人物紹介
※ 基本的に登場順です。二部最終章までのネタバレを含みます。
【アルフェ】
主人公。物語開始時点で14歳の少女。銀の長髪に碧眼。同年代の比べても小柄で細身な体格。アルフェは略称で本名ではない。ラトリア大公家の次女として城で暮らしていたが、隣国ドニエステの侵攻により故郷が陥落し、外の世界に放り出された。特殊な環境で育ったため情緒の発達がアンバランスで、各常識が欠如している他、城を脱出する以前の記憶に齟齬が見られる。
家族は母と姉がいる。父親は彼女が幼い頃に他界した。
物語の始めには、太陽をほとんど浴びたことのない病的な色白だった。冒険者となり各地を放浪したことによって、現在はむしろ健康的な見た目になっている。人間としては異常な量の魔力を内に秘める。
コンラッドにきっかけを与えられたことで急成長した。二部終了時の強さは、全力で戦えば領邦トップクラスの戦士や魔術士と渡り合えるほど。ただし彼女の力は体内魔力の残存量に依存するため、あまり燃費は良くない。仮に魔力が全く使えない場合には、大きく力が落ちる。加えてコンラッドによる修行が途中で打ち切られたので、力任せに戦ってしまう傾向がある。
【アルフェの姉】
物語開始時点で17歳。髪の色は金。ちなみに両親の髪色も金髪だった。妹と違い活動的な性格で、趣味は剣の稽古。魔術もハイレベルにこなせるオールラウンダー。ドニエステの侵攻を受けた際には彼女自身も抵抗に加わったはずだが、その後の消息は不明である。
【クラウス】
アルフェの姉の従者。アルフェを城から脱出させた張本人。サバイバル技術を習得しており、城から脱出して一ヶ月ほど、彼とアルフェは結界の外の森や荒野で野宿していた。名前ばかりで全然姿を現さないが、重要人物のはず。
【コンラッド・ヴァイスハイト】
アルフェの師匠。脳まで筋肉でできている朴念仁の唐変木。動物に例えると熊。生活能力が低く、道場の家賃をため込む駄目人間。ヴァイスハイトという由緒ある貴族家の三男だったが、父や兄との確執の結果、家を飛び出して冒険者になった。冒険者時代に相当の辛酸をなめたため、ベルダンに流れ着いたころには相当荒れていた。そこをローラに諭されたことで本来の自分を取り戻し、さらにアルフェと出会ったことで生きる意味を見出した。アルフェを弟子にする前にも何人か(無理矢理)弟子に取ったものの、いずれも彼の技術を身につけることはできなかった。人類トップクラスの強さを誇るが、戦った相手とは相性が悪かった。
【タルボット・バラ―ディ】
商業都市ベルダンの冒険者組合のギルドマスター。スキンヘッドと口ひげが特徴。ギルドマスターといっても、普段は受付にいる人相の悪い親父としか思われていない。市議会で議員服を着ていると笑われる。妻帯者で、嫁は一回り年下の可愛い系。
【テオドール】
青年騎士。物語開始時点で18歳。金髪碧眼の王子様然とした外見。実際、非常に高い家柄の出身である。ロマンチストで、親友のマキアスによくそのことをからかわれている。スマイルだけで女性のハートを奪えるイケメンだが、恋愛関係に関して当人は純朴。騎士団の訓練で炊事洗濯など一通りのことは叩き込まれたので、アルフェなどより家事技能が高い。趣味は料理。
【マキアス・サンドライト】
神殿騎士団に所属している、テオドールと同年の聖騎士。ベルダンでは身分を偽って調査活動を行っていた。いい男だが、テオドールと比べるとやや顔が怖いので女性から敬遠されがち。しかし心根は優しく面倒見がいいので、子どもには好かれる。貴族としては家柄が低く、テオドールと彼が親しくしていることを快く思わない者たちもいる。特技は買い食いと露天の店主との値引き交渉。自分で茶を入れたことが無かったが、アルフェに怒られたことで技術を習得した。
シスコン。妹には及ばないものの、治癒術に適性を持つ。
【リアナ】
三つ編みの幼女。「私がいないと、お父さんはダメだから……」と言いながら、酒浸りの父親を養っていた。売り子の天才。白馬の王子様を信じていたが、今は白馬のお姫様でもいいんじゃないかと思っている。
【リオン】
リアナの弟。6歳くらい。アルフェの家に来てからは、マキアスによく遊んでもらっている。しかし本人は、遊んでやっているのは自分の方だと思っている。幼いながら、姉を守るためのナイトになろうという野望を心に秘めている。
【ローラ・ハルコム】
コンラッドが住んでいる道場の所有権を持つ大家さん。商会長の一人娘でキツめの美女。商会長のハルコム氏は実質ベルダン政財界のトップであり、都市の代表者でもある。ローラ本人もいくつかの店のオーナー。コンラッドがどんなに家賃をためても彼を追い出さない聖人。父親にはしきりに結婚を勧められているが、全て断っている。一度それをコンラッドにほのめかしたら、「お前をもらってくれる男なんぞいるか」と言われたので、本気で殴った。実は少女趣味で、私室はファンシー。
【ウィルヘルム】
冒険者志望の少年A。愛称はウィル。ベルダンの剣術道場で頭角を現しかかっている。マーガレットとは幼なじみで、小さい頃に結婚の約束をした。ウィル本人は忘れている。
【ジェフリー】
冒険者志望の少年B。愛称はジェフ。彼の実家は道具屋で、そこそこ裕福。
【マーガレット】
