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種族:人間ではじまるクソゲー攻略! ~レベルとスキルで終末世界をクリアする~  作者: 灰島シゲル
【第一部】 有翼の少女と黄昏の光

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二日目・夕 パーティーでの戦闘

「こっのぉおおお!」



 割れたアスファルトの間から草木が生い茂る道路の真ん中で、彼女は気合いのこもった声を上げた。


 彼女が突き出した鉄パイプは、液体であるその身体を捉えて真っすぐにその核へと傷付ける。

 けれど、彼女の非力な力ではその核を壊すことができない。

 すぐさまソイツ――スライムは、核を覆う液体を操ると彼女が突き出した鉄パイプを飲み込んだ。



「くっ」


 音を立ててスライムに溶解されていく鉄パイプに、ミコトは悔しそうな顔で唇を噛みしめ、手を放す。



「ユウマさん!」


 後ろへと下がりながら、ミコトが俺の名前を呼んだ。


「任せろ!」



 彼女の呼び声に応えて、俺は横からスライムに向けて飛び出した。

 俺の手には、木の枝が握られている。

 つい先ほど拾った、そのあたりに落ちていたものだ。

 俺は頭の中で、テレビで見た陸上の槍投げをイメージする。

 そのイメージに沿って枝を握りしめ、足を広げて片手を掲げ、上半身を後ろへと逸らす。



「ふっ!」


 息を吐き出し、筋肉をしならせて、俺はスライムに向けて槍投げの要領で枝を投げた。

 ヒュッという音とともに、枝は真っすぐスライムに向けて飛んでいく。


 ――が、俺の投げた木の枝は、狙いを定めたスライムの核ではなく、その身体に当たり流動性のある液体の身体を辺りへと飛び散らせた。


 ――ダメだ。イメージ通りに身体が動かない。DEXが足りていない!


 頭の中のイメージした通りに動かない自分の身体に、俺は内心舌打ちをした。



「ミコト!」


 声をかけて、俺はすぐさま後ろに居たミコトとバトンタッチをする。


「はい!」



 俺の声に反応して、今度はミコトが前に出た。

 ミコトの手には石が握られていた。

 ミコトは、その石を構えるとスライムに向けて投石する。

 俺よりもSTRの低いミコトの投石は、俺とは違って十分な速度を生み出せない。



 だが、その投石もモンスターを牽制するには十分だった。

 ミコトの放った投石はいくつかがスライムの身体へとあたり、その身体を小さくあたりに飛び散らせる。ダメージにもならないその攻撃に、スライムがめんどくさそうに身体を震わせた。

 その隙に、俺は足元からミコトと同じ様に石を拾い上げると、今度こそとスライムへと狙いを定める。



「ふぅー……」



 息を吐き出し、止める。

 集中力を高めて、スライムを見据える。

 慎重に狙いを定めて――、


「ッ!」


 俺は全力で腕を振るった。



 ヒュンッと風を切りながら飛んだ石は、まっすぐスライムに向けて飛んで、今度こそ狙い通りにその身体の中心にあるスライムの核に当たった。



「~~~~!!」



 驚いたようにスライムの身体が大きく広がり、やがて力尽きるようにスライムは液体の身体を地面にべちゃりと広げる。

 それからゆっくりと次第に消えていくその姿を見て、俺たちはようやく安堵の息を吐き出した。





「ユウマさんっ! 今の、結構よくなかったですか!?」


 興奮するようにミコトが声を上げた。

 興奮したその言葉が、何を意味しているのかすぐに分かった。

 俺は小さく笑ってミコトの言葉に答える。



「ああ、上手い具合に連携出来ていたと思う」

「はい! 私たちの勝利です!」



 ミコトが笑って手を掲げた。

 俺はその手の意図に気が付き、同じ様に手を掲げる。

 パン、という乾いた音を立てて俺たちはハイタッチを交わした。




 あれから、吉祥寺駅に向かって歩みを進める俺たちは、ミコトの「せっかくパーティになったんだから、パーティっぽい戦い方がしたいです」という言葉を皮切りに、連携を意識しながら戦っていた。




 吉祥寺に向けてかつて道路だった荒れ果てた道を進み、出会うモンスターを蹴散らしながらお互いに戦闘での動きを確認していく。

 そのやり取りを幾度となく繰り返し、少しずつではあるが俺たちの連携は形になり始めていた。


 とは言っても、俺とミコトではステータスに差があるから、お互いにモンスターを相手にした立ち回りが異なってくる。そのため、俺とミコトの間で連携と呼ばれる動きは、ミコトが牽制や時間稼ぎを行い、俺が隙を見て強打もしくは強撃を加えるという単純なものだった。



「スライムやゴブリンが相手なら、なんとかなりそうですね」



 ミコトがアスファルトを突き破って生える樹木の枝を折りながら言った。

 ミコトは今の戦いでスライムにこれまで使っていた鉄パイプを溶かされている。おそらくその枝を次の武器にするつもりなのだろう。

 バキッと音を立てて枝を折ると、ミコトは具合を確かめるように数回振った。



「まあ、なんとかなるのはスライムやゴブリンぐらいで、他の――ブラックドッグとかは単体じゃないとまだ厳しいですけどね」


 苦笑しながらミコトはそう言うと、さらにもう一本樹木の枝を折り俺へと手渡してきた。

 某ゲームに出てくるひのきの棒――ではないが、木の枝はブラックドッグでの戦いで武器を失った俺の、今やメインウェポンだ。メリットとしては使い捨てが可能であることだが、デメリットとしては耐久に難があること。

 今の俺の筋力でその枝をモンスターに叩きつけると、一回の攻撃で大抵木の枝は割れて使い物にならなくなってしまう。

 だから今の俺は戦闘が終わる度に、文字通り木の枝を現地調達しながら戦っていた。



「そうだな。それに、スライムやゴブリンでも相手の数が多いなら注意しないといけない」


 俺はミコトに注意を促した。

 慢心は油断につながる。

 油断は隙に繋がり、隙は命を落とす原因ともなる。



 とは言っても、ミコトの言っていることは事実でもある。

 ミコトとの連携を意識し始めて、俺たちはより多くのモンスターを対処できるようになっていた。スライムやゴブリン相手ならば、今の俺たちなら七匹ぐらいまでの群れだったら相手にすることが出来ている。

 そのおかげで、これまでは逃げることしかできなかったモンスターの群れ相手でも戦闘が出来るようになっており、俺たちが獲得する経験値も多くなっていた。



(そろそろ、レベルが上がってもいい頃だけどな)



 この世界ではレベルアップを知らせる音楽も、システム音も何もない。

 面倒だが、いちいち自分でステータス画面を確認しなければならないのだ。

 俺はスマホを開いて時間を確認した。



「午後五時か……」



 スマホに表示された時間を見て、思わずつぶやく。

 やはりと言うべきか、モンスターと戦闘を繰り返しながら進んでいると足が遅くなる。

 薄暗闇に包まれ始めた崩壊した街を見て、俺は今日の移動を断念した。


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