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もう好きに生きますから!~愛され転生者と銀の貴公子の和食で盛り上げる領地経営~  作者: りょうと かえ
第4章 お兄ちゃん、襲来

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33.皇帝様はたきつける

 それから。

 すき焼きパーティーはお開きになり、皇帝様一行を私は見送った。

 ……最後に皇帝様はフォルトと話がある、といって連れていったけれども。


「わふふー」

「パワフルな人だった? そうねー、でもいい人だったと思うよ」

「わふん」

「まぁ、人の上に立つべくして生まれた人ってのは何かしらあるもんだよ、うん」


 皇帝様はフォルトのことを気にかけていて――でもフォルトは素直になりきれない。

 それ自体は日本でもあることだけれど、私はもう一段、この世界特有の絡まり方をしていると感じていた。


 さすがの私でも、あの二人のことを知らないわけではない。

 事実は事実として、偉い人の出自というものは広がってしまうものなのだ。

 日本じゃ考えられないことだけど。


「母親が違うんじゃ、なかなかうまくいかないよね……」

「……わふわふ」


 これ以上、私があの兄弟に出来ることはきっとないのだろう。

 たまに鍋奉行して、お酒を注ぐくらいしかないのだ。


 もふもふなユキをぎゅっと抱きしめて、私は工房へと向かっていく。

 やるべき道筋は見えている。


 精霊祭、そこでヴァレンストと醤油をアピールするのだ。

 問題はどんな料理で醤油を最大限にアピールするか。


 実は半ば、決まっているのだ。

 ヴァレンストには豊富な水産物があり、稲穂の目処もついている。

 そして比較的少量の醤油でも十分な料理。


 まるでミューズがささやくように、ひとつの料理が浮かび上がる。


 それは――寿司。

 寿司しかないでしょ、やるからには!



 ◇



 一方、そのころ。

 フォルトと皇帝――エルト一行は街外れの林を歩いていた。


 特段の意味はない。

 単に、エルトはニーアのいないところで話がしたかっただけだ。


「ずいぶん、パワフルな主人だったな。俺も様々な貴族や領主を知っているが、いきなりお忍びの最中に知らない料理を振る舞われたのは初めてだぞ?」

「ニーア様は最短最高の道を好まれますからね。素晴らしいでしょう?」

「……う、うむ……ま、まぁな」


 目を輝かせて、フォルトが答える。

 このような目をする弟をエルトは見たことがなかった。


 思えば、いつでも弟の背には影がつきまとい――人を寄せ付けない冷たさがあった。

 もっともそれを疎ましく感じたことは、エルトにはない。


 フォルトは身分の低い貴族の母を持ち、常に対魔獣の前線に送られていた。

 ニーアと会ったのは、そんな前線のどこかだと聞いている。


 決してフォルトは良しとしないだろうが、エルトは自分には負い目があると思っていた。

 それを何かで返せれば――それがエルトがずっと考えていたことだ。


 と、エルトはひとつ弟に話すことがあるのを思い出した。


「そういえば、お前宛に見合い話がまた山と来ているぞ」

「全部断ってください」

「断っているんだが、来るんだぞ。帝国だけじゃない他の国からもだ」

「私はまだ身を固めるつもりはありませんので、お断りしてください」

「むぅ…………お前のそれは昔からだから、諦めもするが……」


 エルトはぽつりと言った。

 フォルトは身内からの贔屓(ひいき)目を差し引いても美形である。

 しかも真面目で優秀。もてないわけがない――だがもてすぎるというのも、時には良くないことだ。


 フォルトを巡り、ある夜会で令嬢同士が取っ組み合いの喧嘩を始めたことがある。

 その令嬢達とフォルトは顔見知り程度だったらしいのだが――それが相当堪えたらしい。

 以来、近づいてこようとする女性にはこんな応対なのだった。


「ニーア公もその辺りはトラウマがありそうだが……」

「ええ、それ(・・)には触れないでもらえますか?」


 刺すような視線を向けられ、エルトは口ごもる。昔から知っていたが、やはりニーアに対する入れ込みようは普通ではない。


「……それなら少し考えた方がいいだろうな。精霊祭に出るならば」

「どういう意味ですか?」

「仮に精霊祭がうまく行った、至高の聖女は領主としても有能――そう世界から評価されたとしよう。しかもニーア公は年頃で夫もいない。果たしてどうなる?」

「…………婚約話が殺到するでしょうね」


 そこでフォルトは立ち止まり、腕を組んだ。


「ううむ……」


 いつも決断の早い弟がこのように悩むのは珍しい。やはり聖女のことは特別なのだ。


「あまり悩むこともないと思うがな。どうすればいいか、手は思い付くだろう」

「思い付かないと思いますか……しかし兄上はいつも性格が悪いですね」

「まぁな、お前の兄だからな」


 貴族界ではたまにあることだ。

 ある未婚者に人気が集中しすぎて、愛憎劇が生まれてしまう。


 そんなとき、いったいどうすればいいか?

 わかりきっている。決まった相手がいないから、騒がしくなるのだ。

 誰か――婚約者でもできれば、自然と収束するものだ。


 エルトはこともなく、言い放った。


「うざったい話を断りたいなら、適当に対外的にくっつけばいい話だ。お前とニーア公ならお似合いだろう」

これにて第四章、終了です!

次の精霊祭編にご期待ください!


面白い、もっと読みたい、続きが楽しみ。そのように思ってもらえたらお願いがございます!


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― 新着の感想 ―
[一言] あの。。。あの。。。。もう四年も更新されていらっしゃいませんが。。。この続き読みたいです。フォルトとニーアの不器用な2人のこの先。幸せにしてやってくださいませ。続き読みたいです。お願いします…
[一言] ここで更新が途切れているのがとても勿体無く思います。 更新再開を願いつつ。
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