ウィルとジェフに引っ張られて、冒険者としての仕事をすることになった。旦那になる人には、冒険者ではないもっと堅実な仕事に就いてほしいと思っている。
【トランジック】
決まった拠点を持たない流れ者の冒険者。前科持ちで賞金をかけられている。犯罪者に対する裁判権はその土地の領主が持っているため、越境して逃亡した犯罪者を罰するために、賞金をかけるという手段はよく執られている。
平民の多くは姓を持たないので、彼の場合は単に「トランジック」と名乗っている。そのような平民は、正式な書類等では出身地の名前を付けることが多い。レスター村の出身である彼ならば、「レスター村のトランジック」か「トランジック・レスター」という表記になるか。
【ステラ・サンドライト】
凄腕の治癒術士でマキアスの妹。亜麻色の髪の少女。アルフェより二つ年上である。帝都の大聖堂に五人いないくらいには凄腕で、高位魔術も使用可能。年齢を加味するとすさまじい才能ということになる。教会では治癒術の無償使用に制限をかけているため、治癒術は人を救うためにあるものという信念から、兄が地方任務に就いている隙に家を飛び出した。訪れたいくつかの村では聖女扱いされたが、本人は困惑している。両親が早死にし、近い親類もいなかったため、マキアスとステラの兄妹は幼い頃から教会の厄介になって生きてきた。
ブラコン。兄の前では幼いしゃべり方になる。
【オズワルド】
エアハルトの北東にある開拓村の宿屋店主兼村長。結界の外の開拓村に人が集まる理由は、前科者や兵役逃れ、借金のカタや農村の口減らしなど様々である。
【リグス・マクレイン】
傭兵団団長。40歳前後の巨漢。彼が指揮する40人弱の傭兵団は、帝国では小~中規模程度。戦いでは鬼のように強いものの、政治的才能や経営の手腕は不足していた。かつて戦場においてその勇猛さと非道さを知られた強者だった。全盛期と比べると力は明らかに落ちている。
傭兵と冒険者を隔てるものはあまり無い。実際、彼の傭兵団も冒険者組合から依頼を受けて活動することがある。
【クルツ・エアハルト】
エアハルト伯次男のお坊ちゃま。貴族世界の常識に染まっている軽薄な男に見えるが、悪人ではない。ユリアンとは腹違いの兄弟で、母親の家柄的にはクルツの方が優れている。幼いころには兄弟仲が良く、城でも兄を慕って歩く彼の姿が見られた。しかし成長するにつれて彼に様々なことを吹き込む輩が現れるようになり、いつの間にか修復不可能なほどに険悪な関係になってしまった。何でもできる優秀な兄に対してコンプレックスを抱えている。
【リーフ・チェスタートン】
変性術とゴーレム作成を専門とする魔術士・錬金術士。ぼさぼさ頭のメガネ。完成させたゴーレムには必ず女性の名前をつける。両親は早世し、祖父に愛されて育った。魔術の才能を嘱望されており、城から研究の資金援助を受けている。研究員の中では最も年少で、魔術研究所所長のオスカーに気に入られているため、他研究員からはよく思われていない。
【ヘルムート・テレンスブルク】
クルツの支援者となっている肥満体の貴族。エアハルト伯に従う地方領主の中では、最も広い領地と大きな影響力を有している。帝国における「貴族」の定義は二種類あり、一つはエアハルト伯やラトリア大公のように皇帝から直接領地へと封じられた者たち、もう一つはヘルムートのように伯や大公から領地を分け与えられた者たちである。
【グレン】
リグス傭兵団の副長。最近老眼気味なことに悩んでいるロマンスグレー。リグスが傭兵団を立ち上げた時から彼に従っている。リグス配下では彼に次いで強い。
【ウェッジ】
リグス傭兵団の斥候。スキンヘッドにバンダナ。視覚・聴覚・嗅覚が他人より鋭敏。いつか傭兵を辞めたら料理屋になろうと思っている。
【フロイド・セインヒル】
二十代後半の剣術使い。動物に例えると痩せた狼。さる諸侯に仕えていたが、問題があって一度身分を失った。その後は剣の腕にすがって汚い仕事をこなしながら生きてきた。剣に対する誇りが唯一の財産だと思っているので、それを傷つけられると激怒する。甘党。
【シンゼイ・ポンテス】
エアハルト領の中心都市ウルムにある大聖堂の助祭長。助祭長は偉いようで偉くない、中途半端な役職。それゆえに華々しい活躍を夢見ていた。
【メルヴィナ】
黒髪黒目の死霊術士。この髪色と目の色は帝国内では非常に珍しく、不吉なものだと見る風俗もある。年齢はアルフェの姉と同じくらい。声が小さく、いつもおどおどとした態度を見せる。趣味は虫の標本集め。集めた標本の用途は秘密。
【ユリアン・エアハルト】
エアハルト伯長男。剣の腕では現行人類トップクラスで、政務能力も高い。自分の顔が怖いのが悩み。数年前にエアハルト伯が寝たきりになってから、政務のほとんどを代行してきた。魔術学園の視察をするためにラトリアを訪れたことがある。その時はアルフェの姉に勝負を挑まれ、完膚なきまでにたたきのめした。社交的で交友関係の広い弟に対してコンプレックスを抱えている。
【オスカー・フライケル】
ユリアンが創設した魔術研究所の所長。才能のある魔術士を集め育成している。彼自身も高位魔術の使い手。オスカーは平民出身だが、母親の身分が低いユリアンとは子供の頃からの遊び相手だった。ユリアンにいつも酷使されている。




