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もう好きに生きますから!~愛され転生者と銀の貴公子の和食で盛り上げる領地経営~  作者: りょうと かえ
第3章 聖女はもふもふ精霊に出会う

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20/33

20.聖女は告白する

今回より一人称に変更いたします!

順次改稿を進めますが、よろしくお願いいたします!

 それから私は、たどたどしいと自覚しながらも説明をしていった。


 自分には異なる世界での記憶があること――生まれ変わりであること。

 きっかけは婚約破棄のショックであること。


「指輪を投げ返したときに、こう……頭の中が……」


 ……あの時の魔力のうねりというか、そんなものが頭に作用したんだということ。


 最近の自分の行動には、少なからず自分の前世の影響があること。

 今の肉じゃがもそうだ。前世で食べた記憶があるから、作りたくなっている。


「……あの字を読めたのも、なぜかあの字が前世と同じだからで」


 あと大切なことだが、過去の記憶は残っているし、自分はあくまで自分ということ。


 ……そして最後に、元の自分――前世を思い出す前の自分には戻る気がないこと。


 なんとか説明をしていくなかで、フォルトの顔を見れないことに気が付いたが、もう止まれなかった。


 ここまで来たのなら、言い切ってしまうしかないだろう。

 堰を切ったように話して、話して、話し終えてしまった。


 隠し事は自分の思っている以上に心を削る。わかっていたようで、わかっていなかった。

 結局、私は自分の考えをぶちまけてしまったのだ。


「……なるほど」


 全てを語り終えたとき、フォルトの声が妙に低く聞こえた。

 ……ぁ、でももう遅い。

 私の視線は床に落ちて、彼の顔も直視できない。


「え~と……つまりは、はい、そういうことなんです」

「……にわかには信じがたい、というのが率直な感想です」


 ……やっぱりやめておいた方が良かったかな。

 なんとかうまく説明はできたとは思ったんだけれども。


 ああ、なんでこう……時に私は考えなしなんだろうか。


 しかし、フェルトの次の言葉は限りなく優しかった。

 これまでで一番暖かく、優しく私には感じられた。


「しかし、ニーア様は変わらない……。あなたが過去に為したことはいささかも曇りはしないのです。顔を上げて下さい、ニーア様。私はそのようにしているあなたを見るのが、一番辛いんだ」


 ふっと顔を上げると、フォルトが私のそばに立っていた。


「……私も立場にずっと縛られてきました。皇子であったり、色々と。でも人生の選択で後悔したことはありません。ニーア様は今、後悔されていますか? もっと他の生き方があると――そう考えたりはしますか?」


 その問いかけは子どもに言い聞かせるような口調だった。

 でも不快では全くない。


 今の私には、これくらいがちょうど良かったのだ。


 少なくても、ここに来てからは割りと好きなように生きている。後悔なんてあるわけがない。

 友達とやりがいのある仕事があるのだから。


 なので、不器用な私はそのまま言葉にした。それが今できる精一杯なのだから。


「後悔なんてしていませんし、今の生活は楽しいです。やりがいもありますし」

「それなら、それが全てです。……神の意思を人が知るのは難しいこと。これもまた、ひとつの奇跡なのでしょうね」


 そう言うとフォルトは、私の頭を軽く撫でた。

 あまりにも自然だったので、黙って受け入れてしまった。


「……んあっ?」

「ニーア様はもう少し、周りに甘えられてもいいかと思います。私もその方が、嬉しいですし」


 あう、なんてこった。反論できない。


「…………善処はします」


 なんだろう。

 受け入れてもらえたと思うし、それはとても嬉しいのだけれど。

 もちろん今の私は子どもの姿なので、違和感があるわけではないのだけれどっ。


 ……今のは、不意打ち過ぎる……。


 結局、この後肉じゃがのための厨房は借りることができた。

 私が調理したいということも、すんなりと通った。


 なのでフォルトの執務室を出た私は、そのまま厨房に向かうことにした……のだけれど。


 さっきのフォルトの姿と声が、どうしてか頭から離れない。


「……ああ、もう……心臓に悪いよ」


 撫でられるなんて、何年振りだろうか。

 前世でもモテキャラではなかった私には、刺激が強い……。


「緊張というか、そういうのをほぐすためのアレなんだから、アレは…………」


 ぶつぶつと言いながらも、私の心は弾んでいた。

 ようやく肩の荷を下ろすことができたのかもしれない。


 それだけはしっかりと私にもわかるのだった。

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