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進む開拓

「さて、私にして欲しいことを教えてもらえるかな?」


 到着して一週間が経てば、部屋の片付けも終わり村を一通り見終わり、することがなくなったからかマリゼが俺のもとにやってきた。


「まず、魔力回路でどのくらいのものが作れるのか教えてくれないか?」

「作ろうと思えば大抵のことはできる。現状、作られているのは灯や火、浄化などの簡単なものが殆どだけれど、それは魔力の内包量の多い魔石が少ないからで、技術的に不可能なわけでは無いってとこ」


 ダンジョンで手に入れた魔石は小さかったからな。迷宮都市の20層付近だから敵も弱かったが、もっと深いところだと今度は効率が悪くて数は取れないだろうし。


「王城や教会本部、一部の貴族なんかはある程度内包量の多い魔石を手に入れるすべを持っているから、消費量の多い魔力回路を使っていたりもするね」


 王城や教会の客室は凄かったからな。あれだけでも、魔石がある程度ないと無理だ。同じことをソフィアにやってもらおうとすれば、魔力の消費量はかなりのものになるだろう。

 魔石をふんだんに用意できる経済力と、魔力回路を設計できる人材。この二つが揃っている場所なんてそうそうない。もっと魔石の量に余裕があれば、国全体に行き渡らせることはできるだろうが、それだけの余裕が無いのが現状だ。


「じゃあ、こういうのは作れるか?」


 考えていた案をいくつか見せる。屋敷の中は今のところ問題ないので、村のために使うのが良い。できれば、俺としては銭湯と街灯を設置したい。


「どれも作れるよ。ただ、銭湯はこの設計だとかなりの魔力が必要になる。街灯も連動式にするよりはそれぞれ単独にしてスイッチだけ共通の方がいいね。他のは中サイズの魔石でも工夫次第で作れる」


 欠点と改善策をどんどんと書いていくマリゼに、俺のテンションもどんどん上がっていく。今までできなくて諦めていたものが、可能になるってのは最高だな。


「この魔石ならどうだ?」

「こ、これはどこで!?」


 改造版の魔石を見せるとマリゼが食いついてきた。見た目では普通の魔石をコーティングしてあるだけのようにしか見えないが、専門家が見ると違うのだろうか。


「リーシアに頼んで作ってもらったんだ」

「神子様が……これほど魔力濃度の高い魔石は珍しい。大きさはこれより大きなものも見たことがあるけれど、普通の魔石は自然と徐々に魔力が放出され減っていく。だけれど、この魔石はこの大きさの限界近くまで魔力が詰め込まれている」


 電池みたいなものか。自然放電よろしく魔力の自然放出があるから、充填のできない魔石ではどんどん抜けていくだけだ。

 魔石がどういう原理でつくられ、どの段階まで魔力が溜まり、どのくらいの速度で魔力が抜けていくのかは知らないが、この魔石は今朝充填したところだから魔力がパンパンなのは間違いない。


「これだったら何日持つ?」

「銭湯と灯りを別々なら十日ほど。同じなら複雑になるから三日くらいかな」


 後で機能を付け足す可能性もあるから、別々の方がいいか。

 幸い手元には三つある。一つはジエノアに魔法を教えるのに使いたいから残すとしても、二つ使うのは問題ない。今すぐには無理だが、また必要になるころにはリーシアが新しく作ってくれているだろう。


「手元に二つはあるからこれで頼むよ」

「でも、十日毎に新しく同じ規模の魔石が必要になるよ。それだけの当てはあるの?」

「ふふふ。なんとこれはリーシア作の充電式魔石なんだよ。魔力を注げば繰り返し使える」

「ええ!? そんなのがあるの? 神子様ったら、そんなこと一言も言ってなかったのに」

「相当コストと手間がかかるみたいだ。俺も数ヶ月前に頼んで三つしかもらえなかった。それに、貯めていた素材も使い切ったからしばらくは作れないそうだ」


 俺には何が使われているのかすら分からないけれど。鑑定で見ても、必要な素材までは分からなかった。リーシアが集めるのに時間がかかると言うくらいだから、相当珍しい素材なのは間違いないだろう。


「こんなのが大量に作れたら、革命が起こるよ……」

「と言っても、魔力を注ぐ時の効率が悪すぎて、そこらの魔道士レベルに頼んでも、ちょろっとしか入らないようだが」


 空っぽにしたことは無いが、自然放出とジエノアの訓練で僅かに減った魔力を充填するのですら、驚くほどの魔力を消費したからな。


「それでも十分だと思うけれどね。この大きさの魔石を安定して確保するのも大変だからね」

「魔石の価値は分からないが、相当なんだろうな」


 ノーマルスライムの魔石ですらあの値段だったんだもんな。

 俺達が迷宮に行けば、このくらいの魔石をとれる場所で狩りができるのだろうか?

 できたとしても、危ないだろうからやる気は無いが。


「エトです。今、戻りました」


 エトが街道整備から帰ってきたようだ。ということは、他の奴も戻ってきているから、準備が一気に進められるな。


「お疲れ様。話があるから、カデュートとへレナート達も屋敷に呼んでおいてくれ。クロードはスタインのところに行くように伝えておいて」

「はい。では伝えてきます」


 貴族と家臣だったらこの対応が普通なんだろうけれど、俺からするとこうやって固い感じなのは慣れていないから困るな。

 他の奴らが緩すぎたり、クロード達は懐きすぎたりって感じだから比べるのもおかしいが、エトももうちょっと冒険者らしく緩くなればいいのに。


「じゃあ、私は作ってきたらいい?」

「ああ、頼むよ。急がなくていいから」


 こう言っておかないと、俺の周りの奴は無理しそうな勢いで頑張るから困る。マリゼは態度からすると緩そうだが、仕事ぶりは知らないからな。

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