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種族:人間ではじまるクソゲー攻略! ~レベルとスキルで終末世界をクリアする~  作者: 灰島シゲル
【第一部】 有翼の少女と黄昏の光

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三日目・昼 絶望と恐怖、そして……

ユウマ視点に戻ります。

 廃墟と瓦礫の街を抜け、気が付けば俺は森の中を走っていた。

 大きな池がある森だ。

 日の光さえも入らず、薄暗く鬱蒼と生い茂る緑はまるで俺をここから逃がさないとしているかのようだった。

 朽ちた看板から、辛うじてここがかつての井の頭公園だということが読み取れた。



「げぎゃあ!」


 痺れを切らしたかのように苛立った声が背後から聞こえた。


「ッ!」


 次の瞬間、回避行動をとる間もなく頭に激しい衝撃が襲う。


「――――」



 数瞬、意識が飛んだ。

 目の前がちかちかと明滅し、足元がふらつき地面へと膝をつく。

 混乱する頭で、俺は殴られたのだと理解した。



「げひひひひ」



 俺に一撃を与えて気を良くしたのか、醜悪な笑みが耳に聞こえた。

 振り向くと、俺を見てニタニタと笑みを浮かべたソイツの顔が目に入る。

 もう逃げられない。

 そう本能的に俺は悟った。



 ……ここまで来れば大丈夫。彼女は無事に逃げられるはずだ。



 俺は心の中でその小さな彼女の無事を祈る。

 同時に、身近に迫った死の恐怖にじわじわろ心が締め付けられるのを感じた。



 俺はもう死ぬしかない。

 もう助からない。

 もう逃げられない。

 骨の折れた肋骨が、今しがた殴られた頭の痛みが、死の恐怖をさらに強くする。

 全身が恐怖で粟立ち、身体が震える。

 知らず知らずのうちに涙が溢れそうになる。


 ……ああ、死ぬのか。俺は何もできず、何を成し遂げることも出来ず、俺は死ぬ。


 変に恰好を付けて。

 大人だからと意地を張って、泥臭く藻掻くことすら何もせずにただただ殺されるのだ。



「いや、だ」



 死にたくない。

 死にたくない。死にたくない。

 死にたくない。死にたくない。死にたくない!!

 死ぬのは嫌だ。嫌だ、イヤだ、いやだ――。



「う、うわぁああああ!」



 気が付けば、俺は叫び声を上げていた。

 手に触れた石を拾い、全力で目の前のホブゴブリンへと投げつける。



「げぎゃ」


 ホブゴブリンは一度嗤うと、俺が投げた石を難なく避けた。



「来るな、来るな来るなぁあああああああああ!!」



 意味がないことは分かっている。

 それでも、俺は手当たり次第に石を投げ続けた。

 ホブゴブリンはめんどくさそうに、俺の投げた石を払い、避けて、またあえて身体で受け止めた。



「ぁ――」



 手を伸ばす位置になくなった石に、俺は声を漏らした。

 何か、何かないか!?

 なんでもいい、何か!



「ッ」



 ポケットに手を伸ばすと、固い何かに指先が触れた。

 スマホだ。

 俺のステータスウィンドウと言っても過言ではない、この世界における生命線。



(どうする、投げるか? いや、でもこれが壊れたら俺は……)



 一瞬の躊躇。

 その躊躇を、目の前に迫るモンスターが見逃すはずがなかった。



「げひっ」



 ホブゴブリンが近づく。

 一歩、また一歩と死へのカウントダウンをするかのように、ゆっくりとした足取りでホブゴブリンは俺へと近づいてくる。

 ……もう、ダメだ。

 俺はここで死ぬ。



「――ユウマさん!」



 その瞬間、声が聞こえた。

 俺とホブゴブリンの身体が動きを止める。

 それは、もう絶対に聞くことがないと思っていた声だった。



「ユウマさん! どこですか!?」



 再び、その声が聞こえた。

 先ほどよりも聞こえてくるその声は近い。

 明らかに彼女はこちらへと近づいている。


 ――どうして。彼女がここに?


 いや、そんなことはどうでもいい。

 それよりも今はまずい。目の前のコイツの興味が移る前に、早く逃げてもらわないと!



「来るな!」


 頭を殴られたからか、声を上げた俺の声は震えていた。


「早く戻れ!!」


「ッ!! ユウマさん!! どこですか!?」

「いいから、早く戻れ!」


「嫌です! もう、一人は嫌なんです!」

「早く逃げろって言ってるんだ!」



 俺は出来る限りの叫び声をあげた。

 ホブゴブリンの興味が移る前に、早くミコトを逃がしたかった。

 その瞬間だった。



「ごぎゃぎゃるる?」



 ホブゴブリンが立ち止まり、嗤った。

 何を言ったのかは分からない。

 けれど、なぜだかその言葉の意味が理解できた。



 ――先にあの女を殺せば、お前はどうなるんだ?



