表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もう好きに生きますから!~愛され転生者と銀の貴公子の和食で盛り上げる領地経営~  作者: りょうと かえ
第4章 お兄ちゃん、襲来

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/33

27.聖女は売り込もうとする

 おう、のっけから有力情報が……。

 皇帝様見つからないかな~、どうだろ~てなところだったので、渡りに船だ。

 帝国からの商人はそう多くないはず。顔を出してみる価値はある。


「シエラ、そこでいいかな?」

「エリアンのお薦めなら異論なしよ。そこにお酒はたくさんあるんでしょ?」

「もちろんです! あっ、でもそこは持ち込み酒場でして……あまり上品でないと言うか、かなり騒がしいというか……」


 エリアンの言葉がだんだん小さくなる。

 持ち込み酒場は、食材や料理をお客が持ち込んで飲める酒場だ。前世の日本ではセルフキッチンが近い。


 アホほどお酒を飲む人が行く場所で、こちらの世界ではどんちゃん騒ぎになることも多い。

 皆、へべれけになっちゃうのだ。


「別に構わないわ、たまには騒がしいのも悪くないもの」

「アステリアではそういうところは行けなかったし……久し振りだね。あ、エリアンはおつまみを買いに出てたんだ?」

「はいです! ちょっと他で買い物をして戻ろうかな~と」


 持ち込み酒場は基本先払いで、営業時間内は入退店は自由。

 そのため、今のエリアンのようにおつまみを買いに出る人も多い。

 ……本当にタイミングよかった。


「その帝国商人さんが、全部払うからおつまみを買ってこいって! お金もこんなに!」


 見せてくれた皮袋のなかには、銀貨が何枚も入っている。

 これなら肉も魚も10人前は買える……。

 というか初対面の人にお金を渡して、買いに走らせたのね……。


 うーん、すさまじい気の強さとお金のつかいかただ。完全にネジが飛んだお金持ちだよ……。

 確定だよ、こんな大盤振る舞いするのは皇帝のような大金持ちだけだ。

 もしくは、皇帝並みにお金を持っている大商人だけだ!


「なるほど、パシりをしていたところだったのね」

「シエラっ!? はっきり言い過ぎ!」

「いいんです、ニーア様……! 今日は溺れるくらい飲めるんですから!」


 とにかくドワーフにはお酒好きが多い。エリアンも飲めるなら、買い出しに行くのは抵抗はないみたいだ。


「ま、持ち込み酒場ならちょうどいいわ。ここに秘蔵の……」


 シエラがアイテムボックスから小さめの壺を取り出す。

 黒くくすんだ、漢字の刻まれた壺。

 …………それって、もしや……。


「ほむほむ、高そうな――お酒ですか?」

「違うわ、これはソースよ。豆を発酵したソース。とってもレアな調味料なんだから。その名を醤油って言うのよ!」


 やっぱり醤油だー!

 シエラ、ちゃっかり持ってきてた……。


「ニーアなら醤油に合うものもわかるし、即興で料理もできるでしょ?」

「もちろんできるけど……。いきなり醤油料理を皇帝様に出すつもり?」

「ああだこうだ言っても、口に入るものは食べてもらった方が早いわよ」

「……そんなこと言って、お酒入ってるうちに言質を取るつもりでしょ」

「もちろん、そうなれば狙い通りね。なんと言っても、貴重なソースを試食させるんだからね」


 その辺りのしたたかさは、さすが宮仕えが長かっただけはある。

 でも、売り込むいい機会であることはたしかだ。


 わずらわしいこと抜きに、醤油を味わってもらうのも悪くない。

 どうせ正式に売り込むときには味見してもらうことになるんだし。早いか遅いか、その違いだけだろう。

 ――よし、私は決めた。


「わかった、やろう!」


 機会は逃さず、即断即決。それが私だ。

 それに私も作って食べたい料理があるし!


 帝国からきた大金持ちに、とっておきの醤油料理を味わってもらいましょう!


 ◇


 手早く材料を買い揃えた私達は、くだんの持ち込み酒場の入り口にきていた。


「えーと買ったのは……砂糖、すっきり甘めの白ワイン、ねぎ、たまねぎ、エリンギ、牛肉、鶏の生卵……? どういう料理になるのかしら、これ」

「んふふふ……」


 期待の笑みがこぼれてしまう。


 みりんがないのは残念だけど、白ワインに砂糖を慎重に混ぜれば大丈夫。


 豆腐がなかったり野菜は少ないけど、エリンギはあったのでそれを使おう。


 そして特上の薄く切ってもらった牛肉……!

 貰った銀貨と、私の貯めてたお金を使って大量に用意した!


 脂がよくのった、極上の肉の詰め合わせ。前世ではとても手が出ないけど、今なら楽勝だ。


 肉じゃがが好評なら、これも大丈夫だと思う。自信がある……!

 あとはちょうどいい鍋がいるけれど……。


「大きくて底の浅い鍋、持ってきました!」


 おお、エリアンがぴったりの鍋を見付けてきてくれた。この短時間で見つけるなんて、ドワーフのつて、スゴいね。

 前世で使ったのと、ほぼ変わらない雰囲気の鍋だ。


 よしよし、これでイケる!


「珍しい鍋ね……これでないとダメな料理なの?」

「もちろん――すき焼きはこれじゃないとね!」


 そう、こらから私が作るのは――すき焼きなのだ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