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種族:人間ではじまるクソゲー攻略! ~レベルとスキルで終末世界をクリアする~  作者: 灰島シゲル
【第一部】 希望の失楽園と終末の先行者

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六日目・早朝 気配感知と直観



「ユウマさん、起きてください」


 小さな声で呟かれるその声に、俺は睡魔の沼に沈んでいた意識を浮上させる。

 ゆっくりと瞼を持ち上げると、俺の顔を覗き込んでいるミコトと目が合った。


「おはようございます。時間です」

「……時間? …………ああ、交代か」


 呟き、未だぼんやりとする頭のまま身体を起こす。



 身体が軽い。

 寝る直前まであった全身の傷が癒えている。

 どうやら、ミコトが寝ている間に【回復】をしてくれたようだ。



「【回復】、してくれたんだな。ありがとう」

「いえ、大丈夫です」



 ミコトは、俺の言葉にそう言うと口元に笑みを浮かべた。

 それから、ミコトは傍で丸くなって眠るクロエへと声を掛け始める。


 その様子から視線を逸らして、俺は大きく伸びをしながら周囲へと目を向けた。



「…………?」



 ふと、違和感。

 空があまりにも白けている。

 夜空を覆う群青はなりを潜め、東の空には薄明が広がり始めていた。



「っ!?」



 その事実に、慌てて俺はスマホを取り出した。

 時刻を確認して、ゆっくりと息を吐く。

 萩野と別れ、俺たちは一時間交代で仮眠を取り始めた。

 それなのに、今の時刻は仮眠を取り始めて三時間が経っている。


「ミコト」


 と俺は声を掛ける。



 ちょうど、クロエを起こし終えたのかミコトが俺に振り向いた。



「はい?」

「交代の時間。どうして起こしてくれなかったんだ」


 その言葉に、ミコトは苦笑を浮かべた。


「ああ、えっと……。忘れてました」


 その言葉は、嘘だ。

 俺は直観的にそう思った。


「ミコト、ちゃんと決めただろ。MPを回復させるために、しっかり休もうって」


 俺は眉間に皺を寄せながら言った。

 すると、ミコトは唇を突き出しながら言い返してくる。


「大丈夫、休めてますよ」

「MPは?」

「今、103です」



 ミコトの最大MPは129だ。

 数値だけを見れば、おおよそ回復したことになる。



「【回復】は全員に掛けたのか?」

「はい。クロエさんも、ユウマさんもHPが全回復しているはずです」

「……ミコトは?」

「…………してますよ」


 と言いながら、さっとミコトが視線を外した。



 その様子に、俺はため息を吐き出す。

 彼女の種族が、自分よりも他人の命を優先させる種族だからだろうか。

 ミコトは、自分のHPの回復を後回しにしてでも俺たちを最優先に治療してくる。

 この見張りの交代だってきっと、自分は眠らずに済む種族だから――と、俺の疲労回復を優先させたに違いない。



「ミコト……」


 と俺は彼女の名前を呼んだ。



「ちゃんと、身体は休めろ。元はと言えば交代の時間で起きなかった俺が悪いんだけどさ、それでも勝手に見張りを続けるのはやめてくれ。それと、【回復】は自分にもしっかり使え」

