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種族:人間ではじまるクソゲー攻略! ~レベルとスキルで終末世界をクリアする~  作者: 灰島シゲル
【第一部】 希望の失楽園と終末の先行者

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六日目・深夜 生存戦略

 ≫≫システム:種族同化率が上昇しています。あなたの同化率は現在36%です。


 俺の言葉に反応するかのように、ミコトのスマホからそのアナウンスが流れた。




「――――」



 クロエが、そのアナウンスに息を飲む。

 俺も、分かっていたその結果に唇を噛みしめる。

 だが、この状況を抜け出すためにはこれしか手がない。


 (人間)ミコト(天使)。二人の種族の共依存関係を利用して、互いへと意識を向け合い、互いの命を守り合うことでしか時間を稼ぐ術はない。

 ミコトは、自らのスマホから聞こえたそのアナウンスに優しく笑った。


 そしてまるで、それが当然だとでも言うべき笑顔で彼女は頷く。


「ええ、分かりました」

「っ、……クロエ、一人で浦野さんを東京駅に送り届けるんだ。アイツは俺たちが足止めをする。出来るな?」


 ミコトの言葉に一度息を詰まらせて、俺はクロエへと言葉を投げかける。

 クロエは、俺の言葉にゆっくりと息を吐いた。


「同化率を利用した、互いの命の全力防衛、か」


 とクロエはそう言って眉間に深い皺を刻んだ。



「…………確かに、それが最善手か」



 やがて、俺の作戦に納得したのか。

 クロエは恐怖で精神崩壊を起こしている浦野さんを担ぎ上げると、俺たちへと目を向ける。



「――すぐに、戻る。それまで、死ぬな」


 言って、クロエは浦野さんを担ごうと動き出す。

 その瞬間に、俺たちの動きを察したデスグリズリーが唸り声を上げた。



「グルルルルゥゥウウ……」



 デスグリズリーが姿勢を低くする。二足で立つその両足に、力が籠められ筋肉で膨らむのが見えた。



 ――マズいッ!



 咄嗟に、俺は前に飛び出た。

 その動きで、【瞬間筋力増大】による反動で痛む身体が悲鳴を上げる。

 でも、だからといって動きを止めるわけにはいかない。


「ッ!」


 悲鳴を上げる身体に歯を食いしばり、俺は無理やり身体を動かす。

 デスグリズリーが動き出したのはその時だった。



 ――ドッ! 



