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種族:人間ではじまるクソゲー攻略! ~レベルとスキルで終末世界をクリアする~  作者: 灰島シゲル
【第一部】 緑の古王とプレイヤーズギルド

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五日目・夜 日比谷野外大音楽堂



 ふと気が付くと、辺りがどっぷりとした闇に覆われていたことに気が付いて、俺は狩りの手を止めた。



「もう、そんな時間か」



 そう言って、俺はスマホを取り出して画面を確認する。

 午後六時四十分。

 集中して必死に跳弾の練習をしながら狩りを続けていたから気が付かなかったが、狩りに出掛けて四時間以上が経過していた。

 ステータスが上昇したことと、新宿の街でモンスター・スタンピードを経験した影響からか、以前では疲れていた連続した狩りでも疲労は少ない。

 俺はスマホの画面から自分のステータス画面を開き、今のステータスを確認してみた。




 古賀 ユウマ  Lv:20→23 SP:0→30

 HP:120/128→126/134

 MP:42/42→45/45

 STR:56(+6)→59(+6)

 DEF:51(+5)→54(+5)

 DEX:49(+5)→52(+5)

 AGI:51(+5)→54(+5)

 INT:38(+4)→41(+4)

 VIT:51(+5)→54(+5)

 LUK:82(+8)→89(+9)

 所持スキル:未知の開拓者 曙光 星辰の英雄 夜目 雷走 集中強化 瞬間筋力増大 視覚強化 刀剣術 / 一閃

 種族同化率:27%→29%




 この数時間で、上がったレベルは3つだ。

 俺とミコトは経験値が共有されているから、このレベルアップにはこの街のどこかにいるミコトが倒したモンスターの経験値も含まれている。


 俺とミコトは確実に、この周囲の適正レベルを超えている。

 それでも数時間でレベルが3つも上がっているのは、【曙光】による効果が大きいのだろう。



「……やっぱり、同化率が上がっているか」



 俺はステータス画面に表示された数字を見て呟いた。

 これまでの戦闘で、出会ったモンスターを全て倒してきたが、それでも囲まれれば跳弾を使う暇がない。

 その時はやむなく小太刀を使用して戦っていたからか、やはりその分だけ同化率が上昇していたようだ。



 俺はため息を吐き出して、ステータス画面を閉じる。

 【星辰の英雄】を取得してから、SPの割り振りに時間が掛かっている。

 この街中で時間を掛けてSPを割り振る余裕はない。

 俺は来た道を引き返すように、東京駅へと足を向ける。



「ん?」



 その途中で、見知った後ろ姿を見つけた。

 ローブに覆われているが、その後ろ姿は間違いない。ミコトだ。



 俺は足早に近づき、ミコトへと声を掛ける。


「ミコト」


 すると、その声にミコトがすぐさま振り返ってくる。

 ミコトは俺の姿を視界に納めると、ゆっくりと息を吐いた。


「ユウマさん。お疲れ様です」

「ああ、お疲れ様。無事に終わったのか?」

「はい。なんとか、戦闘に慣れることは出来ました。クロエさんに近接戦闘の手ほどきも受けましたし、何とかなるかと」



 自信に満ちたその表情を確認すると、どうやらその言葉に間違いはないようだ。



「これで、MP管理は厳重ですっ!」


 とミコトは力強く拳を握りしめた。


「頼もしいよ」


 と俺はミコトに笑い返して、ふと気が付く。



「あれ? そう言えばクロエはどこだ?」



 二人で一緒に出掛けたはずだ。

 夜が訪れて、【暗闇同化】を使って姿を隠しているのかと思ったがそんな様子はない。

 ミコトは、俺の言葉に小さく笑うと口を開く。



「クロエさんなら、血を調達すると言って残りました」

「残った? そう言えば、ミコト達はどこに行っていたんだ?」

「日比谷公園です。ユウマさんはどこに居たんですか?」

「俺たちが雨宿りをしていた、あの銅像がある広場だよ」

「あの広場ですか? デスグリズリーが出る場所じゃないですか。そんな場所に一人で行っていたんですか?」


「最初は街をぶらついてたんだ。一角狼を相手に跳弾の練習をしていたんだけど、ストーリークエストのボスモンスターがエルダートレントだろ? 森の中での戦闘に少しでも慣れておきたくて、あの銅像がある広場に行ってたんだ」