「え、でも私……。HPそんなに減ってないですし」

「それでも、【回復】一回分ぐらいは減ってただろ」


 苦言を伝える俺の言葉が本気だと分かったのだろう。

 ミコトは、申し訳なさそうな、諦めたような顔になるとため息を吐き出す。


「はぁ……。仕方ないですね」


 そう言って、ミコトは自分自身に【回復】を使った。


 ミコトが【回復】を使っていると、いつの間に【身体変化】を使ったのか。

 幼児の姿へと変わったクロエが、深くローブのフードを被りながら声を掛けてくる。


「寝起きからなんじゃ。喧嘩か?」

「喧嘩というか、苦言というか」


 そう言って、俺はちらりとミコトへと視線を向ける。

 クロエは俺の視線に気が付いて、【回復】で自らを癒すミコトを見て全てを察したようだ。


「あー……。なるほど、自分を差し置いていたのか、あ奴は」

「ああ、そうだ」

「お主も、ミコトも。種族のこともあるから仕方がないとはいえ、簡単に自分のことを後回しにしすぎじゃ」


 そう言って、クロエは呆れたため息を吐き出した。





 ミコトの【回復】が終わり、俺たちは萩野との待ち合わせである森の入り口へと移動を開始する。


 移動する途中で、俺は手に入れた【気配感知】と【直観】による第六感の強化がどこまで行われているのかを確かめてみることにした。



 まずは、【気配感知】。

 これは萩野の気配を感知した時のように、周囲の気配が分かるようになるというスキルだ。

 スキルは【視覚強化】と同じ持続発動型で、MP消費はしない。

 効果範囲のほどは分からないが、少なくとも効果が及ぶ範囲は100メートル以上ありそうだ。


 また、森のように木々や藪なんかで視界が遮られる場所では、視界外の気配は光球として目に浮かぶようで、道すがら使用した【気配感知】ではモンスターが居る場所を示す光球が至るところに浮かんでいた。



 それを見て俺は、【空間識強化】と組み合わせれば、より光球までの距離と位置が正確になるのではないか、と考えたがそれは上手くできなかった。

 おそらくだが、【空間識強化】の効果が〝目に見える範囲〟と限定されているからだろう。

 視界が遮られた際に目に浮かぶ光球では、そもそも〝目に見える範囲〟から外れている。

 この二つのスキルを組み合わせて使うことは出来そうになかった。


 だが、【気配感知】は意外なスキルと組み合わせることが出来た。


 【地図】スキルだ。



 【気配感知】を使用した状態で、現在地を確かめようと【地図】を使用した際に、スマホの画面に表示された周辺地形図に多くの赤い点が浮かび上がったのだ。

 その点が何かを確かめるため、少し寄り道をしてその場所へと向かうと、そこにはトレントが居た。

 トレントを討伐すると、その赤い点は消滅する。

 【気配感知】で引っかかる気配と含めても、その赤い点がモンスターを示すことは間違いなかった。



 これによって俺は、【気配感知】と【地図】を使うことでモンスターの居場所が手軽に分かるようになり、かつ同時に【気配感知】の効果が【地図】の半分ほどまでしか届かなかったのを見て、効果範囲は【視覚強化】と同じ500メートルほどだという結論に至った。



