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決めるのは

 外では子供達が元気に遊んでいる。村の開発は年が明けてからまだ始めていないので、ちょっとした仕事はあれども子供達が手伝わないといけないほどの仕事はない。

 寒いというのに外で遊ぶなんてよくやるよなと思いながら見ていると、水の球が飛んでいき土の壁にぶつかった。勢いはそれほど無かったようで土の壁によって奥にいた子供には当たらなかったが、この寒い中で水に濡れてびしょびしょになったら風邪を引くだろう。

 ローブを羽織り屋敷の外へと出る。息が白くなるくらい寒いのに、本当によくやるよ。


「お前達。遊ぶのはいいが、魔法を人に向けるな。まだまだ魔力コントロールも甘いからミスった時に大怪我をするぞ」


 はーい。と返事をして今度は追いかけっこを始める。魔法を教えるのは早かったか?まあ、ソフィア達に憧れを持っているようだから、下手に調子に乗って馬鹿なことはしないだろう。

 寒いからさっさと屋敷に戻ろう。外にいたってろくなことはない。少し早足で屋敷に戻ると、屋敷の前にルセフィが立っていた。


「どうした?」

「領主様。いえ、リーシア様とお茶をしながら話をする約束をしたので来たところです」


 リーシアとね。あいつ、いつまでこの村にいるつもりなのだろうか。もう来てから四日も経っているのに帰る気配が無い。

 外で立ち話もなんなので、中へと入るように言って、俺も中に入る。


「マリゼは役に立っているようですね」

「そうだな。マリゼのおかげで日が暮れてからの作業もできるようになったし、皆が風呂に入れるようになった」


 マリゼの魔力回路の知識、リーシアの作った魔石、そして俺の魔力。上手く噛み合ったなとしみじみ思う。

 魔力なんて、転移が使いたいのと、魔法での戦闘の方が良いと思ったから取っただけなのに、思いもよらないところで役に立って良かった。


「私も役に立てるように頑張りますね」

「無理はしないようにな。今でも十分に役に立っているから」


 実際、銭湯ができるまでは教会に入り浸る人も少なからずいた。

 今でも、毎日のようにお祈りに行っている人もいる。それに、村の環境を保つために浄化の魔法を使ってくれていたりもするから、むしろオーバーワーク気味だろう。

 エステルも手伝いに行っているから休息は取れているだろうが、もう一人か二人くらいはリーシアに頼んでも良いかもしれない。


「私なら大丈夫です。お祈りをしている間は心が癒されますし、浄化を使っても魔力には余裕があるので」


 優秀だな。エステルに聞いたが、浄化をこの村全域に使うと、エステルでも六割くらいの魔力が必要だと言っていた。

 俺みたいに馬鹿みたいな回復力を持っていなければ、魔力の回復は安静にしていない限り殆どない。どうしても体を動かしたりするのに消費するようだ。

 だから、余裕があるということはコントロールがかなり上手くて魔力の消費を抑えることができるか、エステル以上に魔力量が多いということだ。


「お待たせ。中に連れてきてくれてありがとう」

「ちょうど俺も中に入るところだったから」

「私も殆ど待っていないので大丈夫です」


 リーシアが来たので、俺はその場を離れ自分の部屋へと戻る。

 ベッドに倒れこんで天井を見上げる。今日も何もしていないはずなのに疲れた。むしろ、先月のように仕事をしているときの方が楽だったかもしれない。


「やっぱり、周りに気を使うのは疲れるな」


 リーシアがいるのもあって、いつも以上に周りが気になる。

 仕事をしている時のように、目の前のことをこなすために集中している方が、幾分と精神的には良い。

 体を動かすことも殆どないから肉体的な疲労がないこともダメなんだろうな。


 なんか考えていることがおっさんみたいだ。まだ22歳だっていうのに、こんな調子ではいけないな。

 溜め息を吐いたところで、部屋のドアがノックされた。また、何か面倒なことでもやって来たのだろうか。


「失礼します。フーレドリヒ様が遊びに来たと言って屋敷の前にいますが、どう致しましょうか?」


 本当に面倒なことがやってきやがった。

 遊びに来たって何だよ。そんなにお前と仲良くなった気はこっちには無いのだが。一緒に遊ぶのではなく、俺を揺さぶって遊ぶということだろうか。面倒なことこの上ない。

 だが、ここまで来てしまった以上。今更帰れなんて言うことはできないし、とりあえず話だけでもするために、中に入ってもらうしかないか。

 クロードに呼んできてもらうと、フーレが一人で入ってきた。クロードはお茶でも用意しに行っているのだろう。フーレは屋敷の中もある程度知っているからな。


「やあ、今年もよろしくね」

「こちらこそ。ヘレナート達には助けてもらっている」


 たわいも無い挨拶から始まった。本当に新年の挨拶に来たのか言いたくなるくらい、どうでも良い話を続けるので、俺も適当に話を聞きながら相槌をうつ。


「そういえば、神託の神子が来ているのかい?」

「ああ。エステリーゼに会いに来ている。あれでいて、なかなか子供思いな母親だ」

「今の教会があるのは、デイリド殿と神託の神子という権力を持ちながらも欲に溺れず、周囲を助けようとする親子のおかげさ。その神託の神子が自分の娘を大切にするのはおかしくないさ」


 確かに、この村に教会を呼ぶ時も交換条件だったとはいえ、それほどきつい条件ではなかった。むしろ、俺としては有り難いくらいの条件だったし。

 教会ができてからも、お布施みたいなものも殆どなく、ルセフィ達が生活するのに困らない程度で十分だと言われている。

 上の二人がそういう考えだからこそ、教会全体に意識が広がり、国全体から支持され続けているのだろう。まあ、その分、魔石とかで稼いではいるだろうが。

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