 という音と共に、デスグリズリーが一気に俺たちへと向けて踏み込んでくる。

 数瞬で距離を詰めてきたソイツは、前に飛び出た俺の首を飛ばすように、その鋭い爪を振るってくる。

 俺は反射的に野太刀を構えて、その爪を受け止めた。



 ――ガキィンッ。


 と、硬い金属がぶつかり合った音が周囲に響く。



「っ、くッ……」



 野太刀にデスグリズリーの爪がぶつかった衝撃で腕が痺れる。

 限界突破による反動で握力が落ちているのか、衝撃で野太刀の柄を落としそうになる。


「っ、ぁあッ!」


 気合を入れて柄を握り直し、何とか野太刀を落とすことを防いだ。

 だが、そう何度も出来ることじゃない。

 スキルの反動で筋肉が痛んでいる今、アイツの攻撃を受け止めることが出来るのは残すところ一度か二度といったところだろう。



「ミコトッ!」



 俺は彼女の名前を叫んだ。

 ミコトは俺の言葉にすぐさま反応を示す。



「はいッ! 【聖域展開】ッッ!!」



 スキルの発動と同時に、ミコトを中心とした淡く光る幾何学の文様が地面に広がった。

 文様はデスグリズリーと俺たちを包んで淡く発光を繰り返す。


「――っ!」


 クロエは短く息を吐いて、浦野さん抱えながらデスグリズリーの脇をすり抜けた。

 そのクロエの後ろ姿に、デスグリズリーの狂気に染まった瞳が向けられる。


「いカせる、と思ウか?」


 その言葉と同時に、デスグリズリーがクロエへと向けて腕を振るった。



「――!?」



 だが、その腕はミコトにぶつかるその寸前でピタリと止められる。

 デスグリズリーの目に驚愕の色が浮かび、一瞬の隙が生まれた。


 その一瞬の隙を突いて、俺は痛む身体に鞭を打ってデスグリズリーへと近づき、足を踏み込んで背中からデスグリズリーへと体当たりをする。


 それは、クロエが行うものと全く同じ。

 上昇したDEXによって行われる寸分たがわない『模倣』の衝撃が、デスグリズリーの身体を吹き飛ばした。



「クロエ、今だッッ!! 早く行けッ!!」



 声を上げて、クロエを送り出す。

 クロエは小さく頷き、森の奥へと走って消えた。


 俺はその後ろ姿を見送り、ミコトへと声を掛ける。


「ミコト、【聖域展開】が残ってるうちにSPを割り振れ。……出来れば、ミコトは全てINTに割り振って欲しい。俺たちが生き延びるには、【遅延】を使ってアイツの動きを遅らせるしか方法はない」


「分かりました」



 ミコトがスマホを取り出して、ステータスの割り振りを始める。

 俺も、自分のポケットからスマホを取り出すとSPを割り振った。




 古賀 ユウマ  Lv:26 SP:20→0

 HP:142/142

 MP:3/63

 STR:73(+7)

 DEF:57(+6)

 DEX:55(+6)

 AGI:73(+7)→93(+9)

 INT:57(+6)

 VIT:57(+6)

 LUK:95(+10)

 所持スキル:未知の開拓者 曙光 星辰の英雄 夜目 地図 雷走 集中強化 瞬間筋力増大 視覚強化 空間識強化 刀剣術 / 一閃 

 種族同化率:26%→30%




 生き残るため、全てのSPをAGIへとつぎ込んだ。

 【瞬間筋力増大】による反動が残っている現状、攻撃を行うにはリスクが高い。

 アイツの一撃が致命傷になることを念頭に置いて、攻撃を食らわない方向でステータスを割り振るしかない。



 俺がステータスを割り振るのと、ミコトがステータスを割り振り終えるのは、ほぼ同時だった。



 俺に吹き飛ばされたデスグリズリーは起き上がり、怒りに燃えた目で俺を殴りかかろうとしている。

 だが、その攻撃は全て【聖域展開】によって封じられ、その結果にデスグリズリーが怒りの咆哮を上げた。


「――ッ」


 そのあまりの迫力に、思わず呼吸が止まる。

 【聖域展開】によって広がっていた床の文様が、時間切れが近いことを示すように弱弱しい光で明滅している。

 俺は素早くスマホをポケットに仕舞うと、ミコトに向けて言った。


「ミコト、準備はいいか?」

「――はい」


 ミコトは硬い表情でこくり、と頷いた。



 俺は野太刀を右手で握り締めてゆっくりと息を吐く。

 目の前に迫る死の恐怖が足を、身体を震わせる。

 べったりと張り付く死の気配が、思考をすぐに停止させようとしてくる。

 だがそれでも、思考を止めるわけにはいかない。

 俺が俺であると、常に自分を律し続けなければならない。


 隣へと目を向けると、恐怖で震えるミコトの姿が目に入る。


「ミコト、俺は絶対にお前を死なせない。『人間』に誓って、何が何でもお前を守り切る」

「はい。私も、『天使』に誓ってユウマさんを絶対に死なせません」



 ≫≫システム:種族同化率が上昇しています。あなたの同化率は現在35%です。

 ≫≫システム:種族同化率が上昇しています。あなたの同化率は現在38%です。



 俺たち二人のスマホから、アナウンスが聞こえた。

 瞬間、ボス討伐への意識がさらに強くなるが俺はそれを無視する。

 ただ、隣にいる彼女を守るためだけに、この暴走し始めた意識を向ける。



「――行くぞ」

「――はい」



 【聖域展開】の光が消える。

 夜の闇が――絶望と死の気配が強くなる。

 それは、デスグリズリーとの死闘が始まる合図。

 クロエが戻る数十分。

 俺とミコトによる、互いだけを守る歪な共依存によって始まる生存戦略が開始された合図だった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 天使と人間の助け合い(クソゲー仕様) [一言] り、リソースは二人とも全力で生存に回してんだから総和は変わらないし問題、ない・・・はず・・・? ぇー、なんだこの違和感。
[一言] > AGI:73(+7)→93(+10)  AGI:73(+7)→93(+9) じゃないです?
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