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種族:人間ではじまるクソゲー攻略! ~レベルとスキルで終末世界をクリアする~  作者: 灰島シゲル
【第一部】 希望の失楽園と終末の先行者

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六日目・深夜 彼らの閉じられた現実






 

 俺たちは、獲得したSPを割り振りながら、クロエの話を聞く。


「――ということは、ギルドの奴らは他のプレイヤーが死んだのも、浦野さんが錯乱したのも、全部俺たちのせいだって言ってるのか」

「ああ、そうじゃ。あの男を預けに行った時に、散々言われたわ」


 とクロエはスマホから視線を上げずに言った。


「どうして、そんなことを言うのでしょう」


 とミコトが眉根を寄せて言った。



「……ギルドに残った奴らは、言ってしまえば自分で意思決定が出来ぬ奴らじゃ。常に誰かの背中に隠れて、この壊れた世界で必死に生きているフリをしているだけ。何かがあれば本質を見ずに、表面だけを見て判断をする。多角的に物事を見ることも出来ず、自らの視点だけが全てだと判断する愚か者。だから、あ奴らは自分の弱さを棚に上げて、他人を批判しとる」


 クロエはそう言うと、スマホからようやく視線を上げた。

 俺へと視線を向けて、クロエは言葉を続ける。


「こうなってしまった以上、ギルドに手助けを願うのは無理じゃ。あ奴らは、我らを仲間殺しの犯人扱いしておる。もはや、近づくだけで敵対するじゃろうな」


「……そう、だな」


 と俺はクロエの言葉に頷いた。


 俺たちに非は何もない。

 ただ必死に、ボスを倒し彼らを守った。

 エルダートレントに恐怖し太刀打ちできないからと判断して、俺は彼らを逃がした。

 逃げた彼らは俺たちをバックアップするべく、別のモンスターへと向かい援護を行った。

 その結果、彼らは戦闘を繰り返すごとに強化されゆくデスグリズリーと相対し、破れた。


 言ってしまえば、彼らはこのクソゲーに敗れたのだ。


 ただ、それだけなのに。

 何も知らない第三者から見れば、その惨劇を生き残った俺たちだけがどうしても異質に見えてしまう。



 きっと、ギルドに残されたメンバーと、俺たちではこの世界に対する情報量が違う。


 モンスターが戦闘を繰り返し、プレイヤーを殺すごとに強化されるクソみたいな仕様も。

 俺たちの中に巣くう種族という厄介な存在も。

 種族ごとに異なる初期ステータス。

 種族ごとに、たった一人だけに与えられるチートとも言うべきファーストキルボーナスと、生き残りボーナス。

 種族によってスキル獲得確率も異なり、出会うモンスターは大抵が格上で、満足にレベルアップも出来ないクソ仕様。



 ……上げていけばキリがない理不尽だ。



 けれどここは、そんな理不尽が溢れるクソみたいな世界だ。

 ギルドに居れば、確かに情報は貰えるだろう。手を取り合って生き延びることは出来るだろう。

 けれど、目の前に本当の理不尽がやってきた時。

 その時に、彼らのギルドのシステムは容易く崩壊する。


 俺たちのように、外部からギルドにやってきたプレイヤーが伝達しない限り、ギルドの情報はギルド内で全て完結する。


 ギルドの誰かが新しい情報を得ない限りは、ギルドのプレイヤーが情報を貰う手段はない。

 彼らは彼らの中で、互いが持つ数少ない情報を物々交換の価値とするやり取りして――言ってしまえば、ギルドの中でいつまでも変わらない情報を全員が知るまで蔓延させて、この現実を閉鎖する。


 それを破るには、彼らが積極的に外に出て、襲い来る理不尽に抗い続けなければならない。

 彼らの中の誰かが、同化率50%を超えるしかない。

 同じモンスターでありながら、ボス級となったモンスターに出会うしかない。

 そうすれば、いつか。

 彼らは、この理不尽に塗れたクソゲーに気が付くかもしれない。


 ……だが、クロエの話を聞く限り彼らはそんなことをしないだろう。


 彼らの中でも、積極的に外に出てレベルを上げていたプレイヤーはもういない。

 残された彼らの中から、誰かが理不尽に抗わない限りは、彼らは穏やかに、緩やかに、ゆっくりと。この、黄昏の世界で終末を迎えるだろう。


 浦野さんが正気を戻せば、まだ可能性はあるだろうが……。


 あの様子を見る限り、彼が我を取り戻すのは時間が掛かる。

 それまでに、あの集団が瓦解しなければいいが。



 そんなことを考えながら、俺は最後のSPをステータスへと振り終えた。



「終わりました?」


 とミコトが聞いてくる。


 ミコトは俺たちの中でも真っ先にSPを振り終えている。

 どうやら、俺がステータスを振り終わるまで待っていたようだ。


「見せ合いましょう!」


 とミコトは言った。



 パーティを組んでいる以上、互いのステータスを把握しておくに越したことはない。

 俺もクロエも、その言葉に頷いてスマホを出した。




 古賀 ユウマ  Lv:30 SP:0

 HP:51/160

 MP:9/72

 STR:90(+9)

 DEF:70(+7)

 DEX:65(+7)

 AGI:100(+10)

 INT:66(+7)

 VIT:65(+7)

 LUK:104(+10)

