決戦
俺は粗槍を片手にパズスに突進する。
しかし想像以上にスピードが出ない。魔眼を失ったのが一番大きいかもしれない。力が落ちている。
パズズにひらりとかわされるがそこは想定内。スピードが落ちた分は技術でカバーするしかないのは分かっていた。
巧みにロンギヌスを右手左手と持ち替えて攻撃する。
しかしそれすらパズズには届かず、逆に強烈な蹴りを腹に入れられた。
「グッ」
吹き飛ばされしゃがみ込む俺を見下ろしノエルが言う。
「だから言ったじゃん、タクトじゃ勝てない。僕が倒すからタクトは大人しく見てなって」
「それじゃ駄目なんだって」
そう言い放ち、俺は腹を押さえて立ち上がる。
「いや、よく分からないけど魔王ってのになるだけでしょ?別にそこまでムキになることじゃ……」
「駄目だ!」
突然の俺の剣幕に、ノエルはビクリとする。
「そんな怖い顔するなよ」
「ご、ごめんノエル。でも駄目なんだ。魔王になったノエルは強すぎて人間が近寄れなくなる。それどころかノエルの体から発せられる瘴気で他のみんなが死ぬ。だからパズスは絶対俺のロンギヌスで倒さなきゃ。信じるのは難しいと思うけど……」
俺が再びパズスに挑もうと構えると、ノエルが俺の横に並んで魔剣を構えた。
「だからノエル、君がパズスを倒しちゃ……」
「……信じたよ。タクトの言葉だもん」
「じゃあなんで?」
「タクトじゃパズスには逆立ちしたって勝てない。妻として、不甲斐ない未来の旦那様のアシストでもしてやろうと思ってね」
最強の魔眼を持つノエル。
これ程頼もしいスケットもいない。
手に持つ武器はナイフよりも頼りない槍。
目の前にいるのは魔族の頂点魔王。
こんな絶望的な状況にも関わらず、俺は自然と笑みが溢れた。
「じゃあ、さっさと世界を救っちゃいますか!」
俺は再びパズズに向かってスピードを上げた。




