくなったので、買い物を終え宿屋へと戻ることにした。




