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種族:人間ではじまるクソゲー攻略! ~レベルとスキルで終末世界をクリアする~  作者: 灰島シゲル
【第二部】 幻想の青年と黎明の影

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二日目・深夜~早朝 夜明け



 足を踏み入れた公園は、端から端までが【地図】で表示できないほど大きな公園だった。


 【地図】の表示範囲は半径一キロメートル。それでも表示できないということは、この公園は一キロ以上の大きさがあるということになる。


 かつては整備された緑化で四季の変化を楽しみ、大きな広場でレクリエーションでも行われていたのだろうが、今この世界では緑の肌を持つ怪物に支配された場所にすぎない。



 跳弾を使いながら、黙々とホブゴブリンの頭を撃ち抜いていく。

 あの時は苦労したモンスターが、そこらの雑魚モンスターに毛が生えた程度だ。


 弾が無くなれば適当な小石を地面から拾って、ステータスに任せて無理やり跳弾させる。

 さすがに丸石ほど狙った場所に跳ねることはないが、頭に風穴を開けるだけならば問題なかった。



 ただひたすらにゴブリンを殺し続けて数時間。

 倒したホブゴブリンとゴブリンの数は、百を超えて二百に届こうとしている。

 さすがに腕が疲れ、喉が渇きを訴えてきたところで俺は一度休憩することにした。



「ふぅ……」



 息を吐いて、手身近な樹木に背中を預けて座り込む。

 冷たい風が吹き抜けて、火照った身体を冷やしていく。

 スマホで時間を確認すると、いつの間にか日付が変わっていた。



 4月2日 午前0時13分。



 夜明けまで、残り約五時間。

 ここからが、レベリングのラストスパートだ。



「…………」



 皮のナップサックから水を取り出し、口に含む。

 腹の虫が鳴って、俺は昼間の残りの乾パンを口に入れた。



「…………」



 休むことなく動き続けているからか、想像以上に疲労が溜まっている。

 口に入れた乾パンは、疲労のせいか味がしなかった。

 それでも、俺は生きるために無理やりに乾パンを口に入れて咀嚼する。

 最後に口の中をもう一度水を含んで潤して、俺はようやく一息ついた。


「そうだ、レベル……」


 言って、スマホを取り出してステータス画面を確認する。




 ユウマ  Lv:34 SP:20

 HP:168/168

 MP:30/75

 STR:107(+11)

 DEF:74(+7)

 DEX:69(+7)

 AGI:111(+11)

 INT:70(+7)

 VIT:69(+7)

 LUK:110(+11)

 所持スキル:未知の開拓者 曙光 星辰の英雄 種の創造主 天恵 夜目 地図 気配感知 直観 雷走 集中強化 瞬間筋力増大 視覚強化 聴覚強化 空間識強化 刀剣術 / 一閃 格闘術

 特殊:強化周回

 種族同化率:31%




 上昇したレベルは、数時間かけて二つ。

 疲労が溜まっているせいか、前回見た時よりもMPが回復していない。

 跳弾を用いて倒していたが、それでも二百近いモンスターを倒せば流石に同化率が上昇するようで、俺の同化率が30%を超えていた。



「新しいスキルは、ないか」



 スキル欄を確認して、ため息混じりに口を開く。

 他に変化した箇所がないことを確認して、俺はSPを割り振った。




 ユウマ  Lv:34 SP:0

 HP:182/182

 MP:30/75

 STR:110(+11)

 DEF:75(+8)

 DEX:75(+8)

 AGI:115(+12)

 INT:70(+7)

 VIT:75(+8)

 LUK:110(+11)

 所持スキル:未知の開拓者 曙光 星辰の英雄 種の創造主 天恵 夜目 地図 気配感知 直観 雷走 集中強化 瞬間筋力増大 視覚強化 聴覚強化 空間識強化 刀剣術 / 一閃 格闘術

 特殊:強化周回

 種族同化率:31%




 SPをLUK以外の項目全てに当てた。

 今の俺のステータスビルドは、STRとAGI優先型だ。

 いわゆる、相手の攻撃を回避して相手よりも多くの手数でより重たい一撃を叩きこむスタイル。


 もう少し、戦闘で使えるスキルが充実すれば極振りも考えれなくもないが、現状で直接戦闘に使えるスキルは【雷走】と【集中強化】などの限界突破スキルぐらいだ。【一閃】を使うには武器がないし、肝心の【格闘術】はまだ新たなスキルが派生していない。



