一日目・昼 死にスキル
しばらくして。
全ての傷が癒えた俺は、瓦礫に座り込んでスマホを眺めていた。
ユウマ Lv:32 SP:20
HP:164/164
MP:24/75
STR:92(+9)
DEF:72(+7)
DEX:67(+7)
AGI:102(+10)
INT:68(+7)
VIT:67(+7)
LUK:108(+11)
所持スキル:未知の開拓者 曙光 星辰の英雄 種の創造主 天恵 夜目 地図 気配感知 直観 雷走 集中強化 瞬間筋力増大 視覚強化 聴覚強化 空間識強化 刀剣術 / 一閃 格闘術
特殊:強化周回
種族同化率:29%
上昇したレベルは二つ。
合わせて、新たに獲得した【格闘術】というスキル。
種族同化率は、最後に見た数値よりも6%も上昇をしていた。
「【格闘術】か」
おそらく、肉弾戦での戦闘をしていたからだろう。
LUKの影響もあり、先程の戦闘で獲得したものに違いない。
強敵との戦闘だったが、種族同化率が減少ではなく上昇しているのは、ストーリークエストのボスではなかったからか。
「周回特典と、ルナティックモードね」
呟き、考える。
雑魚の強敵を、一周目のボス級にまでステータスを上昇させるルナティックモード。
一見すれば俺のレベルアップに非常に有効的なシステムのように感じるが、その本質はもっと別だろう。
おそらくだが、このルナティックモードとやらが本格的な牙を剥くのはストーリークエストのボス戦。
ただでさえ周辺プレイヤーのレベルに応じてステータス補正が付くボスモンスターに、このルナティックモードのステータス上昇が加わるということ。
それはつまり、俺専用に用意された超強化ボスの誕生を示す。
「……一周目と同じ感覚で臨めば、確実に死ぬな」
これまで以上のレベルアップとステータス強化は必須。
強くてニューゲームをしたところで、クソゲーはどこまでいってもクソゲーだ。
俺が楽することを、この世界は許してくれない。
「それに――」
と、俺は言葉を漏らした。
ルナティックモードと、プレイヤーレベルに応じたボス補正。
その二つの存在が、俺と他プレイヤーを明確に区別する。
初日のプレイヤーレベルが、二桁を超えることはまずない。
だが、俺はレベル30を超えたプレイヤーだ。
それはつまり、俺が他プレイヤーと行動をすることで、そのプレイヤーを死に目に晒すということ。
俺が強化周回というニューゲームを繰り返す限り、俺は他プレイヤーとの共闘が出来ない。いや、許されない。
この世界は、そういうシステムを創り出している。
「このスキルも、意味がないな」
言って、その欄へと目を向ける。
――【種の創造主】。
他種族との共闘を行う際に、その共闘する種族のステータスを50%上昇させるという、破格の効果を持つスキルだ。
……だが、共闘をしようにも共通の敵を持つことさえも難しい。
もし仮に。俺が他プレイヤーと共闘することがあったとして。
その時、そのプレイヤーは俺に与えられるルナティックモードに付き合わされることになる。
ただでさえ、難易度が崩壊しているクソゲーだ。
一周目のプレイヤーが、ルナティックモードに耐え切れるはずがない。
俺と同じ、強くてニューゲームを繰り返すプレイヤーがいれば話は変わるだろうが、そんなプレイヤーは存在していないだろう。
【種の創造主】というスキルの効果は破格のはずなのに。
今、この現状に置いては全く使うことが出来ない死にスキルとなっている。
その効果と存在が、俺の現状を皮肉しているように思えてくる。
「……はぁ」
思わず、ため息が漏れ出る。
誰にも知られることがない、クソゲー攻略。
俺が挑んでいるのは、そんな世界の攻略だ。
「……ひとまず、SPを割り振るか」
コボルドキングとの戦闘を振り返る。
【雷走】の存在は、もはや戦闘を行う上で欠かせないものだ。
持ち合わせた武器は全て砕け、また探さなくてはならなくなってしまった。
「ルナティックモードのこともあるし、ストーリークエストが始まるまでにレベルも上げたい。探索している時間なんてあるのか?」
自分自身に問いかける。
探索によって得られる成果と、残された時間。
加えて、四日目の深夜に待ち受ける未知の爆弾。
一周目以上にシビアとなった、時間の使い方。
「……武器は、モンスターから奪うか」
一周目でも、棍棒を持つモンスターや、どこかから拾ってきた包丁を持っていたモンスターがいた。
武器がモンスターの一部であれば、共に消えるがそのモンスターが拾ったものならば消えない。
であれば、一番効率的なのはモンスターを狩りながらレベルを上げつつ、その武器を奪うことだろう。
「だったら、現状で優先するべきは一撃の威力が上がるSTRか?」
スキル欄を見つめて、ステータスの割り振りを考える。
一周目と二周目。
追加されたシステムと、現状持ちうるスキルの効果をそれぞれ思い浮かべながら、最適な自分自身のビルドを考える。
「……やっぱり、この存在が大きいよな」
呟き、俺はそのスキルを見た。
――【天恵】だ。
そのスキルがあれば、攻撃を受けても時間さえ稼げれば何度でも万全の状態で挑むことが出来る。
【天恵】は、言ってしまえば時間経過でHPを回復する強化行為――ゲームで言うところの『リジェネ』と同じだ。
これがバフだとすれば、その強化が持続する時間がありそうなものだが、【天恵】は永続的に発動している。
それは、俺だけに与えられた特権。
ルナティックモードの存在や、ボスのステータス補正が働いたとしても、持続回復をしてくるモンスターは今のところ出会っていない。
――だとすれば、俺と強敵との明確なアドバンテージはこの【天恵】にある。
「STR、AGI優先で確実な一撃を重ねていくか。DEF、VITと【天恵】で持久しながら着実に勝つか」
今の俺のステータスを見ても、STR、AGIが一番伸びている。
ここからDEFとVITを伸ばすとなると効率は悪い。
「………………」
思考し、ゆっくりと指を動かす。
画面をタップしSPを割り振っていく。
ユウマ Lv:32 SP:0
HP:164/164
MP:24/75
STR:105(+11)
DEF:72(+7)
DEX:67(+7)
AGI:109(+11)
INT:68(+7)
VIT:67(+7)
LUK:108(+11)
所持スキル:未知の開拓者 曙光 星辰の英雄 種の創造主 天恵 夜目 地図 気配感知 直観 雷走 集中強化 瞬間筋力増大 視覚強化 聴覚強化 空間識強化 刀剣術 / 一閃 格闘術
特殊:強化周回
種族同化率:29%
結局。
俺は、STRにSPを十三、AGIにSPを七、割り振った。
速度を活かしながら、高威力の一撃でモンスターを攻撃したほうがいいと判断したからだ。
さらに言えば、AGIを伸ばしておけばHPが減った時にモンスターから逃げることも容易いだろうという打算もあった。
何度かステータスを見直して、スマホを仕舞う。
両手を組んで大きく伸びをして、瓦礫から腰を浮かして立ち上がる。
「さぁて、と。そろそろ動くか」
食料や水の確保に、レベル上げ。
限られた時間でやるべきことはたくさんある。
「次は――。東に向かうか」
【直観】で、行先を決める。
コボルドキングが向かおうとした、この道の先。
そこに行けば、何かがあるのかもしれない。
この辺りのモンスターは弱すぎる。
コボルドナイトやゴブリンをいくら倒したところで、俺のレベルは上がらない。
であれば、まずはレベル上げに最適な場所を見つけるとしよう。