 所持スキル:未知の開拓者 曙光 星辰の英雄 夜目 地図 気配感知 直観 雷走 集中強化 瞬間筋力増大 視覚強化 空間識強化 刀剣術 / 一閃 

 種族同化率:18%



 柊 ミコト  Lv:29 SP:0

 HP:49/84

 MP:12/129

 STR:45

 DEF:45

 DEX:45

 AGI:60

 INT:131

 VIT:45

 LUK:50

 所持スキル:天の贈り物 回復 聖域展開 神の光楯 天恵 遅延 夜目 直観 槍術



 クロエ・フォン・アルムホルト Lv26 SP:0

 HP:62/170

 MP:30/45

 STR:94

 DEF:90

 DEX:65

 AGI:75

 INT:45

 VIT:87

 LUK:65

 所持スキル:暗夜の支配者 吸血転化 身体変化 暗闇同化 生命吸血 闇の眷属  夜目 免疫強化 格闘術 / 連撃




 俺はAGIとSTR優先に、全体の底上げを。

 ミコトは全体の底上げと、ムラのあったステータスの均一化を。

 クロエはやはりSTRに重点を置いて、一撃の重さを重視した割り振りにしていた。



 ミコトは俺のステータスを見て、


「そういえば」


 と思い直したかのように言った。



「ユウマさんの同化率、18%になってますね」

「……そう言えば、そうだな」



 俺はその言葉に頷きを返す。

 自分の格上であるデスグリズリーを倒して、俺の同化率は減少した。

 だが、その減少値の値が今まで最低値だと仮定していた20%を割り込んでいるのだ。


 種族スキルの数と、種族同化率が等しいのではないか。


 そんな仮説を立てていたが、あっさりとそれは覆されたことになる。



「やっぱり、この値って種族スキルに関係なく、格上を倒すと下がるってことか? ミコトはどうだ? ボスを倒して何か変わったか?」


 と俺はミコトに問いかける。


 ミコトは視線を彷徨わせると、ゆっくりと口を開く。


「たぶん、ですが……。私も同化率が下がっていると思います。幻聴も消えましたし、〝守らなきゃ〟ってあれだけ思っていたのが今は何もないですから。私の場合は強敵を倒したから、というよりは脅威が無くなったから下がったような気もしますが」


 そう呟くミコトからは、戦闘中に感じていた強迫めいた感情が感じ取れない。

 同化率が下がっている、というのは本当のようだ。

 その事実に、俺は口元に手を当て考える。


「……種族スキルを獲得するごとに、身体がその種族へと近づいているのは間違いない。種族スキルと同化率は関係がない、か。だったら、俺みたいにデメリットがない種族は積極的に種族スキルを獲得した方がいいのか?」



 これまで、種族スキルを獲得すれば同化率が上昇すると考えていた。

 だからスキルの取得にもあまり積極的ではなかった。

 だが、スキルの取得と同化率になんの関係性がないと分かれば、俺のように身体が変わらない種族は積極的に種族スキルを獲得してもいいのかもしれない。


 何せ、種族スキルは強力なスキルだ。

 そこらの雑魚モンスターでも、プレイヤーとの戦闘やプレイヤーを殺すことでボスモンスターへと格が上がるのであれば、時間が経ちプレイヤーとの戦闘が繰り返され、プレイヤーが多く死んでいくほどモンスターが強化されるということになる。


 強力なスキルは、いくつあっても良い。


「まあ、もとより同化率に関してはクゼに聞く予定じゃったろ。そ奴に話を聞いてから、種族スキルを積極的に獲得するのかどうか決めてもいいじゃろ」


 とクロエは俺の呟きに対して言った。



「そうだな」


 と俺もクロエの言葉に言い返しながら、すぐに眉根を寄せた。


「しかし、困ったな。クエストが終わればクゼの元に連れて行ってくれる約束だったけど、ギルドが俺たちのことをそんな風に言ってるなら、その約束は守られそうにないな」


 そう言って、スマホから視線を上げた時だ。



 ――森の奥から、何かがゆっくりと近づいてくるのを感じた。



 突然顔色を変えた俺に、ミコトとクロエがすぐさま気が付いた。


「どうされました?」

「……何かが俺たちの元へ近づいてる」

「モンスターか?」


 クロエがスマホを仕舞いながら言った。

 その言葉に、眉根を寄せて言う。


「……分からない。この感覚はおそらく【気配感知】の影響だと思うが」


 言って、俺はその気配に意識を集中させる。

 すると、夜の森に薄っすらとしたゴムボールほどの大きさの光球が浮かんだ。


 驚き、傍にいる二人へと目を向けると、ミコトもクロエも俺が睨むその闇を見つめたまま、リアクションがない。


 その様子を見るからに、その光球は俺にしか見えていないものなのだろう。



(二人が見えていなくて、俺だけに見えるってことは【気配感知】の効果、だよな)



 そんなことを思いながら、俺は光球を見続ける。

 光球はふわふわと漂うように森の中を彷徨いながらも、ゆっくりと、けれど着実に俺たちの元へと近づいていた。



「来るぞ」



 二人へと警戒を促して、俺は野太刀の柄へと手を伸ばす。



 やがて、一分後。

 その光球は、鬱蒼とした藪の中から飛び出してきた。



「あっ! やっと出られた……。って、あれ? あなた方は――。っ!? ぼ、ボスモンスターはどこですか!?」



 そう言って、慌ただしく武器を構えだす猫耳の獣人。

 ソイツは、ギルドで個人商店を開き道路標識の盾を売っていた、あの獣人だった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 新たな仲間フラグか、ただの道案内役か。続きを楽しみにしています。
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