「慣れましたか?」


 とミコトは聞いてきた。


「まあ、ぼちぼちな」


 と俺は言葉を返す。



 事前に森の中での跳弾の予行練習をしていて分かったことだが、街中とは違って、森の中の跳弾は非常に難しい。いや、無理だと断言してもいい。

 地面は土や泥で跳ねることはないし、跳ねそうな場所となれば木の幹ぐらいだが、俺の投げる速度が速ければ石は跳ねずに幹を穿つ。


 結果として、森の中で跳弾を利用して敵を倒すのは無理だった。

 ストーリークエストを前に、跳弾はコンクリートがある街中でしか使えない技術だと分かったのは、個人的には大きな収穫だと思っている。



 そんな会話をしていると、俺たちは東京駅へと辿り着く。

 バリケードを守るプレイヤーに会釈をしながら通り抜けて、俺はミコトに言った。



「ミコト、先に休んでてくれ。クロエを迎えに行ってくる。大丈夫だと思うけど、心配だしな」

「分かりました。お気をつけて」



 その言葉に頷きを返して、俺は再び街に出た。

 ミコトが歩いていた方向を辿るように足を向ける。


 しばらく進むと、小さな森のような場所が見えた。

 入口に立てられた朽ちた看板から、ここが日比谷公園であることはすぐに分かった。

 日比谷公園の中へと足を踏み入れて、割れたアスファルトを頼りに足を進める。

 まるで山の中じゃないかと思うほど、至る所に苔が生えたその道は、かつては多くの人に踏みしめられた舗装道だ。


 俺はその苔道を踏みしめて、日比谷公園の奥へと進んでいく。

 すると、かつて噴水だったのだろう、朽ち果てた泉のようなものがある広場へと出た。

 水は枯れ、割れたコンクリートからは草木が伸びている。草木は広場全体を覆っていたが、その中でも一部、踏みしめられた後のように草木が掻き分けられた痕を見つけた。

 その痕は、まっすぐに広場の奥にある苔と蔦に覆われた建物へと続いている。



「クロエか?」



 呟き、俺はその痕を辿った。

 膝ほどの高さにまで伸びている雑草を踏みしめ、その建物へと近づく。

 すると、錆付き朽ち果てた鉄のアーチ状の看板が目に入った。



「日比谷野外大音楽堂……」



 そこに書かれた文字を読み、俺はその先へと目を向ける。

 その入り口からは、藪のように生い茂った緑とそこを囲む苔生したコンクリート壁で、中を覗き見ることが出来なかった。


 入り口の看板と、その先の道を見比べて俺は考える。

 クロエがこの先に向かった保証はないが、誰かがここに向かったのは間違いない。ここから声を出せば中に聞こえるだろうが、その時は周囲にいるモンスターでさえも誘き寄せることになるだろう。



「行くか」



 呟き、俺はポケットの中の残弾を数えた。

 街で狩りをしている間に見つけた、跳弾に適した丸型に近い小石だ。ポケットの中には四つ残っていた。



 苔と草生した道を進む。

 すぐに道は途切れて、俺の視界は大きく開けた。

 真っ先に目に入ったのは、中央にあるステージだった。

 ステージは苔と木質化した茶色の蔦で覆われて、屋根が一部崩壊している。



 崩壊したステージの上には、ぽつんと小さな女の子が立ちすくんでいた。

 その少女へと向けて、誰もいない苔で緑に覆われたベンチが、ずらりと向いている。

 その光景はまるで、崩壊したこの世界で開かれた、たった一人の無人ライブのように思えた。

 少女は、客席に現れた俺に気が付くと小さく笑った。



「なんじゃ、お主か」

「何してるんだ?」


 俺の問いかけに、その少女――クロエは喉を鳴らして笑う。


「別に、何も。ぼうっとしてただけじゃ」

「血は摂れたのか?」


 言いながら、俺は苔生したベンチの間を抜けてステージへと近づき、その上へと登った。



「ミコトから聞いたのか? 新宿で消費した分は調達出来たの」


 そう言って、クロエは笑う。


「それで、お主はどうしてここに来た? まさか、我のように血を調達するためではあるまい」

「迎えに来た……ってのは、まあ表向きの理由だな。お前が一人だって聞いて、会いに来たんだ」

「それは……。昼間のことか?」


 その言葉に、俺は頷く。


「ここならミコトもいない。俺と二人だ。ミコトには聞かれたくないことなんだろ?」

「それはそうじゃが……。随分と熱心な奴じゃの。戯言じゃと我はお主に伝えたはずじゃが?」

「だったら気になるようなこと言うなよ」


 俺はバックパックを下ろして、中を漁ると見つけたソレをクロエへと放り投げた。


「っと、なんじゃ?」


 受け取り、クロエがしげしげをソレを眺める。


「これは……。血、か?」



 俺が渡したもの。

 それは、狩りの途中で見つけた新たなモンスター。ビッグフロッグの血液だった。



「ビッグフロッグっていう、馬鹿でかい蛙の血だ。森の周りに濠があるだろ? そこに居たモンスターだ。ジャンプ力はあるし、馬鹿みたいに長い舌を鞭のようにしならせて攻撃してくるモンスターだった。お前、モンスターの血にも味があるようなことを言ってただろ? 飲んだことがないだろうし、取ってきたんだ」


「わざわざ取ってきたのか? 面倒ではなかったか?」

「まあ、跳弾しか使えないからな。おかげでいい練習にはなったよ」


 と俺は肩をすくめる。



 何せ、一度跳べば十メートル以上もジャンプするモンスターなのだ。

 直接狙えない以上、跳弾を当てるのは至難の技だった。

 だが、そのおかげで跳弾の良い練習にはなった相手だ。

 跳弾で瀕死になったところで、クロエの言葉を思い出して空のペットボトルへ血を詰めてきたのだった。


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