123、いい人
弓奈はアップルパイを作ってきていた。
紫乃に好かれるようになる第一歩は料理であると考えた弓奈はあれからアップルパイについて本気で学び、味はともかくとしてアップルパイそのものの構造や歴史については日本でも500番目くらいのレベルで詳しいことだろう。アップルパイ集会みたいなものが行われるならぜひ弓奈を呼んで欲しいところである。
「ここで食べましょう」
紫乃は本部席でパイプ椅子をパタパタと広げていった。こんなところでランチにしたら職権乱用と言われそうだが、実際問題として生徒会の打ち合わせをこの時間にする必要もあったので問題はないだろう。
「おねえさま! 私おねえさまのために美味しいお弁当を注文したんです!」
あかりは無理矢理つれてこられた美紗を左腕でぎゅうぎゅう抱きしめながら五段もあるテカテカした重箱を取り出した。中身はエビやらサザエやらが詰まった高級弁当だった。さすが津久田財閥はやることが違う。
「本当は手作りしようと思ったんですけどうまくいかなくって。一緒に食べましょう♪」
「あ、ありがとう」
「紫乃先輩も雪乃ちゃんも美紗ちゃんも一緒にどうぞぉ♪」
「い、いえそんな私は・・・! 恐れ多いです!」
「相変わらず声が高いなぁキミは。そんなキミにはこのウナギをあげるよ。はい、あ〜ん」
「そ、そんな! あ〜んなんてそんな! お許しください津久田さま!」
あかりに負けてはいられない。今こそ弓奈のアップルパイを披露する時だ。というか今出さなくていつ出すというのか。
「えーと、これはまあおまけというか、もしよかったらつまんでねーくらいの勢いで作ったんだけど、みんなの分あるからよかったら食べてね」
「おねえさまの手作りですか!」
「うん。上手くいってるといいけど。アップルパイだよ」
アップルパイだと聞いた瞬間に紫乃がガタッと立ち上がってすぐに座った。なかなか好感触である。
「はい、紫乃ちゃん。温かくないし味もあんまり期待しないでね」
「まあ、食べてあげます・・・」
弓奈が紫乃にパイを渡そうと紙袋をあけた瞬間、とてつもない邪魔者が入った。
「鈴原さぁーん、いるぅ?」
体育教師香山ちゃんである。体育祭だというのになかなか姿を現さないと思っていたら最悪のタイミングで登場してきた。
「やっぱりお昼のうちから閉会式までの打ち合わせを全部やるんだってぇ。ちょっと来てくれる?」
「い、今ですか」
「うん」
弓奈もそうだがこの時は紫乃も香山先生を恨んだ。彼女のお陰で紫乃は大好きな人の手作りアップルパイを食べるタイミングを逃したのである。
「それでは・・・いってきます」
「先輩がんばってくださーい!」
アップルパイを受け取ってから行けばよかったのに紫乃は自分のお弁当だけを持って行ってしまった。「もう行かなきゃいけないので早くそれを下さい」みたいな卑しい台詞やそれに準じた行動をクールな紫乃ちゃんはとれなかったのである。
「うっ・・・」
弓奈はがっくりうなだれた。アップルパイを食べてもらえる次のチャンスは体育祭が終わってからということになるが、そんなものを食べさせてお腹でも壊されたらたまらないのでもうどうしようもない。
「弓奈、どうしたの?」
雪乃ちゃんがひざの上の乗って励ましにきてくれた。雪乃ちゃんは弓奈の気持ちの変化にすぐ気がつく。
「あ、大丈夫だよ〜みんなで楽しく食べようー!」
恋の道は険しいようだ。
さて、まもなくクラブ対抗リレーである。
毎度のことだが今年もこのリレーはクラブだけではなくこの学園のあらゆる団体が出場可能であり、生徒会もこれに参加する。本来は抽選で対戦相手が決まるのだが、テニス部にケンカを売られたことに腹を立てた紫乃は生徒会長パワーを使って彼女たちとの勝負を見事セッティングした。
