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種族:人間ではじまるクソゲー攻略! ~レベルとスキルで終末世界をクリアする~  作者: 灰島シゲル
【第一部】 薄明の街と狂う世界

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五日目・深夜 悪夢の始まり2

 景色が線のように流れて、瞬く間に俺はリッチの目の前へと辿り着く。

 その勢いを殺すことなく、俺は手に持っていた小太刀を構えて突き出した。



「なっ!?」



 だが、その攻撃はリッチの手によって受け止められる。

 指と指の間で挟み込み、俺の小太刀を受け止めたリッチは口を歪めて嗤った。



「カ、カカ、弱イ。弱イ弱い、ソンナ攻撃デ、当タるハズがナイ」



 まるで金属と金属を擦り合わせるかのような不協和音。

 甲高くしゃがれたその声に、俺は思わず眉を寄せた。



「気持ち悪い声、しやがっ、て!」


 小太刀から手を離し、俺はすかさずリッチの懐へと潜り込む。


「黙ってろ!」


 全力で握りしめた拳に、腕と肩の筋肉が膨れ上がる。

 腰を落として捻りを加える。


 出し惜しみ無しの全力の拳。それは、この街にいるモンスターならば、確実に骨を砕き、肉を潰した攻撃だ。



「おぉッ!」



 気合の声と共に、俺は拳をリッチの骨と皮しかないその身体へと突き出す。

 リッチは俺の攻撃から身も守ろうと手を伸ばしたが、それよりも早く俺の拳がリッチへと届いた。

 ガンッ、という音とともにリッチの鳩尾へと俺の拳が突き刺さる。



「グっ」



 拳を叩きこまれて、リッチの顔が歪み、指の間で挟んだ小太刀を落とす。

 だが、顔が歪んだのはリッチだけじゃない。

 リッチを殴りつけた俺もまた、殴りつけた拳に走る痛みに顔を歪めた。


 目を向けると、殴りつけた拳の皮が破れている。まるで、鉄鋼を全力で殴りつけたかのようだった。


 ――コイツ、どんな防御力してるんだよ!


 俺の今のSTRは40を超えている。

 これまでに出会ったモンスターで、殴ったこっちが怪我を負うことはなかった。

 それどころか、殴れば確実に骨にヒビを入れるか、折るか、砕くことが出来た。

 それなのに、俺の放った全力の一撃は、コイツにさほどダメージを与えていない。


 いや、それどころかコイツの防御力の高さに俺の拳は潰されるところだった。



「化け物め」



 骨にまで響くその痛みに、舌打ちを交えながら俺はその言葉を吐き捨てた。

 すぐさま地面に落ちた小太刀を拾い上げ、横薙ぎに払う。


 リッチは俺の攻撃を後ろに下がって避けると、


「こイつ!」


 と耳障りな叫び声を上げて、怒りに燃えた目で俺を見据えて、手に持つ錫杖を振った。



 顔に迫る錫杖を俺は見切り、最小限の動きでそれを躱す。

 リッチが振るった錫杖は俺の顔には当たらず空を斬り、ビュンとした音が俺の耳に届いた。

 その速さと勢いに、思わず背筋が震える。


 ――あれは、当たれば確実に骨が砕かれる。


 棍棒を持つ食屍鬼なんて目じゃない攻撃だ。

 一撃必殺ともいえるその攻撃に、俺の心が恐怖でざわつく。



「くっそ!」


 躱した体勢のまま、俺は上体を倒して蹴りを放つ。


「遅イ」


 リッチは唇のない口を持ち上げると、俺の足を手のひらで受け止めた。


 ――マズい!


 と思った時にはもう遅い。



 リッチはその手に持った錫杖を振り上げて、俺の足をへし折るべくその勢いで振り下ろす――。


「っ!」


 これから身に迫る痛みに、奥歯を噛みしめる。

 だが、その瞬間。広場に甲高い声が響いた。



「【遅延(ディレイ)】、2秒!」



 声と同時に、目に見えてリッチの動きが遅くなる。

 ミコトが放ったスキルだ。



「ぐ、オ、な、ナンダ」



 思った通りに動かないその身体に、リッチの目に驚愕の色が移る。

 俺はすかさず身を捻ってリッチの手から逃れると、地面を蹴って距離を取った。



「助かった!」


 ミコトに向けて声を上げて、俺はリッチを見据える。



 今の攻防でだいたいだがコイツの強さが分かった。

 ステータスで言えば、コイツは俺よりもSTR、DEFが高い。AGIは俺が勝っているようだが、それも僅かな差だ。ほとんど互角と言っても差し支えないだろう。


 コイツを相手に隙を作るのは至難の技だ。

 だが、それでもやるしかない。

 クロエは今でも、【暗闇同化】で闇に潜んでリッチの隙を窺っている。



「クロエ」


 俺は彼女の名前を呟いた。


「なんじゃ」


 すると傍らで声が聞こえる。

 どうやら、クロエは俺の近くにいるらしい。

 

