表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
種族:人間ではじまるクソゲー攻略! ~レベルとスキルで終末世界をクリアする~  作者: 灰島シゲル
【第二部】 幻想の青年と黎明の影

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

154/246

一日目・朝 探索




 


 【地図】を発動し、【気配感知】で地図上にモンスターの気配を表示させながら、廃墟の街を足早に抜ける。



 一周目とは違い、ステータスが伸びている影響で踏破も早い。

 甲州街道から東京環状へと進み、その途中で見つける廃墟に直観的に怪しいと感じれば次々と足を踏み入れていく。


 時間が惜しいのは確かだが、今の俺はモンスターと遭遇してもチュートリアルクエストが発生していない。

 どうやら、チュートリアルクエストの発生は、一周目限定のイベントのようだ。



 つまり、今の俺はゲーム攻略を進めるのはもちろんだが、一周目以上に探索に力を入れなければならない。



 焦る気持ちはありながらも、【直観】が発動する場所全てを探索する。


 大概は空振りに終わるが、それでも続けていれば効率よく探索が出来ることを廃墟の街で実証している。



 空振りを繰り返しながら、何度目になるか分からない倒壊寸前の廃墟に足を踏み入れた俺は、ピタリと動きを止めた。



 白く積もった埃の床に残された足跡。

 玄関から廊下に続き、家屋の奥へと続くその足跡は、明らかに他のプレイヤーが、ここに足を踏み入れたことを示していた。



「……誰か、居るのか?」



 思わず呟くが、【気配感知】はこの家に誰もいないという結果を返している。

 ということは、ここにはかつて誰かが居た、ということだ。



「探索済み、か」



 普通に考えれば、この足跡を見た時点で引き返すべきだろう。

 だが、この場所を調べた方が良い、と俺の【直観】は囁いている。


 逡巡をして、俺は探索することに決めた。


 分厚く積もった埃に新たな足跡を残し、腐った床板を幾度となく踏み抜きながら、その足跡をまずは辿る。

 すると、その足跡は居間の中へと伸びていて、そこでふいに途切れていた。



「………………なるほど」


 その光景を見て、俺はゆっくりと息を吐いた。



 そこに居たのは、モンスターに襲われ息絶えたプレイヤーだった。

 おそらく、探索の途中で不意に襲われたのだろう。

 周囲に争った形跡はなく、砕けた頭蓋を見るからにそのプレイヤーは一撃で命を奪われたことがすぐに分かった。

 真っ赤に広がる血の海が、まだ乾ききっていない。


 それを見るからに、モンスターに命を奪われてすぐだということが分かった。



「【気配感知】には……。周囲のモンスターがいないな」


 呟き、周囲の気配を今一度探る。



 プレイヤーを殺し、どこかまた別のところに移動したのだろうか。

 目を凝らして周囲を探ると、ゴブリンのものと思われる足跡が壊れた窓へと続き、そこで途切れていた。


 どうやら、ゴブリンはプレイヤーを殺し終えてそこから別の場所へと向かったようだ。


 俺はもう一度そのプレイヤーへと目を向ける。



 ……小さな子供の姿と、背中に生えた透き通る羽。



 顔は頭蓋が砕かれた影響で分からない。性別も、子供のその姿からではパッと見ただけでは判断することが出来なかった。



「確か……。『妖精』、だったか?」



 記憶の中にある、その特徴に合致する種族を呟く。

 それからふと、そのプレイヤーの傍に投げ出されている袋に気が付いた。



「……皮の、ナップサックか?」



 おそらく、そのプレイヤーのチュートリアルクエストの報酬だろう。

 バックパックではないのは、そのプレイヤーの体格に合わせて配布されるからだろうか。


 近づき、そのナップサックを手に取る。

 すると、その中身が入っていることに気が付く。



「――マジかッ!」



 思わず、声が出た。

 慌ててその口を開き、その中身を確認する。


 口の空いた2Lの水が一本に、缶詰が三つ。

 明らかに、そのプレイヤーが『倉庫』から取り出したものだ。

 水はほとんど飲まれておらず半分以上が残っているし、この缶詰さえあれば今日一日は凌ぐことが出来そうだった。


(確か、『妖精』の種族は食料を必要としないんだったか)