「なんだ、やっぱりチートですか」


 とその結果に対してミコトが言っていたが、もはや恒例となりつつある感想なのでスルーをする。



 次に、【直観】だ。

 まず、俺たちの中で話題になったのは、【直観】持ちが集まって一つのことを行えば、運の要素が絡むゲームを行えばどうなるのか、ということだった。

 それを確かめるため、俺とミコトはジャンケンを提案したが、これはクロエに却下された。

 というのも、ドイツのジャンケンはグー、チョキ、パーの他に火や泉を示す手の形があるからだ。

 また、日本と違って掛け声も異なるため、ジャンケンの手を出すタイミングも変わる。

 それじゃあ、どうするかと話し合って、結局はクロエの持っていたコインを使って、コイントスを行うことになった。



 森の入り口へと向かう道すがら、俺たちは延々とコイントスを行う。



「「「表」」」


 と俺たちの声が重なる。



 もう、何度目になるか分からないコイントスだ。

 【直観】の検証のため、俺は【視覚強化】のスキルを切っている。

 そのため、何度行おうが俺たち三人の言葉はいつも同じになる。



「「「裏」」」


 と、また俺たちの言葉が重なる。



 それに対して、クロエが大きな息を吐いた。


「これ、決着が付くのかの」

「付かないような気もします」

「だな……。二分の一の確率なら、確信を持ってコレだ! と、言えるからな。【直観】さえあれば、多少の確率が絡むゲームなら負けない気がする」

「そうですね。それじゃあ、もっと直接的なことを調べますか?」

「直接的なことって?」

「【直観】が、戦闘でどこまで通用するのか、とか」

「それは確かめたいけど、どうするんだ?」


 と、俺はミコトの言葉に首を傾げた。



 その言葉に、クロエは一度思案顔となると、


「ふむ……。それじゃあ、こういうのはどうじゃ?」


 そう言って、唐突に手を動かした。



 ()()が、ピクリと反応した。

 反射的に顔を動かすと、寸前にまで顔があった場所をクロエの拳が貫く。



「おい」


 と俺が声を出すと、クロエがニヤリとした笑みを浮かべた。



「実践形式で確かめただけじゃろ。不意打ちを行って、誰が勘よく避けられるか、を試すのはどうじゃ?」

「提案するまえに、もうやってんじゃねぇか」


 と俺は息を吐く。



 とはいえ、【直観】が戦闘でどこまで役に立つのかを確かめるには手っ取り早いだろう。

 クロエの提案に俺たちは頷いて、〝HPが減らないよう力を入れずに相手を叩く〟ことを条件に、森の入り口へと歩きながらの互いへの不意打ち合戦が始まった。



「そう言えば、クゼに会って質問することは分かっているのか?」


 とクロエが言いながら、俺の横腹に向けて唐突に裏拳を放ってくる。


「とりあえず、種族同化現象のことは絶対に聞きたいな」


 と俺はその裏拳を手のひらで受け止めながら言った。



 カウンターとしてクロエに向けて小突くよう腕を突き出すが、クロエはそれを簡単に避ける。



「あとは、ゲームシステムのことですかね」


 とミコトは言いながら俺の背後から背中を叩こうとしてきた。

 それを察した俺は、それを避けながら頷き返す。


「そうだな。限界突破スキル、種族スキル、スキルの獲得条件と確率、モンスターが強化されるこのゲーム仕様、いろいろと聞きたいことはある」

「あとは、個人的にギルド設立の理由が知りたいの」


 とクロエは言いながらミコトの頭を小突こうとする。

 ミコトはそれを躱して、クロエに問いかけた。


「設立の理由、ですか?」


 とミコトは不思議そうに言った。



「うむ。あ奴らは、クゼという奴がこのゲームから抜け出すために、ストーリークエストを終わらせるため戦力拡大を狙ってギルドを設立したと言っておったがの。我にはそれが、どうにも胡散臭くてしょうがない」


「どういうことだ?」


 俺はクロエに向けて拳を突き出しながら言った。

 拳を突き出したのを見計らったのか、ミコトが俺の腕を叩こうとしてくる。

 それを察して、俺はクロエに拳を突き出した腕をすぐに引っ込めた。


「いや、何。お主が言うように、この現実はクソゲーが支配しておる。クゼという奴は、ベータテスターじゃ。誰よりも、このゲームのことを熟知しておる。おそらくじゃが、モンスターがプレイヤーとの戦闘を繰り返し、プレイヤーを殺せば成長していくことも知っておるじゃろ。そんな奴が、戦力拡大を狙ってただ闇雲にプレイヤーを集めるのか疑問になっての」



 その言葉に、俺は動きを止めた。



「…………クゼが、戦力拡大の目的以外にプレイヤーを集めている、ってことか?」

「まだ、分からぬ。じゃが、警戒はしておいた方がいい。それと、気を抜くな」


 と言って、クロエが俺に向けて拳を突き出した。



 ――フェイントだ。



 なんとなく、俺はそう思った。

 俺は動くことなく、クロエに向けて言う。



「ギルドで聞いた話を聞く限りだと、自分がこの世界から抜け出すためだけにギルドを作ったという話もあるし、クゼが敵か味方か分からないな」



 クロエの拳は、俺にぶつかる寸前でピタリと止められた。

 俺が焦る様子も見せなかったことに、クロエは面白くなかったのか鼻を鳴らしながら答える。



「絶対に味方、というわけではないじゃろ。話を聞く限り、どこまでも自分が一番の自己中心じゃ。……まあ、こんな場所で一カ月も生きておるのじゃ。そうなるのも理解できるがの」


 クロエが、そう言ったその時だ。


「あっ」


 とミコトが声を出す。



 向けられた視線の先に、俺も目を向ける。

 そこには、鬱蒼とした森が終わり、朝日の差し込む入り口が見えた。

 それを察して、クロエがすぐさまローブのフードを深く被りなおす。



「……まあ、敵か味方か。それはこれから分かることじゃな」


 とクロエは小さく呟いた。

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