 そう言って、コイツ嗤ったのだ。



「――――ッ!」



 ダメだ。彼女だけは、絶対にダメだ。彼女を殺すんじゃない!

 俺はポケットの中へと必死に手を伸ばす。

 指先に触れたそれを乱暴に引っ張りだし、俺は焦りで震える手で自分のステータスを開く。





 古賀 ユウマ  Lv:4 SP:3→0

 HP:15/26→10/26

 MP:6/6

 STR:9→12

 DEF:8

 DEX:8

 AGI:10

 INT:6

 VIT:9

 LUK:21

 所持スキル:未知の開拓者 曙光




 残ったHPを見て、残りのSPをすべてSTRへと割り振った。

 あと、俺がアイツの攻撃を受けられるのは一回か二回。

 それ以上はHPが持たない。



 ――だったら殺られる前に、殺るしかない。



「ぐぎゃぎゃ」



 ホブゴブリンが俺に背を向ける。

 彼女を探しに行こうとしているのは明らかだった。



「ッ!」



 スマホをポケットに入れて、俺は震える足で立ち上がると、地面を蹴った。

 上昇した筋力が俺の足を強化して、力強く地面を蹴りつける。

 足を動かすたびに、景色が流れて身体が前へと飛び出す。

 ステータスのAGIがさらに身体を押し出して、一足踏み出すごとに五メートルの距離を飛んだ。



「あぁぁぁあああああ!!」


 叫び声とともに、俺はホブゴブリンへと身体ごと体当たりした。



「ごぎゃっ!?」


 叫び声をあげて、ホブゴブリンが地面を転がった。



「行かせない。彼女のところへは行かせない」


「……ぐぎゃぎゃ」



 ホブゴブリンが起き上がり、俺へと向き直る。

 俺は拳を握ると、腰を落とした。

 前後にステップを踏んで、戦闘態勢を作る。



 ここで俺がコイツをやらなきゃ、彼女は殺される。

 ここで俺がコイツにやられれば、どちらにしろ彼女は殺される。

 もう、逃げてはいられない。

 覚悟を決めるべきだ。



「ふぅー……」



 戦闘のルーティン。

 深呼吸を繰り返して、集中力を高める。



「来い! 化け物!!」

「げひっ!」


 俺の声にホブゴブリンが嗤い、俺たちは同時に足を踏み出した。



 ホブゴブリンが上段から棍棒を振り下ろし、俺がそれを半身で避ける。

 カウンター気味に拳を繰り出すと、今度はその拳をホブゴブリンが棍棒で受け止めた。

 だが、俺の拳は先ほどまでの拳とは違う。

 上昇したSTRによって、前腕の筋肉が膨らみいくつもの筋が浮かぶ。背中、腰、足、すべての筋肉が収縮して打ち込んだ拳にこれまで以上の力を上乗せする。



「おらァッ」


 拳を振り抜くと、受け止めたホブゴブリンの棍棒にヒビが入った。


「げひ!?」



 ホブゴブリンが目を見開いた。

 だが、それだけで俺は終わらない。

 すぐさま打ち込んだ拳を引っ込めると、右足を軸にして腰を回す。

 DEXが頭で思い描いた通りに身体を動かす。

 STRが振り上げた足とそれを支える腰に筋力を乗せる。



「食らえ!」



 俺の放ったハイキックがホブゴブリンの頭へと命中した。

 ホブゴブリンの顔が歪み、骨が軋む感覚が伝わる。



 だが、それだけだ。

 ダメージはあるが致命傷じゃない。

 今の一撃だって、これまでに出会ってきたどのモンスターを一撃で刈り取る自信があった一撃だ。

 それだけ、自分自身でも納得のいく渾身の一撃だった。

 それなのに、大したダメージにもならないなんて。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 古賀 ユウマ  Lv:4 SP:3→0  HP:15/26→10/26  MP:6/6  STR:9→12  DEF:8  DEX:8  AGI:10  INT:6  VIT:9  L…
[一言] 自分の秘密さえミコトに教えられなかった主人公がそこまでミコトの事を信用する訳が無い。 そんなミコトの命の方が大事な訳が無い。 幾らでも主人公んが言った事は矛盾すぎる。不自然過ぎるんだろう…
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