 俺はその声の方向へと目を向けることなく、言葉を続ける。


「あと、スキルが使えるのは何秒だ」

「……四十秒といったところかの」

「今から俺がアイツの右から突っ込む。クロエ、お前は左からいけるか?」

「分かったのじゃ」

「気を付けろ。アイツ、かなり防御力が高いぞ」

「……お主の様子を見ればだいたい分かる。掌打や吹き飛ばしの技を中心に使うとしよう」


 クロエの言葉に、俺は頷きで返した。



「ミコト! 今から三秒後に、五秒だ!!」



 広場中に響く声を出して、俺はどこかで隠れているミコトに指示を出した。

 それから、俺は息を吐いて腰を落とす。

 両足に力を入れて、心の中で時間を数える。



「【遅延】! 五秒!!」



 そして、きっかり三秒後。広場にミコトの声が響いた。

 その声を合図に、俺は地面を蹴ってリッチへと接近する。



「グッ、まタか」



 動きが鈍る自身の身体に、リッチが忌々しそうに呟いた。

 近づく俺に気が付き、錫杖を構えようとするが、もう遅い。


 すでに接近していた俺は、小太刀を構えると袈裟懸けに小太刀を振った。

 小太刀は俺のSTRに後押しされて、凄まじい速度でリッチへと迫るとその身体を薄く切り裂く。


 ――やはり、攻撃力が足りない。


 その事実に、俺は唇を噛みしめるが攻撃の手を緩めるわけにはいかない。

 袈裟懸けで振り下ろした小太刀をすかさず切り返し、今度は逆袈裟に小太刀を斬り上げた。

 勢いを止めず、斬り上げた態勢からすぐさま右足に体重を移動して、リッチに向けて横蹴りを加える。



「グっ」


 大したダメージを与えた手ごたえはないが、それでもリッチが体勢を崩した。

 俺はすぐさま声を上げた。


「ミコト!! 追加で五秒だ!」

「っ、【遅延】! 五秒!」


 スキルの効果が切れて、本来の動きへと戻ったリッチが、再び身体を襲うその正体不明のスキルに怒りの声を上げた。



「誰ダ誰ダ誰ダ誰ダァアアアアアアアアアアアアア!! 私のウゴきを邪魔スル奴ハァアアアアアアアア!!」



「クロエ、今だ!」


 リッチの叫びを無視して、俺はクロエに声を掛けて体勢を崩したリッチへと肉迫した。


「ッ、ふっ!」


 腰に溜めた小太刀を振り抜くように、俺はリッチの右横腹へと向けて刃を振る。


「甘イ――」



 リッチが唇を持ちあげて、俺の攻撃を避けようと身体を捻る。

 闇の中から声が聞こえたのは、その時だった。



「貴様の方がな」


 闇から滲み出るように、リッチの左から姿を現したクロエが背中からリッチの身体へと体当たりを加える。


「グっ」



 ドッという激しい衝撃と共に、リッチの身体が右へと傾く。

 リッチは、すぐにその体勢を整えようとしたが、もう遅い。

 右側から、もうすでに迫っていた俺の刃は、リッチの身体へと確実に届いた。



 ――ガンッという甲高い音が響き、小太刀を通じて硬い衝撃が俺の手に伝わる。



 見れば、俺の放った刃はリッチの横腹を数センチほどしか傷つけていなかった。



 リッチの横腹から、じわりと闇が溢れるように真っ黒な血が滲む。



「くっ」

「これでも無理じゃと!?」



 悔しさと驚愕の表情を、俺たちはそれぞれ浮かべた。

 だが、呆然としてはいられない。

 ミコトの【遅延】によって動きを阻害されていたリッチは、すぐさまその動きを取り戻す。



「キさまらアァアアアアアアア!!」



 痛みを怒りに変えるように、リッチはその手に持つ錫杖を振り上げると周囲を薙ぎ払うように腕を振るった。



「っ! 【遅――」


 慌てたミコトの声が響き、


「しまっ――――」


 俺たちはすぐに回避行動をとるが、もう間に合わない。



 振られた錫杖は、俺とクロエ、二人の身体へと当たり、バキバキと骨を砕く音を響かせながら身体を吹き飛ばす。



「ガッ――」



 地面を跳ねて転がり、高架橋を支える柱へと勢いよく身体をぶつけて、俺の身体はようやくその勢いを止めた。



「がふっ」



 咳き込むと、口から血が溢れた。

 殴られた箇所が熱を持ったように痛い。

 息をするだけで口からは血が溢れて、気を失いそうな激痛が身体に走る。


「っ……、が、あ……」


 震える手でスマホを開いて、自分の残りHPを確認した。




 古賀 ユウマ  Lv:15 SP:0

 HP:18/88

 MP:21/21

 STR:45

 DEF:40

 DEX:35

 AGI:40

 INT:21

 VIT:40

 LUK:62

 所持スキル:未知の開拓者 曙光 夜目 集中強化 視覚強化 刀剣術




 たった一撃。

 その一撃を食らっただけで、俺のHPはもう虫の息だった。



「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……。クソ、ゲーめ」



 ゲームバランスという言葉を知らないこの現実に、俺は唾を吐くしかなかった。





Sea様よりレビューいただきました!

本当にありがとうございます……!!

嬉しすぎてテンションめちゃ上がりました。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 決戦なんだし開幕MP全部遅延に使うんじゃないのか?普通 回復用に残すとしても一々5秒とか短い時間で区切る必要はないだろ
[良い点] 現時点の最新話まで読ませてもらいました。  序盤の主人公の現実逃避や、ミコトの意味不明な理論など ハラハラ、イライラさせつつも、いい感じで収まっていて、 今の二人の関係?掛け合い?は、読ん…
[気になる点] 何話か前の話だが、なんで残り2人という微妙な数でアナウンスが入ったのか・・ [一言] レベルを上げれば倒せると思えるのだが、おそらくレベルを上げることにデメリットがあるかもしれないのが…
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