「弓奈さん。走る順番はどうしますか」
弓奈が昇降口前で準備体操をしていると紫乃が髪をふわふわ揺らしながらやってきた。
「走る順番かぁ・・・」
「今年は3周を3人で走るんですから、1人1周でいいと思います」
「え、それで大丈夫?」
「大丈夫です」
通常このリレーは5人で走り、アンカーは1周その他は半周走るということになっている。3人でこれをやろうと思えば1周ずつが妥当だ。
「まあ元から人数では不利なわけだし、気軽に好きなところ走ればいいんじゃないかな」
「・・・そんな気持ちじゃいけません。今年は誰も幽閉されていないのですから、真っ向勝負できちんと勝たなきゃダメです」
「そ、そうだね!」
やっぱり紫乃ちゃんは頼りになるなぁと弓奈は思った。
「生徒会長として私がアンカーをやります。弓奈さんは第一走でなるべくテニス部に差を付けてください。あかりさんも去年なかなかの速さを見せてくれたので三人で全力を出せばいけるはずです」
「うん!」
この頃、リレー前にもう一度弓奈を挑発しておこうと思った舞は本部席のテントを訪れていた。
「あれ、いないな」
弓奈の姿をさがしてキョロキョロする舞の目に見覚えのある日傘が映った。
「ハロー鈴原の妹」
乱暴な挨拶に雪乃はビクッとして日傘の中で小さくなった。
「ちょっと聞きたい事があるんだけどさ、倉木どこいったか知らない? おーい、聞いてる? 顔出してよ。テントの下なんだから日傘いらないじゃん」
舞が雪乃の日傘をぐいぐい引っ張っていると、どこからともなく一年生の女の子が現れた。
「ゆ、雪乃さんに乱暴をしないでください・・・!」
「うわ、お前この前の・・・今忙しいんだから大人しくしててよ」
「いいえ・・・乱暴は許しません!」
「乱暴なんてしてないじゃん、ちょっと傘引っ張っただけだよ」
「そ、それが乱暴なんです・・・!」
親しくはないが一応知り合いの少女が自分を助けてくれていることに少し安心した雪乃は日傘からちょっとだけ顔を出してみた。自分に弓奈の行方を訊いていたのが舞であることに雪乃はここで気づいた。
「弓奈・・・ここにはいない」
そう雪乃がつぶやくと、舞は突然しゃがんで日傘の中を覗いてきた。
「どこに行くとか言ってた?」
雪乃は首を横に振った。美紗は舞の背中にしがみついて雪乃ちゃんから引きはがそうとしているが彼女は力がない少女なので舞の体はびくともしない。しかし、怖い怖い舞を追い払おうと自分のために頑張ってくれている美紗の存在が雪乃には有り難かった。
「うわー使えないやつ。倉木はあんたになにか言ってなかったの? 何でもいいからさぁ・・・」
そう言われて雪乃は今朝弓奈の腕の中で聴いた言葉を思い出した。優しい温もりの中で聴いたあの言葉である。
「いい人・・・」
「は?」
「いい人って言ってた。舞のこと」
舞は雪乃がなんのことを言っているのか一瞬分からなくなり言葉を失ったが、やがて全身を包む奇妙な熱と胸を刺されるような苦しさを感じて立ち上がった。その拍子に舞を引っ張っていた美紗は後ろにひっくり返って砂まみれである。舞はそのまま何も言わずに逃げるように走り去っていった。
「ありがとう・・・」
美紗がひざやら頬やらについた砂を払っていると、天使の声が頭の上から降ってきた。聴き間違いかと思いながら美紗は顔を上げた。
「ありがとう・・・」
聴き間違いではなかった。目が合ってからもう一度お礼を言ってくれた雪乃の優しさに美紗は顔が真っ赤である。
「も、申し訳ありません・・・! 出過ぎた真似を・・・! もっと力を鍛えて出直して参ります・・・!」
美紗は慌ただしく雪乃の御前を去っていった。テントに残された雪乃はいつも通りのクールな表情のままだったが、ちょっとだけ傘をくるくる回していた。