 顔も思い出せない、誰かとの会話を思い出す。

 おそらくだが、ひとまず口をつけたのは良いが種族の影響で体質が変化したことですぐに食事と水分補給を止めたのだろう。



「……すまん、貰うぞ」



 手を合わせて、そのプレイヤーに頭を下げる。

 死人の持ち物を漁る行為は、本来なら褒められるべき行為ではないが、今の状況には代えられない。

 俺はそっとそのナップサックを拾い上げて、その場を立ち去ろうとして足を止める。



(……そう言えば、このナップサックに入っていたのは一日分の水と食料だよな。チュートリアルクエストで貰える水と食料は30日分。残りはスマホの中、か)



 ちらり、とそのプレイヤーへ目を向ける。



 ――もし、もしも仮に。


 このプレイヤーのスマホ内の『倉庫』から、チュートリアルクエストの食料と水を取り出すことが出来れば……。



 ゆっくりと『妖精』のプレイヤーへと近づき、その身体を触る。

 麻の服越しに伝わる、冷たい体温。

 そして、ズボンのポケット越しに触れる固い感触。


 手を伸ばし、俺はそのポケットから目当ての――そのプレイヤーのスマホを取り出した。

 ホームボタンがないタイプのものだ。

 画面を開こうと指を触れると、すぐにロック解除失敗の文章が画面に表示された。



「……あれ?」



 もう一度、開こうと指を触れる。

 だが、結果は同じ。

 それを見て、俺はすぐにその原因に気が付いた。



「……顔認証か」



 スマホの機能のカメラは消されているが、ロック解除のためのカメラは動いているらしい。

 その事実に、俺はため息を吐き出してそのスマホをプレイヤーの傍に置いた。



「……悪かった。勝手に中を見ようとして」


 そう小さく謝罪をして。

 俺は、ナップサックを手にその場を後にする。




 廃墟を後にして、俺は東京環状をさらに北へと進む。


 その途中で何度かゴブリンに出会ったが、その全ての戦闘を無視した。

 跳弾で倒すことも可能だが、今の俺のレベルでは戦闘に割く労力とゴブリンの経験値が釣り合っていない。

 適正レベルのことを考えても、相手をするだけ時間の無駄だろう。



「最初のストーリークエストが発生するのが、二日目の夜明けと同時だったか?」



 それまでにレベルを上げておきたいが、如何せんこの辺りのモンスターが弱すぎる。

 まずは、モンスターの傾向が変わるまでひたすら進むしかない。


 廃墟の探索を繰り返しながら、ひたすら黙々と北へと進む。

 モンスターの傾向が変わり始めたのは、水の枯れた――そこは、かつて多摩川と呼ばれていた――川を超えたあたりからだった。



「……あれは」



 スマホ画面に表示される【地図】と、そこに浮かぶ【気配感知】の赤い点を確認しながら進んでいると、進路上にモンスターの姿を見つけた。


 目を凝らすと、そのモンスターがかつて戦ったコボルドに似たモンスターだということに気が付く。

 コボルドと違う点は、その身体が皮の鎧で覆われていて、その手には刃毀れした直剣が握られていることだ。



「騎士を思わせるような恰好……。コボルドの上位モンスターか?」



 コボルドナイト。

 俺は、そのモンスターをそう呼ぶことにした。


 コボルドナイトは三匹で行動していた。

 離れた俺に気が付かないのか、三匹は何かしらを話して嗤いあっている。



 俺は、そっと息を殺して動くと物陰に隠れながらその三匹へと近づいた。



(【気配感知】で感じる限り、一匹当たりの気配は大きくない。だとすれば、経験値も少ないだろうが……。でもまあ、ゴブリンよりもマシだろうな。初見のモンスターだし、一度戦っておくか)



 俺は、そう思いながらポケットに手を入れて、ふと気が付く。



「ああ、そうだ。小石もないのか」



 同化率を上げないよう、雑魚狩りに使っていた跳弾の小石。

 それも、強化周回を行う上で失くしてしまっている。



「……三匹、か。これぐらいなら、まあ、いいか」


 呟き、直接戦闘することに決めた。

 コボルドナイトまでの距離は五十メートル。

 今の俺ならば、駆けるのに問題のない距離だ。


「ふー……」


 ゆっくりと息を吐いて、スタンディングスタートを切るように腰を落とす。


 鉄の棒を両手で構えて、力を溜める。



 ――そして、その溜めた力を一気に開放するように。



 俺は、短く息を吐き出して駆け出した。



「ふっ!」


 と、コボルドナイト達が俺に気が付くよりも速く、その場へと駆けつけて手身近にいた一匹の首へと鉄の棒を振るう。



 ――ゴッ!



