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七条家の糸使い(旧タイトル:学年一の美少女は、夜の方が凄かった)  作者: 藍依青糸
隊長、副隊長、師匠

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討伐

「はぁーい! 皆さんこんにちはー! 元気ですかー!? 盛り上がってるー!?」


「.......」


「とっても元気な皆さんにお知らせがありまーす!! やったね皆!!」


「.......」


「僕たち特別隊はー! 担当地区がありませーん!! いつも適当なお零れの仕事をやっていまーす!! 人数も少ないので支部も貰えませーん!! 和臣くんの勉強机が特別隊の本拠地だよ!! 凄いねびっくりだ!!」


「.......」


「そんな僕達に!! なんと!!!」


「.......」


「めちゃくちゃデカい仕事が来たよーー!!!??? なあ、葉月どうしよう!? 俺旅に出た方がいいかな!? 探さないでくださいって手紙書いた方がいいかな!?」


 久しぶりに来た婆さんの家、総能支部で葉月と二人きり。受け取った黒封筒を投げ捨てながら叫ぶ。

 オーディエンスは葉月1人だが、エキサイトしていこうと思う。いえい。


「.......和臣、あなたとうとうおかしくなったの?」


「こんな仕事とかどうすればいいの!? これは死刑宣告!! 俺はたぶん処刑!! 葉月今までありがとう!! 愛してるぜベイビー!!」


「.......落ち着きなさいよ」


「俺の人生最後のナンバー!! それでは聞いてくれ『涙が止まらない〜花田さんを呼んで〜』チェケラ!!」


「.......今回は酷いわね」


 葉月が水をやりすぎて枯れたコスモスを見る目で俺を見た。


「もうやだぁ.......仕事やめたい.......」


「あなた、この仕事を辞めたら何するのよ。一生無職?」


「.......なんで再就職を視野に入れてくれないの.......?」


「それで、仕事の内容は?」


「.......俺達はー、受験生ー.......なのにーなぜー.......」


「答えなさいよ」


 がすっと机の下で蹴りが入る。もう既に涙は止まらない。

 できるだけ見ないように黒封筒を葉月に押し付けた。


「.......見ていーよ」


「何よこれ.......ダム?」


「そう、ダム。ダムの周りに出た妖怪退治と、町1個沈んでるから.......調整が必要なのと.......」


 最近、そこで自殺者が増えた事の調査。


「何よ」


「.......一応準備は念入りにしとくか」


「?」


「仕事は今月末だ。その後はゴールデンウィークだから、直接第九隊の.......海の呪術の仕事に行く。あー、しんど」


「確かに、最近忙しいわね」


「困るよな.......ほんとに.......」


 その後葉月に英語の勉強を見てもらって、精神をズタボロにされて帰った。


 そのまま何日か、放課後葉月にメンタルを破壊され続けて。葉月に寝る以外の時間は全て読めと言われた単語帳を見ながらプリンを作っていた。


「和兄、プリンできた?」


「まだ冷えてないから、もうちょい待って」


「うん。あとね、今玄関に和兄のお客さん来たよ。本人じゃないとダメだって」


「ええ.......、白かった?」


「白い女の人だった」


 総能からの連絡か。しかも本人でなければならないとは、とうとう本気で怒られるのか。俺何かしましたか。


「.......清香、プリンまだだからな。1個は姉貴の分だからな」


「うん」


 妹は俺の方を一切見ず、じっと冷蔵庫の扉を見つめていた。冷たいプリンは諦めた方がいいかもしれない。


 玄関に行けば、白い女が待っていた。


「七条和臣様ですか」


「はい.......」


「こちらを」


 真っ黒な封筒を渡される。それでも女は消えずに、ただ静かにそこに立っていた。


「ご確認を」


「はぁ.......?」


 中身を見て。色々な事が一気に頭を駆け抜けたが、次の瞬間にすっと落ち着いた。


「.......了解しました。ちょっと待っててください」


 自分の部屋へ走って、引き出しから白い円が書かれた黒封筒を取り出す。中身にサインをして、急いで玄関の女に渡した。


「確かに確認致しました。それでは失礼します」


 女が外へ出ていった。

 俺は今自分がやらなくてはいけない事を考えて、冷蔵庫の中のプリンを思い出した。小さなハンターに狙われているであろう俺の自信作。

 台所へ行けば、妹は椅子に座って冷蔵庫を見つめていた。


「和兄、まだかなぁ? もう冷えたかな?」


「.......冷えたんじゃないか?」


 そわそわしている妹が可愛くて、まだ冷たくはないプリンを出した。妹に、どうせ作るならプリンをと言われてつくったが、ここまで喜ぶのならまた作ろうと思った。


「うまい?」


「うん! 美味しい!」


 にこにこ笑っている妹を見て、ついつい自分の分もあげてしまった。姉にバレたら相当怒られるので、黙っていることにした。その後普通にバレて怒られた。



 夕飯前に、花田さんに電話をかけた。あまり長くはならなかった。



「あのさぁ」


 姉と妹と俺で夕飯を食べている時。姉の友人の大恋愛の話がひと段落ついた所で切り出した。


「なに? まだこれから実家に戻っての姑バトルが待ってるのよ?」


「お姉ちゃん、そのお友達何歳.......?」


「俺さー」


 残りの味噌汁を一気に飲んだ。


「討伐隊の副隊長に任命されちゃった! わぁびっくり!」


 しんっと静まり返った。


「明日から仕事なんだけど、まあそのうち帰るから。いやぁ、まさか俺が選ばれるとはな! 元々の仕事も葉月達に丸投げだよ、はは! サプライジング!」


「討伐隊なんて、聞いてないわ」


 姉が俺を睨みつけてくる。


「急だし、隊って言っても2人だし」


「は?」


「ハルと俺の2人。討伐隊っていうか討伐ペア? 隊長と副隊長しかいないなんて、なかなかコンパクトだよな」


「.......討伐対象は?」


「うーん。明日公開だったかな?」


 姉の凍えるような目線を受けつつ、心配そうな妹に料理本を渡した。


「好きなの選んどいて。帰ってきたら作るから」


「.......うん!」


「.......私も選ぶ」


 そして、次の日の明け方。姉に「頑張ってきな」と送り出されて、車に乗った。葉月には、ひとつなぎの大秘宝を探しに行ってくるとメールしておいた。


 そして、俺は。

 現最強術者と、機嫌の悪い首を宥めに行く。

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