スタート地点の集合の列に弓奈と舞が揃った。
弓奈に足を引っ掛けて転ばせると豪語した舞は弓奈の走順に合わせる必要があったため第一走になったのだ。
「おねえさま! 最初から飛ばしちゃって下さい!」
「あとは我々でなんとかします」
1周交代なので生徒会メンバーたちは同じ地点に集まっており、本部席の雪乃や美紗からも近いので弓奈は身内からの応援に恵まれた環境からスタートできる。
舞は半周先にいる友達の姿を探した。人の列の中からやっとの思いで見つけ出した友達も舞のことを見ていたので、どんな顔をしていいか分からなかった舞は目をそらして空を仰いだ。思えば去年と一昨年の体育祭で舞はいろんなことをやらかしてきた。去年は弓奈との直接の対決はなかったが、一昨年はアンカーで勝負をした。弓奈は舞の卑劣な策略によってリタイアさせられた仲間たちの分を含めた三周すべてを走り、舞は最後の一周だけだったというのに負けてしまった。あの時ゴール直前に見た弓奈の後ろ姿と、その髪の美しさは今も舞の瞳の底に鮮やかに焼き付いている。
「次の組、前へ」
いよいよ勝負の時である。体育祭において生徒会とテニス部の対決は大変な注目を集めているビッグイベントであるから、観客たちの盛り上がりもいよいよ最高潮である。ちなみに一緒に走るクラブは他にもあるのだが、全く注目されておらず可哀想である。まあ本人たちも弓奈たちと一緒に走れることに感激して騒いでいるくらいだから問題はない。
スタートラインに立った舞はちらっと弓奈の横顔を見た。初めて彼女に出会った日に見た横顔とは別人のような緊張感に満ちた顔である。しかし舞はこの時不思議な幸福感を感じ、この勝負がなにか大きな思い出になる予感がして胸が激しく高鳴った。
「位置について」
舞は白線の先をにらむ。
「よーい」
風が止まった。
パンッというピストルの音と共に舞と弓奈はグランドを蹴って白線の世界に飛び出した。あっという間に他のクラブの少女たちとの差が開き、二人の勝負になった。
「弓奈様ぁー!」
「女神様がんばってぇー!」
「ライバル対決だわぁ!」
「すてきー!!!」
歓声のうずの中を駆ける二人はコーナーに入った。舞が足を引っ掛ける場所として想定していた場所はこのコーナーの真ん中あたりである。退場門の位置の関係からこの辺りだけ観客の目が遠いので、足を掛けてもばれにくいのである。
(舞・・・)
舞の友達はバトンを受け取る準備をしながら舞のことを見守っていた。
舞が意地を張っていた理由はこうである。
弓奈がものすごくモテる女であること、これは初めて会った日から気づいており、舞も例外でなく弓奈に一目で惚れてしまった一人であった。舞は自分のことを少なくとも弓奈に及ぶような美人だとは思っていないので、自分の抱える恋心の行く末に絶望し孤独感に震えたのだ。そしてどうせ叶わない恋ならばその心に素直になるのはやめようと思ったのだ。しかしこのまま静かに三年間を過ごし、弓奈に顔も覚えて貰えずに卒業していくのはあまりに切なかった。だから舞は意地を張って弓奈に絡んできたのだ。忘れられるくらいなら、嫌われてでもいいから彼女の記憶に残りたい、そんな乙女の気持ちを嘘と呼べるほとこの世界はひねくれてはいないはずである。
「倉木っ!」
コーナーを抜けた瞬間に舞は叫んだ。ずっと真横を走っていたにも関わらず彼女は弓奈に足を引っ掛けなかったのだ。
「えっ!? なに?」
突然声をかけられて弓奈はびっくりしたが返事をしてみた。走りながら声を出すのは体によくないのでやめたほうがよい。
「これっ! 一騎打ちにしてくれないっ?」
「どういう意味!?」