 という鈍い音と共に、振るわれた鉄の棒はコボルドナイトの首の骨を叩き折って、その首をあらぬ方向へと捻じ曲げた。



「がぅ――――」


 という断末魔と共に、コボルドナイトの息の根が止まる。



 残された二匹がすぐさま戦闘の体勢を整えてくるが、それよりも先に俺は振るった鉄の棒を切り返すと、二匹の内の手前にいた一匹の額に向けて鉄の棒を突き刺した。



「ぐ、がッ」


 バキッ、という鈍い音の後に、ぐちゅッ、という肉が潰れる感触。


 鉄の棒は頭蓋を貫通し、コボルドナイトの脳漿を潰した。

 ビクビクと痙攣しながら倒れる仲間に、残されたコボルドナイトがたじろぐ。



「が、がうッ!」


 と、その瞳に恐怖の色が濃く浮かび、その手に持つ直剣を俺に向けて振るってきた。


 俺はその剣を半身で避けて、カウンターで拳をコボルドナイトの腹へと叩きこみ、皮の鎧ごと衝撃で内臓を潰す。



「ガッ――」


 とコボルドナイトが血を吐き出し、その血を避けて俺はぐるりと腰を回した。


「フッ!!」


 勢いよく、右足を振り払う。

 右足はコボルドナイトの横腹に突き刺さり、ボキボキと肋骨と背骨をへし折った。


 コボルドナイトは蹴りによって激しく吹き飛ぶと、跳ねながら地面を転がって数メートル先で動きを止めて、やがて空気へと消えた。



 俺は、周囲を見渡し全てのコボルドナイトが倒れたことを確認する。



「……弱いな」



 上位種といえど、やはりコボルド。

 苦戦することもなく倒せたその結果に、俺は小さく息を吐く。



「これじゃあ、経験値も貰えないか」



 今度からコボルドナイトも無視の対象だな。

 そんなことを思って、ふと気が付く。



「そう言えば、アイツら剣持ってたな」



 モンスターの身体は崩れて溶けて、跡形もなくなるがその身体に身に付けていたものは残ることが多い。

 おそらくは、残るものはこの地球上に元から存在していたものなのだろう。

 だとすれば、あの剣や鎧も残るのではないか。

 そんなことを思って、周囲を見渡してみるが、その鎧も剣も跡形もなく空気に溶けて消え去っていた。



「……あの鎧も、剣も、全部を含めてコボルドナイトの一部というわけか」


 その結果に、俺はため息を吐く。


「ストーリークエストで武器が出れば良いけど」


 そう言って、俺はスマホの時間を確認する。



 4月1日 午前10時53分



 二周目が始まり、もう五時間が経とうとしている。

 ストーリークエストまで半日以上ある。


 周囲のプレイヤーレベルに応じてボスモンスターに補正が掛かる、と。

 アイオーンはそう言っていた。

 だとしたら俺の今のレベルを考えても、今回のボスも一筋縄ではいかないだろう。



「せめて、刀か剣があればなぁ」



 思わず、そんなぼやきが漏れた。

 ボスまでに手に入れておけば、少なくとも【一閃】は使える。


 そのスキルが使えるか使えないかでは、ストーリークエストの難易度が段違いだ。



「……とりあえず、探すか」


 呟き、俺は探索を再開する。



 時間は有限だ。

 ぼやく暇があるなら、今はひたすらに探すしかない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 剣を奪ってコボルトを生きたまま逃がしたら、奪った剣がどうなるかに無限の可能性を感じました
[一言] 顔認証なら遺体の顔で解除出来るような そこまでやりたくないなら仕方ない
[一言] 序盤は楽だと思っていたが、まさか武器やアイテムは貰えません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