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新衣装ってマジですか?

次の日、俺はローラさんにギルドに呼び出された。


「はい、タクトさん。これ着てみてください」


そう言ってローラさんから突然黒い服を渡される。


「これは?」


「タクトさんがパレードで着る新しいジェイドの衣装ですよ」


「えっ?新しいの?今までのでいいのに」


「あれはもうボロボロですから駄目です!だから新しいものを縫い直しました」


相変わらず凄い裁縫の腕前だな、ローラさん。

よく見ると新しい衣装はデザインも少し違っている。

材質も前よりいい。前はただの布だったが、たぶんこれ魔物の皮じゃないかな?頑丈そうだ。


こんな服が経費で作れるようになったのも、ゴチンコのギルドが軌道に乗っている証拠だ。


衣装の新デザインについては、今までは黒一色だったのが、ワンポイントで赤を巧みに取り入れ、かっこいいデザインといえなくもないが、なんというかこれはちょっと痛い14歳くらいの少年が好みそうなデザインで……もうすぐ30歳になるおっさんの俺がこれに袖を通すかと思うと、思わず顔が引きつる。


「あの、ローラさん、ちょっとこれ……」


ローラさんがキラキラした目をして、俺が衣装に袖を通すのを楽しみにしている。


「さ、最高ですね!すぐに着てみます!」


断れるはずないわ!あんなの!


しかし案外着てみると、なかなかどうして悪くない。

硬そうな魔物の皮なのにかなり伸縮性がある。

たぶん耐火や魔法耐性も付いているんじゃないか、これ?

普通に戦闘用の装備として優秀そうだ。


「ど、どうですかね」


服を着た俺を見てローラさんは先ほどの数倍目を輝かせた。


「かっっこいい!!さすがタクトさん!ちょっと袖と裾を直したらいけそうですね!」


「そうですね概ねいい感じです」


「夜までに直しちゃうんで、夜になったらまた私の所に来てください」


「分かりました」


「……そういえば、タクトさん御前試合で優勝したのに個人的に何もしていませんでしたよね。タクトさん何か欲しいものとかしてほしいことってありますか?」


御前試合優勝のお祝いということか。そんなのいいのに。


「気にしなくて大丈夫ですよ」


「それはだめです。凄い事なんだからちゃんとお祝いしないと!それに……私タクトさんのために何かしたいんです」


「というかローラさんにもらえるんだったらなんだって嬉しいですから」


俺がそう言うと、ローラさんはにこっと笑った。


「では、ちゃんとしたお祝いは考えておきます。それはそうと、タクトさんは女性の服でどんなのが好きですか?」


「えっと、それはどういう?」


「私、裁縫得意なんで作りますから。えーっと……」


そう言って、恥ずかしそうにしているローラさん。


「それはもしかしてローラさんが作った服を着てくれるって言う……」


俺がそう言うと、ローラさんは顔を赤らめて黙ってコクリとうなずいた。


なんと言うことだ!


ローラさんが!なんでも俺の好きな服を!?


だったらメイド服?いや御前試合の時に解説の人が来てたあのチャイナ服ってのもいいな。


いっそのこと修道士の服なんてのも背徳的で……あーこれは悩むぞ!


ローラさんに何を着せるべきか、アンケートを取れるなら取りたい位だ!


「服については考えといてください。その時はタクトさんもその衣装着てきてくださいね」


「えっ?」


このジェイドの衣装でするのはちょっとまずい気が……でもローラさん、めっちゃ楽しみにしてる感じ。


ローラさんて実はそういう性癖があるのか?


「分りました。楽しみにしています」


「はい、私も。とりあえずは、パレードがんばりましょう!」


こうして準備は着々と整っていったのだった。


そして、ついにパレード当日。


どんなものかと緊張していたが、俺がやるべき事は大してなかった。

用意された馬車に乗り、王都を練り歩く。


たまに住民に手を振ったりすればいいだけ。

簡単なお仕事だった。


「はぁー、退屈だな」


30分ほど経った頃に思わず、俺は小声で愚痴こぼしてしまう。


気を抜いていたその時だった。

嫌な魔力の波動を感じた。


これは不味いと直感したその瞬間だった。


「ぼん」


俺は人混みの中から、少女がぼそりとそうつぶやくのが確かに聞こえた。


その瞬間、俺が乗った馬車が眩しい閃光を放つ。


「こ、これは爆裂魔法!?」


俺が乗った馬車は火柱を上げ、木っ端微塵に爆散した。

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