「うちだけで走るからっ!」
「う、うちだけって!?」
「毎年いたずらしてごめぇん!!!」
「ええ!?」
「うちと勝負してくれぇえ!!!」
そう叫びながら舞はバトンを受け取る筈だった友達の脇を通り過ぎて走り続けたのだった。
「ま、舞!」
友達は舞の後ろ姿を見送りながら、舞の中で起きている何か大きな変化に心が震えた。足を引っ掛けなかっただけでなく、何やら叫びながら一人で走り続けるなんてどう考えてもおかしい。
スタート地点だったポイントではテニス部の第三走者と一緒に生徒会のあかりがスタンバイしているが、弓奈と舞の様子がおかしいことに気づいた彼女たちはざわついていた。
「紫乃先輩! 舞さんが代わってないのはどういうことでしょう!?」
「こ、これは!」
紫乃はこの状況を察した。舞がなにかをきっかけに一対一の真剣勝負を挑んできたのだ。おそらく舞は一昨年の弓奈と同じように三周走ろうとしているのである。この勝負に弓奈が乗るかどうか、それはここのバトン受け渡しのときに判明する。
「紫乃先輩! 私どうしましょう!」
「予定通りバトンを貰うつもりで構えていて下さい! 弓奈さんに判断を任せます!」
「は、はい!」
弓奈が駆け抜けるコーナーの先にあかりたちの姿が見えてきた。弓奈はほぼ同じスピード走り続ける舞の息づかいをすぐ隣りに聴きながら考えた。これが高校生活最後の、ひいては人生最後の体育祭であり、その最大の注目を集める競技でこの状況になったことはもはや運命としか考えられない。舞が去年や一昨年のことを謝ったのもなにか相当な覚悟があってのことに違いないから、この勝負は受けるべきだろうという結論に弓奈は達した。
「おねえさま!」
「ごめんあかりちゃんっ!」
弓奈は舞と共にすごい風を巻き起こしてあかりの脇を過ぎていった。観客たちの「きゃああ!」という歓声でグランドが震えるようだった。
「紫乃先輩!」
「はい! 一騎打ちです! 応援しましょう!」
弓奈を日傘の陰から見つめていた雪乃も、弓奈の様子の変化に気づいて椅子から立ち上がった。が、自分の前に人が集まってきて見えなくなったのでパイプ椅子の上に立つことにした。美紗はスタート地点のあたりで弓奈を応援していたが雪乃ちゃんが椅子の上に立ったのを見て慌てて駆けつけ、こっそり後ろから椅子を支えた。倒れたら大変だからである。
二人はほぼ並んだまま三周目に入った。
「おねえさまあー! がんばってくださーい!!!」
「弓奈さん!!」
あかりたちの声が聞こえて弓奈は拳を握り直した。この最後の一周が間違いなく一番苦しいことは覚悟していたがまだ足が回る。最後まで集中を切らしてはいけない。
「舞ー!!! がんばれぇ!」
舞も友達の声が聞こえて白線の先をにらみ直した。弓奈がスポーツ万能で運動の女神にも好かれていることは舞とて知っているが、毎日厳しい部活をしてきた彼女が簡単に負けるわけがないのだ。
二人が最後のコーナーを駆けるとき、すでに客席から大きな拍手が沸き起こっていた。
ここで舞の脚にひとつの限界が訪れる。足の疲労から、走っている感覚がなくなってきたのだ。心肺への負担も彼女に今のスピードを維持し続けることを許さないほどに大きくなっており、弓奈がここであっという間に2メートルほど前に出てしまった。
しかし彼女は諦めなかった。最後の直線に差し掛かった時にラストスパートを仕掛けたのである。ゴールテープを切ったとき、自分の体にほんの僅かでも力を残していたら後悔すると思ったのだ。2メートルほど開けられていた差がぐんぐん縮まっていく。同着か、あるいは追い抜かすことができそうな勢いである。
グランドの全てが息を飲んだその瞬間、舞の足が宙に浮いていた。
(あ・・・!)
