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ドアマットヒロインです。人間不信なのに、第二王子に求婚されました……

作者: ほしみ
掲載日:2024/04/21

ドアマットヒロインですが、虐められる描写はツライので、カットしました。皆様の想像力におまかせします。

そこ大事だろ! という方、すみません……サクッと幸せになります。

 家族に嫌われていた私は。

 ひねくれて育った。


 祖母が亡くなった翌年に。

 私は生まれた。


 前当主であった祖母は。

 厳格だった。


 後継者である父と。

 そりが合わなかった。

 

 父が母と結婚しようとしたとき。

 祖母は皮肉たっぷりに告げた。

「お前にピッタリだね。愚かなところが」


 年を経るごとに。

 祖母そっくりの外見になっていく私に。

 父母は憎しみをつのらせた。


 私を疎んじる他に。

 彼らのしたことは。

 二歳下の妹を溺愛することだった。


 妹は、父の美麗な顔立ちと。

 母の髪の色を受け継いでいた。 


 父母の性質も。

 そっくりそのままに。


 彼らは、私がいなくなればいいと、願っていた。

 妹に、当主の座を与えたいと。

 私は、彼らの望みを叶えた。


 今、私は王宮に勤めている。

 王太后様付きの侍女として。


 王宮勤めは箔がつく。

 男女ともに。

 結婚相手には事欠かない。


 が、仕事に打ち込み。

 独身を通す人もいる。

 私は、それを目指したい。


 年老いるまで働いた後は。

 恩給で、小さな家を買おう。

 独り、静かに暮らすのだ。


 王宮勤めも、三年を過ぎた頃。

 私は、第二王子に求婚されていた。

 何故?


 疑り深く、他人を信じない。

 誰とも上手に付き合い、かつ距離を置ける人。

 それが、第二王子の求める人だった。


 命の危険が、ないわけではないから。

 警戒心をもって、行動してほしい。


 言葉巧みに近づく人を。

 うかつに信じないでほしい。


「それができる令嬢が、なかなかいなくて……」

 王子は嘆息した。


 婚約者候補は、何名かいたが。

 全員、ふるい落とされた。


 困り果てて、王太后様に相談したら。

 私を推薦された。


「君は、誰のことも好きではないよね?」

 私は、黙ってうなずいた。

 

 小さな頃から。

 私を守ってくれる人は、いなかった。

 信じられるのは、自分だけ。

 

「私も、そうなんだ」

 王子は微笑んだ。

「人を好きになっても、いいことなどないよね」

 私は、深くうなずいた。


 私にとって。

 人を好きになることは。

 差別することと、同じだった。


 好きなヒトは、大事にして。

 嫌いなヒトには、敵意を向ける。

 それ以外には、無関心。


 どうして、「みんな同じ」じゃダメなんだろう。

 私は、決めた。

 人を好きになるのは、やめよう。

 

 そのかわり。

 誰に対しても、平等に接しよう。


 王子は語った。

 幼い頃に。

 暗殺されそうになったと。


 人は裏切る、ということを。

 若いうちに、学べて良かった。

 

「君のことも、特別扱いはしないよ。私のことは、好きにならなくてもかまわない」

「では、平等に」

「そう。平等に」

 

 目と目を見交わし。

 うなずきあう。

 

 私は、王子の求婚を受け入れた。

 立場上断れない、ということもある。


 王太后様が。

 私を薦めた理由は。

 ふたつあった。


 ひとつめは、実家と疎遠で。

 便宜を図る可能性が低いこと。


 ふたつめ。

 皆が嫌がることを。

 率先して引きうけること。


 買いかぶりだ。

 実家とくらべたら、王宮は天国だ。


 面倒なことをやり遂げれば。

 褒められる。


 手際が悪いとののしられ。

 もっと働けと、仕事を増やされることもない。


「君に断られたら、私は一生独身だったよ」と。

 王子はおどけて言う。


「選択の余地はありませんでした」

「後悔は、していないよね?」

「そうですわね……」

 私は、考えこんだ。


「平等という言葉を、覚えていらっしゃいますか?」

「懐かしい言葉だ」


 私の部屋は。

 贈り物のドレスと宝飾品で。

 埋もれそうだ。


「特別扱いはしないと、言っていたのに」

「侍女と婚約者で、待遇が異なるのは当然だろう」


「そうだ。君の家、没落しかかっていてね。結婚式までもちそうにない。別の家に、養女に行ってもらうよ」

 決定事項だと、王子は告げた。


 いずれそうなるだろうと。

 予想はしていた。


 祖母の手腕は。

 確かなものだったが。


 父は、そのやり方を。

 ことごとく否定した。

 

 妹?

 学んでいるところを。

 見たことがない。


「君の家族は、平民落ちする。結婚式には、出席できない」

 もう二度と、会うことはないだろう。


 そう言われて。

 気がついた。


 誰に対しても、平等に接しよう。

 それは無理な話だと。

 

 家族がどうなろうと。

 いかなる興味もない。


「平等というのは、難しいものですね」

「そうだね」


『誰のことも好きではない』

『人を好きになっても、いいことなどない』と。


 あの頃、私は本当にそう思っていた。

 でも、今は……

 

 寸暇を惜しんで会いに来る。

 この方に、伝えたい。


「婚約者と、他の人は平等じゃないです」

 声が、震えた。


「結婚式が、待ち遠しいです」

「私もだ」


 この方の。

 満面の笑みを。

 初めて、見た。

お読みくださり、ありがとうございました。

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