「同化率を気にしなければ、肉弾戦でレベリングするけどなぁ」



 それはつまり、俺が『人間』に取って代わられることを示す。

 アイツに任せれば俺の身体を限界以上にまで使い込まれるため、もしかすれば一周目の新宿の時と同様に多くのスキルを取得できるのかもしれない。


 だが、その代償は非常に大きいだろう。

 限界突破の反動のことなんて、アイツは考えちゃくれない。

 アイツは、〈救世と幻想の否定〉さえ出来れば、俺の身体がどうなろうが知ったことではないのだ。



「地道に、レベルを上げてスキルを獲得していくしかない、か」



 ため息を吐いて、俺はステータス画面を閉じた。

 それから、【地図】を起動させて園内のモンスター数を【気配感知】で確認する。

 あれだけ表示されていた夥しい数の赤い点も、残り僅かとなった。

 おそらく、この調子で狩り続ければ一時間ほどでこの公園内のモンスターを狩りつくす。



「終われば、移動して休憩するか」



 このままここで夜明けを迎えれば、俺は一周目と同じストーリークエストを受ける可能性がある。

 一周目のユウマのことを考えても、俺は別のストーリークエストを受けるべきだ。

 そのためには、この街から少しでも離れなくてはならない。



「ふー……」



 息を吐いて、立ち上がる。

 残り数時間。

 もうひと踏ん張り、気合を入れることにしよう。






「これで、全部」


 園内に蔓延っていた最後のホブゴブリンを倒してから、俺はようやく張り詰めていた気を抜いた。



 結局。

 俺が倒したホブゴブリンの数はちょうど二百匹だった。

 空気に溶け行く最後のホブゴブリンを見ながら、俺は思案する。



(……ホブゴブリンの数がキリ良いし、多分だけど、この数のホブゴブリンを倒せっていうストーリークエストが用意されてたんだろうな)



 初日のプレイヤーに対する、クソゲーの洗礼。

 いったい、どれだけのプレイヤーが初日にこのクエストを受けて、生き残ることが出来るのだろうか。


 ……おそらく、生き延びる人は僅かだろう。 



 そんなことを考えていると、地面に木の根を削り出して作られた棍棒が落ちていることに気が付いた。

 ホブゴブリンが残していった、自らが創り出した武器だ。


 この園内でホブゴブリンを倒していると、時々武器持ちのホブゴブリンが出てきた。

 ホブゴブリンが、自分で元々この世界にあるもので作り出した武器だからだろう。そのホブゴブリンを倒しても、手にしていた武器は消えることなく残っていた。


 俺は、ホブゴブリンを倒す傍らそれらを集めて、来るボス戦に備えをしていた。

 拾った棍棒をナップサックに入れるべく袋を開ける。

 ナップサックの中にはもうすでに多くの棍棒がギチギチに突っ込まれていて、隙間がない。


 しばらくどうにかして入らないものかと試してみたが、すぐに諦め、俺はその棍棒を手に持つことにした。

 コレで、俺の持つ武器はナップサックの中見と、腰のベルトに括りつけられた棍棒が八本。

 多くはないが、この数でどうにかするしかない。



「残り、だいたい三時間半か……」



 スマホで時間を確認して呟く。

 この残り時間で、出来るだけここから離れなければならない。


 公園内を駆け抜けて、立川の街に出る。

 どちらに進むべきかを考えて、悩んだ挙句、昭島市まで戻ることに決めた。

 脇目もふらずに街を駆け抜けて、俺は真っすぐに昭島市へと進む。


 100を超えたAGIとSTRの影響で、全力で走り抜けると景色が風のように流れる。

 行きがけは時間の掛かった道でも、モンスターと戦うことなく全力で最短距離を抜ければ数十分で昭島市に辿り着いた。


 俺は、昭島駅のロータリーで足を止めると、傍にあった瓦礫に背中を預けて腰を下ろす。



「ここまで、来れば、大丈夫だろう」



 呼吸を整えながら、息を吐く。

 それから、俺は少しでも身体を休めようと目を瞑る。

 眠気はすぐにやってきた。

 気を失うように、意識を手放していく中で俺はふと考える。


(……そう言えば、最後にゆっくりと身体を休めたのはいつだっけ)


 デスグリズリーとの戦闘の後も、その前も、しっかりと身体を休めた記憶がない。

 思えば、新宿を出てからずっと数時間の仮眠程度しか取っていないような気がする。


(……まあ、別に、いい、か)


 その考えを最後に。

 俺は、眠りの中に落ちた。




 ≫≫黄昏の世界での初めての夜明けを経験しました。

 ≫≫黄昏の世界で初めての夜明けを経験したことで、必要条件を達成しました。




 鳴り響くアナウンスで、俺はすぐさま飛び跳ねるように目を覚ました。

 慌てて周囲を見渡して、モンスターが居ないことを確認してから安堵の息を吐く。




 ≫≫ストーリークエストを受信します。

 ≫≫ストーリークエスト:山岳の修験者 を受諾しました。

 ≫≫…………ストーリークエスト:山岳の修験者の開始条件を満たしていません。

 ≫≫ストーリークエストは高尾山に到着することで開始されます。




「高尾山、か」



 思わず呟く。

 どうやら、無事に一周目とは違うストーリークエストを受けることが出来たようだ。


 それから、告げられた場所について思案する。


 高尾山といえば、かつて東京都民のハイキング山と呼ばれるほど馴染みの深い山だった。

 その山で有名なのが、天狗の逸話。

 山岳の修験者という名前からして、このストーリークエストのボスはおそらく、天狗だろう。



「天狗、か」



 山の精霊、山の神と呼ばれる日本民話の妖怪――いわゆるモンスターだ。

 日本に伝わる怪異は数多いが、有名なのは山中でおきる神隠し。いわゆる〝天狗の仕業〟と呼ばれる類のもの。

 他にも神通力を用いる、羽団扇と呼ばれる団扇で突風を巻き起こすなど逸話は多い。

 このクソゲーの天狗がどんな存在なのかは分からないが、用心に越しておいて損はないだろう。



「…………」



 ステータス画面を開き、MPを確認する。

 一度眠ったからか、それとも俺のMP最大値が少ないからか。MPは全て回復していた。

 立ち上がり、強張った身体を解す。



「よしっ」


 呟き、前を見据える。


「それじゃあ、始めようか」



 二周目の、最初の試練を。

 ルナティックモードというクソ仕様が追加された、クソゲーのボス戦を。

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