舞は、前のめりになって地面に倒れていく自分の体が、まるでスローモーションのように感じられた。彼女はゴールの直前に足をもつれさせてしまったのである。弓奈を転ばそうとしていた自分が勝負の最後に自ら転んでしまうなんて、面白い皮肉もあるんだなと思いながら、舞はグランドの砂ぼこりに派手に転がり込んだ。転んだ本人が気持ちいいくらいに見事な転びっぷりである。
弓奈は大歓声の中でゴールテープを切った。
「おねえさまぁー!」
「弓奈さん!!!」
すぐに紫乃やあかりが来て祝ってくれたが、弓奈は舞のことが気になった。視界の隅で彼女が転倒したのを見たからだ。
「舞さーん!」
舞はゴールテープの手前でなんとも気持ち良さそうな顔で仰向けになって倒れていた。
「舞さん!」
弓奈が移動したため、観客も大移動である。
「舞ぃ!」
ここで舞の友達も到着した。
「大丈夫!? 舞っ!」
舞は砂だらけの顔で息を整えながらゆっくりしゃべった。
「負けたー。やっぱりそうかぁ。負けるかぁ」
左のひざから血がにじんでいる。あれだけのスピードですっ転んだら血も出るだろう。
「ばか! なんでこんな無茶したの!」
友達はちょっぴり泣いている。
「いやぁー、なんでだろう」
舞は深い空の青の中へため息をついた。こんなにすがすがしいため息は人生でもなかなか何度もつけるものではない。
「初めて言われたからかな。いい人って」
そう呟いた舞と目が合って弓奈はドキッとしてしまった。自分の台詞をどこかで聞かれたのかなと弓奈は思った。
「みっともない人ですね、いつまでも地面でひっくり返っていて」
「鈴原・・・」
「早くゴールしてくれないと次に進めないじゃないですか。早く立って下さい」
「ゴール?」
舞は友達と弓奈に支えられてよろよろと立ち上がった。ひざと足首と手のひらがじんじんする。
「いったっ!」
「ケガをしているんだから当たり前です。保健室はあっちです」
紫乃はゴールテープのほうを指差した。
よろよろと歩く舞を応援するために観客たちが次々に席を飛び出してゴール前に集まってきた。プログラムがどんどん押していくことをもはや誰も気にしていない。
「舞ちゃんがんばって!」
肩を支えながら弓奈は言った。
「が、頑張ってるからっ!」
舞は頬を赤くしながら、怒ってるんだか笑ってるんだか分からない顔で答えた。ちなみにこの時雪乃は感動で涙ぐむ美紗に支えられたパイプ椅子の上で弓奈たちの様子を見守りながら傘をくるくるくるくる回していた。彼女も応援しているらしい。
入学式の日に廊下ですれ違った二人が、とうとう同じゴールにたどりついた。本来であれば交わりもしなかったかもしれないそれぞれの運命が、一人の少女の不器用な意地と素直な心のお陰で今日こうして並んで手を取り合ったのである。
「鈴原、保健室ってホントにこっち?」
ゴールした舞は紫乃にそう尋ねた。
「あっちです。さっきのは言葉の綾です。がんばって下さい」
「う・・・!」
保健室はゴールとは正反対の方にあったのである。
「弓奈さん。介抱は舞さんのお友達一人で十分です。私たちは生徒会の仕事へ行きましょう」
「え、うん、そうさせて貰おうかな・・・それじゃ舞ちゃん、またね」
弓奈たちは本部席のほうへ去って行った。
「す、鈴原・・・あいつ!」
「舞、早く行くよ・・・早くしないと靴下に血ぃ付くよ」
「うわあ!」
夏の足音と共に、彼女たちの最後の体育祭がこうして幕を閉じたのだった。




